【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

文学の中の香りばなし

2009-09-26 17:55:15 | ハーブと香り雑学


   こちらは今日も快晴です。
  この所、恒例になりました、
  朝の空の写真は・・。

   水色の空と仄かに桜色に染まった
  雲で、思わず息を呑む程、
  美しいものでした。
  昨日とは対照的な空ですね。

   さて、一方我家の庭。
  ここに来て満を持したように、
  アメジストセージが開花。(冒頭の写真)

   早春から咲いているチェリーセージ
  や、かと思えば、植えた覚えのない紫色のセージなど、
  まだまだ花芽を増やしているようです。


   
   セージは、葉っぱに独特の芳香があるのは勿論、清楚な花はひときわ心和む存在です。
  プラス、金木犀の香りで、(今だけですが)さながら 『アンの世界』 の庭みたい。
  ~なんて。こうなりますと、単に癒やしだけでなく心、躍ります。



   ところで、文学の中では様々な香りが登場して来ますね。
  その最たるものは、日本では 『源氏物語』 や 『枕草子』 ですが、以前にも記しました。
  
   今から千年も前の時代に、香りに大きく心開いていた日本人の感性に、驚いたものです。
  他にも、その “香りばなし” を少しだけ記してみたいと思います。

 【ヴァニラの香り】
・・・そうして宙に漂うある不思議な香りの後を追った。
その香りは1週間このかた寝室の中をさまよっていて、
彼女の大きく開かれた目はその目に見えないものを捉えようと
するのだった。
彼女はヨーロッパの香水店でも、又熱帯の森林でも、
そのような香りを嗅いだ事は1度もない。
                        【ランブール ╱ 小佐井伸二訳 『ヴァニラの木』】


   そして詩と言えば・・何と言いましても、フランスの詩人、ボードレールでしょう。
  全編に芳香が満ち溢れている詩を数多く書いています。
  
   そのものズバリの 「幽玄なる薫香」 がありますが、
  今日は、昨夕の空の写真から 「夕暮れの諧調」 を・・。
  
   本当は、堀口大学訳が良かったのですが、どうしても見つかりません。
  確か、新潮社版の文庫本が出ていたと思うのですが・・。





               夕暮れの諧調かいちょう

      今こそ時は訪れた 茎の上で揺らぎながら
      花々は香炉のように匂いを放ち
      音と薫りは夕暮れの大気の中を舞い巡る
      愁いを帯びた円舞曲 気だるいようなこの眩暈めまい

      花々は香炉のように匂いを放ち
      ヴィオロンは苦しみ悩む心のようにおののいて
      愁いを帯びた円舞曲 気だるいようなこの眩暈!
      空は悲しく美しく さながら大きな祭壇のよう

      ヴィオロンは苦しみ悩む心のようにおののいて
      優しい心は果てしない暗い夜の虚無を憎む!
      空は悲しく美しく さながら大きな祭壇のよう
      太陽は自らのこごる血潮の中に溺れた

      優しい心は果てしない暗い夜の虚無を憎む
      そして煌めく過去の名残りを全て拾い集めるのだ!
      太陽は自らの凝る血潮の中に溺れて・・・・・
      あなたの思い出はわが胸に聖体盒せいたいごうのように光り輝く!

                               【ボードレール ╱ 村上菊一郎訳】

【昨夕の空】