玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

擾にして毅、直にして温

2005年12月15日 | 政治・外交
小泉総理は就任以来ずっと「私は日中友好論者」と語り続けてきた。
その言葉に嘘はないことをアジア各国首脳が見守る前で明確な姿で示した。見事な外交的演技(パフォーマンス)だ。

小泉首相:首脳宣言署名で温首相にペン借りる
14日の東アジアサミットの首脳宣言署名式で、小泉純一郎首相が中国の温家宝首相から毛筆ペンを借りて署名する一幕があった。

 署名式では、温首相と小泉首相が隣り合わせの席順。温首相が持参した毛筆ペンで署名を終えると、左隣の小泉首相は自席前に用意されたペンは取らず、温首相の方に右手を差し出した。温首相は一瞬戸惑った表情で右側のアブドラ・マレーシア首相の方を見たが、すぐに小泉首相の意図を解して毛筆ペンを手渡した。小泉首相はこのペンで署名した。

 この一幕に、会場にいた各国外交団から拍手が起きた。冷え込んだ日中関係を懸念する外交団の拍手には「ペンの貸し借りが両国の関係改善につながってほしい」という期待が込められていたようだ。


以下の着色文字部分は山本七平「人望の研究」からの引用だが、中国の古典「尚書」皐陶謨編には「人徳」の条件として「九徳」が挙げられているという。

一  寛にして栗 (寛大だが、しまりがある)
二  柔にして立 (柔和だが、事が処理できる)
三  愿にして恭 (まじめだが、ていねいで、つっけんどんでない)
四  乱にして敬 (事を治める能力があるが、慎み深い)
五  擾にして毅 (おとなしいが、内が強い)
六  直にして温 (正直・率直だが、温和)
七  簡にして廉 (大まかだが、しっかりしている)
八  剛にして塞 (剛健だが、内も充実)
九  彊にして義 (強勇だが、義しい)


小泉総理の無邪気な(あるいは無邪気を装った)「ペン貸して」パフォーマンスは「擾にして毅」「直にして温」だと思うのは小泉ファンの私の贔屓目だろうか。

そしてこれらの徳を裏返しにすると

1  こせこせうるさいくせに、しまりがない。
2  とげとげしいくせに、事が処理できない。
3  不まじめなくせに、尊大で、つっけんどんである。
4  事を治める能力がないくせに、態度だけは居丈高である。
5  粗暴なくせに、気が弱い。
6  率直にものを言わないくせに、内心は冷酷である。
7  何もかも干渉するくせに、全体がつかめない。
8  見たところ弱々しくて、内もからっぽ。
9  気の小さいくせに、こそこそ悪事を働く。


という九不徳になる。

中国で住民デモに警官発砲、8人死亡か 発電所に反対
中国広東省東部の汕尾(シャンウェイ)市で6日夜、発電所の建設計画に抗議していた地元住民に、武装警察が催涙弾を発砲し、住民8人前後が死亡した、と香港各紙が報じた。
(略)
 発電所の建設計画が地元住民の了解なしに決められたうえ、予定地近くで漁業をしていた住民らにほとんど補償費が支払われなかったため、住民らが半年前から予定地で抗議を続けていた。政府関係者が補償費を着服した疑いもあるという。


このようなニュースを聞くと中国政府は「とげとげしいくせに、事が処理できない」「事を治める能力がないくせに、態度だけは居丈高である」と思わざるを得ないし、靖国問題などでは「何もかも干渉するくせに、全体がつかめない」ために日本国民の親中国感情を冷ましてしまった。

中国「信頼せず」72%…読売・ギャラップ世論調査
読売新聞社と米ギャラップ社が実施した日米共同世論調査によると、中国との関係を「悪い」と見る人が、日本では73%と過去最高となる一方、中国を「信頼していない」という人も日本で72%、米国で53%と過半数に上るなど、日米両国民が中国を厳しい目で見ていることがわかった。


いくら朝日新聞やTBSが「日中関係冷却化は靖国参拝を続ける小泉総理のせいだ」と叫んでも、大方の日本国民は白々しく思うことだろう。中国が居丈高に日本を批判すればするほど、みずからの不徳ぶりが明らかになるばかりなのだから。


参考ブログ 中華的生活「多少銭?」: やるな小泉


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6 コメント

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今晩は。 (toshi)
2005-12-16 00:06:44
玄倉川さんは、山本七平さんをよく読まれるのですか。私は今「日本教について」を読みなおしております。日本人を「二人称以外存在しない世界」と分析し『不思議な「対話の世界」』という項で、成功した政治家として恩田木工と美濃部亮吉東京都知事の例をあげ、共に人物に私心がなく身奇麗、領民と都民とに直接対話するスタイルを用いて成功した例と紹介しています。美濃部氏は、議会を無視し法的に何の根拠もない「都民との対話集会」を開いて絶大な人気を誇っていました。何か小泉さんの「国民に直接聞いてみたい」を連想させます。

 小泉さんは以外と読書家で、山本七平さんを愛読しているのではないかとふと思いました。

 さて、中韓との歴史問題ですが、ベンダサン氏が生きていたら日本の「ゴメンナサイ=責任解除」理論を用いてどんなことを言うか、また、中韓をどう料理するか、聞けないのが残念です。
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政治家の力量とは? (T君)
2005-12-16 10:21:32
最近よく思うのですが、政治家の力量と言うものは実に不思議なものだと思います。

昔の中国の思想家はそれを「徳」とよんだのですが、英語では「カリスマ」とでも呼ぶのでしょうか?

中国の国家主席のような集中した権力を持った存在でもそれが無いと、何ごともうまく行かないようですね。

小泉さんは、現在の世界の指導者である、ブッシュ、プーチン、ブレア、胡錦涛などと比べても、それを濃厚に持っているように思えます。

贔屓目も入っているかも知れません。

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Unknown (佐倉純)
2005-12-16 11:23:46
小泉首相の場合は、本当に、計算づくの天才的な演出なのか、思いつきでこういう行動が自然に出てくる天才なのかわかりませんが、人誑しという言葉は本当にこの人の為にある言葉だなーとつくづく感心してしまいます。
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Unknown (Unknown)
2005-12-16 13:37:21
計算してるんでしょ。

例の「干からびたチーズ」だって二人で話して決めたことらしいし。



人間としてはあざとくて近づきたくないけど、欧米受けはするよね。手法としてはいい。
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流石に計算ずくでしょう。 (abusan)
2005-12-17 10:05:18
角福戦争と新聞に書かれていた時代、当時の

福田赳夫首相の若い弟子だった小泉純一郎氏が

今は亡き周恩来首相の人物を研究していたのは

想像に難くないでしょう。何故、周恩来首相が

人民の尊敬を勝ち取ることが出来たのかと。



今の中共政府の党中央の連中は周恩来首相と

比べるべくもないと言えることでしょうなあ。

日本を懐柔させる事も知らなくて屈服させよう

とするから逆襲されるのだと(w
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民主党の前原氏への対応でも・・・ (藤田)
2005-12-18 00:25:48
矛盾を表していましたね>中国



「靖国参拝問題が日中間の最大の問題」と言っておきながら、前原氏の「中国は軍事的に脅威」という一言に猛反発して、結局前原氏を冷たくあしらってしまいました。



「靖国参拝問題が日中間の最大の問題」と言うのなら、小泉首相の靖国参拝に批判的である前原氏に対しては、その他の主張は無視してでも暖かく応対すべきだったでしょう。あの冷たい対応は、「日中間の問題は靖国だけじゃない」という事実をいみじくも証明するものだったと思います。



日本の一野党党首の「中国脅威論」さえ、聞き流せないのが現在の中国なんですね。今の中国政府からは、狭量さ、余裕のなさしか感じません。「中国を信頼できない」という日本国民の目は、中国政府の狭量さを良く見抜いていると思います。
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