Bill Evans / We Will Meet Again ( 米 Warner Bros. Records HS 3411 )
エヴァンスの晩年、つまり最後の5年くらいの間に残された演奏の中では、これが一番好きだ。 この作品に宿る穏やかな、そして明るい希望のようなものには
心惹かれずにはいられない。 2管クインテットというだけで相手にされないフシもあるのかもしれないけれど、この作品の他にはない魅力は2管入りだったからこそ、
である。 トム・ハレルもラリー・シュナイダーもまるでエヴァンスの分身が管楽器を操っているような、これ以上の出来は考えられない演奏で寄り添っていて、
その献身振りには泣かされる。
エヴァンスはこの時、それまでには無かった新しい何かを間違いなく掴んでいた。 その気配がここにははっきりと残っている。 だから、このジャケット
デザインは象徴的だ。 それは "You Must Believe In Spring" などには見られない何かである。 その何かこそがこの作品を特別なものにしているのだし、
それがいつも私の心を震えさせる。
エヴァンスと一緒に演奏したミュージシャンたちはその後にエヴァンスとの想い出を作品として綴っているけれど、あなたたちがやらなきゃいけないのは
そういうことでないだろう、といつも思う。 エヴァンスが最後に形にしようとして間に合わなかったものを引き継がなきゃいけないんじゃないの?と歯痒い。
後期エヴァンスのレコードを順番に丁寧に聴いていくことで、ようやくビル・エヴァンスという音楽家の本当に姿が少しだけ見えてきた気がする。 去年から
ぼつりぼつりと買い進めてきた中で、そのことが実感としてわかるようになった。 聴き始めて30年以上が経つけれど、ようやくビル・エヴァンスのことが
少しは理解できるようになってきたのかもしれないな、と思う。