Charles Lloyd / Discovery ! ( 米 Columbia CS 9067 )
60年代後半にチャールズ・ロイドが時代の寵児としてもてはやされたのは、おそらくは行き過ぎて手の届かなくなったコルトレーンの穴を埋める
存在として一番相応しかったからではないかと想像する。音色も吹き方もフレージングも、その何もかもがコルトレーンそのものと言っていい
この人の登場は、人々の渇いた喉を潤す救世主のように映ったのではないだろうか。
このアルバム・タイトルはまさにそういう存在を発見した制作サイドの当時の気持ちを言い表しているように思う。誰もがコルトレーンに変わる
新しい存在を探していた時に現れた期待の星だったのだろう。デビュー作がいきなりコロンビアなのだから、ザイトリンなんかと似た待遇だ。
"酒バラ" 以外は自作を揃えていて、その期待にきちんと応えようとしていたことがわかる。アーティスト本人と制作側の双方のやる気が揃った
のだから、出来のいい内容になるのは当然だったのかもしれない。
このアルバムはコロンビアが誇る高品質な音、ドン・フリードマンの澄んだピアノなどがロイドの重厚さを上手く中和していて、全体のバランスが
とてもいい。ロイドがテナーの演奏を完全に掌握している様子が手に取るようにわかる。コロンビア録音でよかったね、という感じだ。
現在も健在で、コルトレーンの倍の時間を生きて、新作をリリースし続けている。時節柄、健康に気を付けて頑張ってもらいたいと思う。