【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

人生の哀歓

2010-10-05 16:02:02 | 心の宝石箱




   起床時こそ雲の多い天気
  でしたが、こちらは気持ちの良い
  秋晴れとなりました。

   窓を開けると金木犀の、
  かぐわしい香りが漂って来ます。

   お天気は良い、
  空気中には天然のアロマ・・。

   今、一番良い季節と言っても
  過言ではありません。
  『アンの世界』 にも勝るとも劣りませんね。

   




   “・・・ 略 ・・・ 晴れ渡った、爽やかな、日の照る美しい秋の朝で、
  夜来の雨に打たれ、濡れそぼった羊歯が霜で白くなり
  かぐわしい香気を放っていた。
   森のあちこちで、黒ずんだ、エゾマツのときわ木に向かって、
  楓が華やかな深紅の旗を緩やかに振り、
  樺の大枝が薄い金色を見せていた。空気は澄んで爽快であった。”

                                      【「アンの友達 2.」 ~10月の章】   



   さて、やっとの事で渡辺純一作
  『エ・アロール~それがどうしたの』、
  読了。

   初めは面白そう・・なんて思い、
  読み始めたものですが、
  途中からペースダウン。

   この小説は東京は銀座にある、
  高級老人施設が舞台。

   経済的に恵まれた人々の老後の
  生き方を生々しく描いています。

   渡辺純一の本は、(特に初期の作品は医学物が多かったものですが)
  それこそ熱中して読んだものです。

   他にも 「阿寒に果つ」 や 「無影燈」、
  「雲の階段」、「ひとひらの雪」 等など・・本当に面白かったです。

   ある時期から作風が変わり? 特に 「失楽園」 以降は、ちょっと苦手に。
  そう言えば前回の本(題名失念)も途中から気持ちが悪くなって、やめましたっけ。

   話が逸れました。
  ただ、この小説で心に強く残った言葉があります。
  それは、「廃用性萎縮」 という言葉。

   聞き慣れない言葉ですが、本来は医学用語のようです。
  これについては小説の文中に詳しい説明がありますので、以下に抜粋します。
  





(中略) これは本来医学用語で、四肢を骨折した時、
腕や足にギブスを巻いたまま使わずにいると、
その部分が痩せて萎えてしまう。

要するに実際に使わぬうちに本来の機能を失う事を
言っているのだが、これは四肢に限らず内臓から脳まで
当てはまり、人体の全ては使わなければ働きが悪くなり、
やがては能力が落ちて廃れてしまう。(中略)

例えば趣味で絵を描くとか俳句を作るといった事が好きで、
いつも努力を重ねていると、そちらの方のセンスが磨かれ、
徐々にながら確実に上手になって行く。

だが、何かのきっかけでそれをやめ、そのまま怠けていると、
折角のセンスも失われ、ついには一切やらなくても
平気になってしまう。

まさしく、やらなければやらないでその状態に馴染み、
気がつくと取り返しがつかなくなるという意味で、
廃用性萎縮 そのものである。(中略)

年齢相応という考え方は、一つ間違えると年齢に甘えて、
限りなく無気力に、かつ身勝手になる事と隣り合わせでもある。
「もう年だから」 という言い訳に頼り過ぎて、
気が付くと 廃用性萎縮 ならぬ、廃人になってしまう事もある。
                    渡辺純一作 「エ・アロール」より


   




   この 「廃用性萎縮」。
  私など思い当たる事大ですので、余計に身につまされたのかも知れません。

   そうそう、次なる本は松本清張作、「風の息」。(上下巻)
  実家にあったものですが、読んでいませんでした。
  昭和27年の日航 「もくせい号」 の事故を取り上げています。