廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ジャズが本当に好きな人が作ったアルバム

2020年08月04日 | Jazz CD

Kurt Rosenwinkel / Angels Around  ( 日本 Heartcore Records MOCLD-1028 )


この何年か聴くこともなく過ごしていたら、いつの間にか "ジャズ・ギターの皇帝" なんて呼ばれるようになっているらしい。何だかなあ。

コロナの第一波時は新譜CDの店頭試聴ができなくなったのでCDを手に取ることもない日々だったけれど、最近は店頭でも試聴できるようになったので、
気になるものは聴くようにしている。いろいろ聴いた中ではこれがよかったので、久し振りにこの人を聴いている。

私の好きなモンクの "Ugly Beauty" で始まる時点で合格なんだけど、そういう個人的な嗜好を除いても、このギター・トリオのいい意味でざっくりとした、
荒々しさを上手く演出したような上質さはなかなか得難いんじゃないかと思う。ギター、ベース、ドラムという3人の演奏を聴いていると、東京ドームで観た
ザ・ポリスの再結成コンサートを思い出す。アンディ・サマーズが独特な音色で一生懸命ギターを弾いていて、ちょうどこういう感じだった。

これを聴いていて感じるのは、意外なくらいオーソドックスなジャズの質感だ。外見的にはジョン・スコフィールドなんかに近いのかもしれないけれど、
そういう先人たちはもっと意図的に捻じれていたのに対して、カートの方はもっと自然なジャズのフィーリングが漂っている。イマドキのジャズは、
何と言うか、ジャズという音楽を肯定的に捉えているように感じる。

私にはラップと融合することにジャズの明るい未来があるとは思えないし、他のどのジャンルへの接近も同様だ。いろんなヴァリエーションがあるのは
いいと思うけれど、それらはあくまでも周辺の出来事であって、ジャズはあくまでもジャズとして発展していくんだろう。

その際に、こういうジャズ固有のフィーリングみたいなものは必要なんじゃないだろうか。この人の音楽に特に精通しているわけではないけれど、
このアルバムにはケニー・バレルがヴィレッジ・ヴァンガードでクールにキメていたあの頃の音楽と変わらない何かがあると思う。

何より、このアルバムはジャズメンたちの知られざるオリジナル曲をメインに置いているのがいい。
ジャズを聴くのが本当に好きな人しか知らないような楽曲だけが並んでいるのがカッコイイと思う。


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