Zoot Sims / Goes To Jazzville ( 米 Dawn DLP 1115 )
個人的な長年の懸案盤、諦めかけていた頃になってようやくかぜひきではないきれいなものにぶつかった。 これはかぜひきが多く、現物を確認
しないと買えないので時間がかかった。 Dawnのもう1枚の "The Modern Art Of" はどこにでも転がっているが、こちらは弾数自体が少なく、
現物を手にする機会が全然ない。 おまけに値段も安かったので、言うことなしである。
ズートはその音色と語り口が魅力なのでワンホーンで聴きたいアーティストだが、これは無名のトランペッターがおとなしい演奏で寄り添う感じなので
あまり気にせずに聴ける。 ブルックマイヤーとやったほうは古いスタイルの野暮ったい音楽で退屈な内容だが、こちらはもう少しモダンに寄った内容
なので、すっきりとしている。
この盤で面白いのは、セロニアス・モンクの "Bye Ya" をやっているところ。 ズートがモンクの曲をやっているのは、これ以外には私にはすぐには
出てこない。 録音の多い人だからどこかでやっているのかもしれないけれど、少なくとも私には他には思いつかない。 どうやら本人の音楽嗜好には
合わなかったらしく、ビッグネームとしては珍しくモンクの曲を取り上げない人だった。 "Bye Ya" の演奏もモンクの曲想を表現しようという意図は
感じられない。
全曲を通して柔らかくしなやかな質感が良く、心に残る音楽になっている。 "Ill Wind" のしんみりとした抒情感が素晴らしく、ズートのバラード
演奏の極みが聴ける。 ナロー・レンジの音場感もこの音楽の雰囲気にはよく合っていて、却って好ましい。 ジャケットの深夜の駅の待合室らしい
風景はこの音楽の雰囲気をそのまま表現していて見事だ。 演奏のために次の街へと行くミュージシャンの生活の様子がこの音楽の中から立ち現れて
くるようだ。 アナログ盤にはそういうノスタルジーを掻き立ててくれる何かがある。
そうすると、このジャケットもホント素敵なものに思えてきますね。
驚きましたが、どうも執着ななくなった頃になると見つかるみたいですね、こういうのは。
ジャケットは私もお気に入りです。