黒古一夫BLOG

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覚悟を決めて(4)――安倍首相の「施政方針演説」批判

2017-01-21 09:39:46 | 仕事
 「世界の真ん中で輝く国創り」「力強く成長し続ける国創り」「安全安心の国創り」「1億総括役の国創り」「子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り」、これは今朝(21日)の東京新聞が安倍首相の施政方針演説の全文を、各項目事にまとめた見出しだが、この「施政方針」の全文を読んで気付かされるのは、相変わらずの「自分に不利な事柄」には一切触れない「自画自賛」と、自民党内の反対派が皆無であることを見越してのことなのだろうが、あたかも自分が「全知全能の神(政治家)」であるかもごとき空語(言葉)を連発し、各項目の最後で、何を勘違いしたのか、あるいは無知をさらけ出したのか、立法府での施政方針演説であることを忘れたかのように、「~~していこうではありませんか」と呼びかけていることから関知される「違和感」である。
 「私たちの子や孫、その先の未来、次なる70年を見据えながら、皆さん、もう一度スタートラインに立って、共に新しい国造りを進めていこうではありませんか」(はじめに)→→「新しい国創り」って何だ! 「個人主義(民主主義)」を否定した「国家主義(ファシズム国家)」ということか?
 「今こそ、『積極的平和主義』の旗を掲げ、世界の平和と反映のため、皆さん、あたう限りの貢献をしていこうではありませんか」(世界の真ん中で輝く国創り→→アメリカの軍事行動を支援する集団的自衛権を行使して、「戦争のできる国」としてアジアで君臨することか?
 「農政改革を同時並行で一気呵成に進め、若者が農林水産業に自分たちの夢や未来を託することができる「農政新時代」を、みなさん、共に、切り開いていこうではありませんか」(力強く成長し続ける国創り→→「農業つぶし」といわれたTPPを強硬さ意見津市ながら、言い出しっぺのアメリカが、トランプ政権の発足と同時に「TPPからの離脱」を表明したことを、どう説明するのか。また、TPPのせいで、地方の農地が荒れ放題になっている現実を知らないのか?本当に脳天気なお坊ちゃま宰相だな、といわざるを得ない。アベノミクスはどうしたのか?相変わらず「道半ば」なのでしょうか!?
 「言葉だけのパフォーマンスではなく、しっかりと結果を生み出す働き方改革を、皆さん、共に、進めていこうではありませんか」(1億総括役の国創り)→→生活保護世帯の増加が止まらないのは何故?相変わらず非正規労働者が全労働者の40%を占めている現実をどう考えるのか。毎日美食を口にし休日にはゴルフを楽しむ安倍首相には、本当に困っている「貧者」のことなど全く眼中にないのだろう。
 
 「全ての子どもたちが、家庭の経済事情にかかわらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることのできる、そうした日本の未来を、皆さん、共に、切り開いていこうではありませんか」(子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り)→→たった「2,3万円」の返還扶養、給付型の奨学金制度を新しく創設したからといって、こんな大言壮語が吐ける安倍首相の神経が全く理解できない。大学に進学しながら、授業料と生活費確保のためにアルバイトに明け暮れ、「学問」などとは全く無縁なまま卒業し、その後は何十年も奨学金の返還に苦しむ学生がどれほど存在するか、安倍首相は考えたことがあるのか。
 以上のように、「現実」と乖離した空語を連発して、一人悦に入っている安倍首相(と、このような空疎な施政方針に拍手を送り続けていた自公の国会議員たち)と、こんな首相に「他に変わる人がいないから」という主な理由で「支持率50パーセント超」を与えている国民とは、「表裏一体」の関係にあるとしか言えないのだが、本当にこの人の頭の中はどうなっているのか、と思わざるを得ないのは、今一番「困難な情況」にある沖縄に関して、次のようにいっていることである。
 <先月、北部訓練場、4千ヘクタールの返還が、20年越しで実現しました。沖縄県内のげに軍施設の約2割、本土復帰後、最 大の返還であります。地位協定についても、半世紀の時を経て初めて、軍属の扱いを見直す補足協定が実現しました。
  さらに、学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にあり、世界でもっとも棄権といわれる普天間飛行場の全面返還を何としても 成し遂げる。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めて参ります。
  かつて、「最低でも」といったことすら実現せず、失望だけが残りました。威勢のよい言葉だけを並べても、現実は1ミリも 変わりません。必要なことは実行です。結果を出すことです。>

 この人の頭の中には、沖縄を1972年まで「植民地」状態においてきたのは、「安保条約」を結び、「日本国憲法」より上位にある「日米地位協定」(この施政演説で「補足協定」を結んだと自画自賛しているが、日本がアメリカ軍に全く手出しができない地位協定の本質は変わっていない)を結んできた自分の祖父である岸信介や大叔父の佐藤栄作ら自民党の政治家たちである認識など、全くないのだろう。
 また、「県外でも」と言って、普天間基地を「最低でも県外へ移設」と言った当時の首相鳩山由紀夫(民主党)を揶揄した気になっているのだろうが、鳩山由起夫が「県外への移設」を言ったのは、アメリカ軍基地に掣肘されている沖縄の現状をいくらかでも打開しようと、アメリカと「地位協定の改定」を含む交渉をしようとした結果であり、少なくとも安倍首相のように「属国化=植民地化」を進め用とした結果ではない。民主党が、アメリカと「対等・平等」名関係を構築しようとしながら、沖縄の基地を必要とするアメリカのネオコン(新保守主義)勢力と自民党との結託によって、鳩山由紀夫の「挑戦」は敗北した、ということである。
 安倍首相の「沖縄論」は、まさにアメリカへの属国化を加速させるもので、決してアメリカと「対等・平等」な関係を構築しようとするものではない。また、私たちの現在が沖縄の犠牲の上に成り立っていること、このことをも僕たちは肝に銘じておくべきである。

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