廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

今では美しく聴こえる歌声

2019年05月11日 | Jazz LP (Verve)

Billie Holiday / Solitude  ( 米 Clef MG C-690 )


気が付くと、いつの間にかビリー・ホリデイのレコードが棚の中で増えている。 特に意識して探しているわけではないのだけれど、数が減っていない
ところを見ると、自分で自覚している以上に彼女の歌が好きなのかもしれない。 

若い頃から彼女のレコードは聴いていたけれど、正直に言うと好きだから聴いていたのではなく、有名な歌手だから聴かなきゃいけないというバカげた
理由からで、美声とは程遠いひしゃげた線の細い歌声を我慢しながら聴いていた。 でも、ある時期を境に、他の歌手とは何かが違うと思えるようになり、
昔はダミ声にしか聴こえなかった彼女の声質も、今では美しいと感じる瞬間が幾度も訪れるようになっている。

"奇妙な果実" のせいで面倒なイメージが付いてしまったが、そこから離れた彼女は朗らかで無邪気ささえ感じることがある。 歌い方やフレーズまわしは
かなりワンパターンで、そういう意味では表情の変化には乏しいし、声量もないし帯域も狭くて、普通に考えれば歌手としての資質には欠けているんじゃ
ないかとすら思えるのに、心に残る印象は誰にも負けないのだから歌というのはつくづく不思議なものだと思う。 技量のかさだけでは測れない。

このアルバムは52年頃の古い録音がメインなので音場感はそれなりの感じだが、当時スタン・ゲッツも好んで演奏していた"You Turned The Tables On Me"
などが聴けるのが嬉しい内容だ。  彼女は非常にたくさんのスタンダードを録音していて、当時の一流の歌手はおそらく歌えない歌はない、という感じ
だったんだろうと思う。 そうでなければステージには立たせてもらえなかったんじゃないだろうか。 エラやサラも大体似たようなレパートリーを
当然録音しているけれど、みんながそれぞれ違う歌を歌っているようで、そこが面白い。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする