Bill Evans / Affinity ( 独 Warner Brothers WB 56 617 )
好きなアルバムだけど、これは成功作とは言えない。ラリー・シュナイダーが邪魔なのだ。この人の存在がアルバムの成功の足を引っ張っている。
トゥーツとエヴァンスが創る世界観にまったく合わないプレイと楽曲を持ち込んでいて、全体を台無しにしている。テナーの音はきれいとは言えず、
他の楽器の美しさにまったくそぐわないし、オリジナル曲も曲想がアルバムに合っていない。なぜ、このアルバムでコルトレーンのような時代錯誤の
演奏をする必要がある? そういうのがやりたいのなら自分のアルバムでやってくれよ、と言いたくなる。この神経が私には理解できないし、
このままアルバムとしてリリースする感覚もさっぱりわからない。
と、まあ、聴くたびに頭にくるんだけど、そこを除けば美音とロマンティシズムに溢れる素晴らしい世界だ。イージーリスニングとかフュージョン
なんて陰口を叩かれるけど、それのどこが悪い? 2人のマエストロが提示する音楽は、うかつに近寄るのが憚られるような美しさだ。
その世界観を支えているのがコロンビア・スタジオで録音した高品質なサウンドだけど、やはりアメリカ盤だとバター・ホイップのデコレーション
ケーキのような重い口当たりで、両面聴き通すのがしんどい。ラリー・シュナイダーの件もあって、困ったアルバムだなあ、と長年思っていたが、
独盤で聴くと電化処理したような油分は除去されていて、アコースティックな響きを取り戻している。トゥーツのハーモニカが純度の高い深く
美しい響きで鳴っていて、これがいい。エヴァンスの音も自然で、きれいだ。やはり、空間処理がアメリカ盤とは違うのだ。
些細な話かもしれないが、こういう違いは感動の質に直結することを我々はよく知っている。だから、こだわるのである。
驚きました。
エヴァンスもトゥーツも、ある意味、イッてしまってますが、シュナイダーだけ
現世に留まって演奏している感じで、ちょっと合わないなあ、と思っているんですが、
あまりそういう話も聞かないので、単に私が偏屈なだけかもしれません。
こういうのはよくあります・・・