廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

最も美しく録られたエヴァンス

2020年05月12日 | Jazz LP (Warner Bro.)

Bill Evans / New Conversations ~ Monologue, Dialogue, Trialogue  ( 米 Warner Brothers BSK 3177 )


晩年のエヴァンスの音が一番きれいに録れているのが、このレコード。的確でしっかりとした打鍵から生まれる美しい音を全身に浴びるように
聴くことができる。ただ単にピアノの音が美しいだけではなく、音が拡散していく空気感もしっかりと録られていて、繊細で震えるような響きの
何と美しいことか。このアルバムはコロンビアのスタジオで録られている。メジャー・レーベルの特権である恵まれた環境の中でエヴァンスが
録音できたのは幸いなことだった。

副題にある通り、エヴァンスがソロ、2重奏、3重奏と多重録音で、エレピも少し交えながら美しい楽曲を奏でる。ここにあるのは、溢れんばかりの
美音の波。純化した音楽の結晶。透徹した目線。それ以外は何もない。何かに達した音楽。

多重録音やエレピが、という話はこのアルバムの本質とはおよそ関係がない。無心にピアノに向かう演奏者が紡ぎ出す音と、それが構築する音楽の
姿を受け止めればそれでいいのだと思う。もはや、来るところまで来てしまった、という感がある。

自らが作曲した "For Nenette" などの佳作も交えて美しい楽曲が並ぶ中、ラストに置かれたエリントンの "Reflection In D" に心打たれる。
これほど、このアルバムを締め括るのに相応しい曲はないだろう。エヴァンスが弾くと、エリントンもまるでドビュッシーのように響く。
時間の流れがゆっくりと遅くなり、1日がまさに終わろうとするその間際にいるような感覚。
美し過ぎて、言葉が出てこない。


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2 コメント

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そうですか! (K's Jazz Days)
2020-05-12 13:17:29
どうも、あからさまな多重録音というと避けています。なんか違う、ような感じがあって。しかし、よくよく考えると、それは思い込みの類いでしかない、ジャズは即興、のような。
そのような背景もあって、聴けていないアルバムです。聴かなきゃ、ですね。楽しみです。
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ぜひ! (ルネ)
2020-05-12 13:29:20
これは多重録音臭さは希薄です。エヴァンスもヴァーヴの頃よりも重奏への対処が上手くなっていると思います。
とにかく、音がきれいです。それが嬉しいなあ、というアルバムです。
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