Art Pepper / Winter Moon ( 米 Galaxy GXY-5140 )
これを聴くと、ゲッツの "People Time" やエヴァンスの "You Must Belive In Spring" を思い出す。 人生の終焉が目の前に迫った時に、
人はこういう想いを残すのかもしれない。 この寂寥感をいずれは誰もが自分の身の上に感じることになるのだろうか。
冒頭の "Our Song" の哀しく切ない旋律は音楽家の心情をそのまま映し出したかのような曲で、その想いのようなものが何の迷いもなく真っすぐに
聴き手の心の中に入ってくる。 アルバム・タイトルの "Winter Monn" はホーギー・カーマイケルの作曲だそうだが、私は原曲を聴いたことがない。
でも、ペッパーが切々と吹く旋律を聴いていると、冷たい冬空に掛かる月が見えるような気がしてくる。
どの曲も本当に飾り気なく真摯に演奏されていて、そのひたむきさには何とも言いようのない感銘を覚える。 音楽に集中し、楽器を精一杯鳴らしている
様子が目に浮かぶ。 こんなに赤裸々な演奏をした人はちょっと珍しいのではないか。 コルトレーンのひしゃげた咆哮を聴いてもさほど心は動かないけど、
このためらいながらも懸命に鳴っている音には耳を傾けずにはいられない。
ここにあるのは極めて内省的な音楽であるにもかかわらず、このジャケットデザインは意図的だったのかそうではなかったのかはさておき、その厳しさを
中和している。 アルトのワンホーンで紐付きで、さらにこのジャケットとなれば、誰もが甘美な内容を想像してこのアルバムを手にするに違いない。
でも、その期待は裏切られるだろう。 それがこのアルバムが名盤としてもてはやされない理由だから。
"Our Song"に深い感銘を受けました。
自分にとって掛け替えのない一枚です。
Our Song は素晴らしい曲です。 ペッパーはこんな曲も書ける人だったんですね。