昔は立派だった文部省
「これからの教育は、各人の個性を完成することを第一の目標としなければならない。それは正しい意味での個人主義である。軍国主義者や極端な国家主義者は、個人主義を利己主義と混同して、全体主義の立場から個人主義を非難し、個性をおさへゆがめたのであるが、そのやうな全体主義こそ、かへつて指導者の利己主義や国家の利己主義にほかならなかつた」
これは、1946年5月に文部省が発表した「新教育指針」の一部です。全編にわたり、個性、人格、人間性の尊重とその完成こそが教育の目標だとする内容です。前回のコラムでも「あたらしい憲法のはなし」を紹介しましたが、敗戦直後の文部省は今の文科省からは想像もできないほど崇高な理念を謳いあげていました。
教育再生を言いつのる安倍政権のもとで、いじめや体罰への対策として、道徳の教科化が推し進められようとしています。しかも、教科化に伴い、評価も行う方向のようですが、先日のNHK日曜討論では、有識者から、教科化も含めてこっぴどくやっつけられていました。
憲法十九条には、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とあり、道徳の教科化は、明らかにこの条文に抵触します。
いじめ、体罰の対策というのであれば、「新教育指針」に立ち戻れば、おつりがくるほど充分です。
(2013年5月10日 社民党衆議院議員 吉川はじめ)