廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

暗黒時代だなんて、誰が言った?(3)

2018年09月17日 | Jazz LP (Columbia)

Art Blakey and The Jazz Messengers / Hard Bop  ( 米 Columbia CL-1040 )


メンバーの名前や写真が一切載っておらず、バンド名と "Hard Bop" の文字のみ、という大胆なデザイン。 アメリカのレコード制作の常識ではこういうのは
普通あり得ないことだけど、マクリーンはプレスティッジとの契約関係が残っていて表向きには顔も名前も前面には出せないし、他のメンバーも似たような
状況だったのかもしれない。 ジャズはメンバーが流動的に動くから、契約関係の整理が色々難しかったのだろう。 それがこのアルバムでマクリーンの
快演が聴けるという認知を邪魔している。 

メジャー・レーベルらしくスタンダードも織り交ぜた明るい内容で、マクリーンの数少ない有名作 "Little Melonae" もあり、3枚の中では一番聴きやすい。
ファットなトーンがしっかりと捉えられていて、彼のアルトを堪能できる。 この時の録音でこのアルバムに収めきれなかったものが別のアルバムの片面に
収められている。

こうしてせっかく録音は順調に進んでいたのに、マクリーンはドラッグの不法所持でキャバレーカードを取り上げられてしまい、バンドから離脱することに
なってしまう。 その穴埋めをジョニー・グリフィンが応急処置的に務めたのちに、ジャズメッセンジャーズはベニー・ゴルソンを迎えて大きく躍進することになる。
高名なこのバンドには常時レコーディングやコンサートのオファーがあったので、その気になればいくらでも活躍できるチャンスがあった。 にもかかわらず、
それを活かし切れなかったジャッキー・マクリーンは自業自得とは言え、その力量を考えるとただただ勿体ないことをしたと思う。

この時の2人は音楽をトータルプロデュースする能力には欠けていたけれど、演奏一筋で来ただけあって、アルバムはどれも聴き応えがある。 もう少し長く
活動していれば有能なプロデューサーがいるレーベルでレコーディングする機会もあっただろうし、そうすれば後世に残る傑作が残せたはずで、そういう予感が
あるだけに残念だった。 ミュージシャンは音楽のことだけ考えていればそれでいい、ということでは決してないということなんだろう。


コメント
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