廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

バーバーショップ・コーラスの快楽

2016年11月06日 | Jazz LP (Vocal)

The Mills Brothers / Famous Barber Shop Ballads  ( 米 Decca DL 5050 )


今から70年も前の録音だというのに、この洗練された感覚はどうだろう。 優れた感覚というのは不変で、時間を飛び越える。

バーバーショップ・コーラスと言われるスタイルだけれど、よく聴くと教会の讃美歌などの影響があることがわかる。 街中の床屋に人々が集まって世間話を
したり遊んだりしていた中から自然発生した庶民の音楽がルーツだと言われているが、集まった人々の感情表現を一段持ち上げて音楽という形へ昇華する際に
宗教的な感覚がそこに付与されるというのはキリスト教社会ではごく自然なことだったのだろう。 下町の讃美歌として親しまれたんだろうなあと思う。

ミルス・ブラザーズの結成は1928年で、メンバーの死去などに伴ってメンバーの入れ替えをしながら1982年まで活動して2,000曲を超えるレコーディングを
行ったというのだから驚かされる。 アメリカのポピュラー音楽の底力というのは恐ろしい。

中音域を厚くしたハーモニーが独特な雰囲気を醸し出していて、4人の声質は終始柔らかい。 ハーモナイズの和音の分散の仕方もセンスが良くて、よく
考えられていることがわかる。 SP録音の音源を集めた10インチなのでどの曲も短くて、あっという間に再生が終わってしまうのが残念だ。

ジャズという音楽は振り幅が広い。 こういうポップスに寄ったノスタルジックな歌謡から訳の分からない無調の音楽まであって、不思議なことにそのどれもが
「ジャズ」という音楽のカテゴリーに違和感なく収まっている。 だからそこ、愉しみは尽きないのだ。


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