廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ステレオプレスで聴く Bass On Top

2017年01月14日 | Jazz LP (Blue Note)

Paul Chambers / Bass On Top  ( 米 Blue Note BST 81569 )


ある日、突然 "Bass On Top" をステレオ盤で聴きたくなった。 耳にタコができるくらい聴いてきたこの有名な作品の冒頭の "Yesterdays" の
アルコの深い音色のことは折に触れてよく想い返すのだけれど、記憶の中で鳴り響いているその音をステレオプレスで聴くとどんな感じなんだろう、と
ふと思ったら居ても立っても居られなくなり、ステレオ盤を探す羽目になった。

調べてみるとステレオプレスが出されたのはリバティーへの売却後になってからのようだ(金色のSTEREOシールが貼られたものを過去に見たような気も
するけど、日本盤だったかもしれない)。 探し出してみて気が付いたことだが、これが意外と見つからない。 すぐに見つかるんじゃないかと高を括って
いたが、再発とはいえ、このあたりになるとやはり人気があるのかもしれない。 流通自体はしているんだろうけど、うまくタイミングが合うかどうかに
かかってくる。 そして、そうこうしているうちに数週間の時間が経って、ようやく入手できた。 

ブルーノートがステレオ録音を開始したのは1957年3月7日で、1958年10月30日まではモノラルとステレオの2種類同時録音が行われた。 この作品は
1957年7月14日にハッケンサックのRVGスタジオで録音されているから、マスターテープは2種類あったことになり、疑似ステレオではないようだ。

オリジナルのモノラル盤は1曲目の "Yesterdays" を劇的に演出するためか、かなり過剰にエコーを効かせてマスタリングされているが、2曲目以降は
普通のサウンドに戻るのが特徴になっている。 このステレオ盤もそれと同様の傾向になっている。

モノラルの方は音圧は高く音も太く、4つの楽器の音がリボンでくくられた1つの花束のような感じだけど、ステレオのほうはそのリボンを解いたように
音がきれいに分離していて、右からベースとピアノ、左からギターの音が出てくる。 でも、その振り分けはステレオ初期の稚拙な技術の割にはさほど
不自然な感じでもなく、特にケニー・バレルのギターは中央で定位する。

各楽器の音の艶やかさもモノラルとステレオでは変わることなく、聴いていて違和感なども特にない。 古い録音なのでいわゆるハイファイ感などは
まったく無く、そういうものを期待するとがっかりするかもしれない。 コロンビアの同時期のステレオ盤と比べると、そういう面では劣っている。
でも、冷静に考えると、モノラルのほうが音場感としては不自然なのかもしれないなあ、と考えさせるようなところがどこかある。

ステレオ盤には耳マークもRVG刻印も無いけれど、そういう知識が邪魔して音楽を愉しめないのであれば高いオリジナルを買えばいいし(特に弾数が少ない
ということもなく、割と出会う機会はたくさんあるだろう)、もっと自由に音楽を愉しめるのであれば、これを選択するのも悪くないと思うな。


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2 コメント

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Unknown (senriyan)
2017-01-15 08:09:35
おはようございます。
これはよくわかるような気がします。
ぼくも、モノラル盤を聴きながら、ふと、そうしたことを考えたりします。
かといって、モノラルの良さも、もちろん、あるんですが。
とはいえ、この辺りのステレオ盤買ってみる価値はありそうですね。
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Unknown (ルネ)
2017-01-15 09:15:16
おはようございます。
頭の固い聴き方ではもったいないですよね。せっかく素晴らしい音楽がそこいあるのですから。
Libertyレーベルのものは極端に安いので、気軽に聴くことができると思いますよ。
ミュージック・ファースト、で行きたいですね。
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