観るも八卦のバトルロイヤル

映画・ドラマを独断と偏見(?)で、
斬って斬って斬りまくる。
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「白虎隊」。1986年度版

2011年08月19日 | 映画・ドラマ
 まず最初に、これは、時代劇史上、もっと評価を得ていい作品だと思う。出演陣もさることながら、あの長い幕末を実に巧くまとめ、特出すべき出来事は納めている。
 これまで、「戦国自衛隊」、「壬生義士伝」をかなり押していたが、こうして改めて観ると、役者の人気や旬に惑わされない、完成度の高いドラマだということが良く解る。
 文句なしでしよう。森繁久彌が子どもと逃げ惑うシーンと、国広富之切腹シーンはオンエア当初から25年経った今でも鮮明に焼き付いている。
 そして誰もが知っている主題歌・堀内孝雄の「愛しき日々」はあまりにも有名。切なさがドラマをもり立てている。
 何よりキャスティングが凄い。今、これだけの(この顔触れに変わる俳優)はいないよね。昔の俳優さんってみんな演技力も個性もあった。それに凄い重圧感。
 惜しむらくは神保修理(国広富之)の切腹シーン。泣けるよ。父親役の丹波哲郎が表情ひとつで思いを表現しています。良いシーン。なのですが、これは所作指導のミスでしょう。切腹なのに胸元を開けていない。襟切りはしっかり絞まったままです。さらに、裃の肩衣は脱いだら膝の下に挟まないとね。はだけただけでは作法違反です。折角の国広富之の白熱のシーンをもっと台無しにしたには介錯なし。太刀取りいずして切腹したら17時間のたうち回るのですよ。あり得ないでしょう。西田敏行さんはちゃんと作法守りました。腹は出していないけど。これは個人的になにか問題ありか? その後はがんがん腹出してるから、これも制作側の意図でしょう。
 さて土方歳三さんもやってくれました。こちらも時代考証や衣装さんの責任でしょうが、あの有名な写真の洋装をしていねーっ。江戸帰還後は洋装です。会津に和服では行っていませんし、一兵卒と同じ軍服に陣羽織もなんだか。これはどうかな。一番の問題だ。
 まあ、ドラマ的に演出上必要だったのでしょうが、会津藩士は、京都に女房は連れて行っていません。みんな黒谷さん(金戒光明寺)の本陣住まいです。後に、京都守護職の屋敷を持ちましたが(現京都府庁)。
 山本八重子さんの夜襲シーンは必要だった? あれはないよな。忍者はっとり君になっちゃったもの。
 お歯黒している女優さんとしていない女優さんは年齢的なものなのか? 女優さんの好みなのか? 嫁に行ったらお歯黒するんだけどね。
 会津戦線をテーマにしたドラマや映画で、神保修理、神保内蔵助、田中土佐の切腹まで追ったものは珍しく、ここまで正確なのに、残念。
 また、多くのドラマや映画でも最大のミス。新政府軍の指揮官が冠っている、「しゃぐま」も、薩摩は黒、長州は白、土佐は赤をきちんと守るなど、正確さも光るだけに残念。余談ですが、この「しゃぐま」は江戸城開城の折りに、江戸城の蔵からぶんどったものなので、鳥羽伏見の戦いでは冠っていません。
 後に娘子隊と呼ばれた中野竹子さんたちは、城に入るのが遅れて、城の外で戦いました。これは事実。ですが、照姫様は城の中、護衛ではありませんね。まあ、女優さんなので、仕方ないですが、誰一人として殺陣が出来ていない。こういう時に志保美悦子さんを思い出します。
 まだ若々しかった白虎隊士を演じた皆さんや、昔の二枚目って解り易い二枚目だったよね。
 沖田総司を演じた二枚目の中川勝彦さんは中川翔子の父親だって。
 とまあ、見応えあり。森繁久彌が凄く良いですよ。このモデルとなった祖父と孫。実際には長州軍に殺されています。そして何と子の生首を前に長州軍は勝利の酒盛りをしたそうです。人のすることじゃないですよね。
 前にも書いたけど、長州は勝手に攻めて来て勝手に負けて、勝手に企てをしてそれを阻止されて、「会津憎し」とじゃ、これでは武士に非ず。
 薩摩は裏切り裏切りで、一緒に鍬出せた桜田門外の変でも水戸を裏切り、京都でも会津を裏切り、最後は幕府を裏切り。これも武士に非ず。
 土佐においては、池田や事変に全く関係なく、酒飲んで歩いているところを巻き添えで殺されちゃったり、明保野亭では長州藩士と間違われて刺された挙げ句切腹させられちゃったり、三条御札事件では、夜中に引き抜く悪戯っぽい有様で新撰組に斬られちゃったり、ちょっとずれてましたね。坂本龍馬が土佐藩でなかったら、幕末のおとぼけ藩になってたところ。でも彼は商人だけどね。中岡慎太郎の方がもっと評されて良いと思うのだけれど。
 そうそう、維新後西郷頼母さんは養子を迎えました。それが西郷四郎さんです。ご存じですか? 山嵐で有名な、あの、姿三四郎のモデルとなった講道館の柔道家。水泳も得意で指導をしていたそうです。
 会津藩でどうにも不思議なのが、戦争責任をとって国家老の萱野権兵衛が腹を斬ります。すでに同じく国家老の神保内蔵助、田中土佐が自刃していたためですが、会津藩筆頭家老は梶原平馬だった筈。ここが解りません。そもそもこの人が主戦派で奥羽越列藩同盟の結成を成しています。軍備の調達にあたっていました。もしや梶原平馬はまだ20代は半ばで若かったからでしょうか。
 一説には西郷頼母が筆頭家老説もあります。
 戊辰戦争に関しては熱くなっていけないや。
 いやー、役者さんって皆さん若い頃はイケメンなのですね。西田さんもいけてた。新田純一、加納竜、国広富之辺りが今や昔の人になっているのが理解出来ない。演技は確かなのに。女優さんも、池上季実子ってやっぱ綺麗だわ。坂口良子も可愛い。
 何年経っても風化しないこんな確かな時代劇を作ろうよ。

 とにかく観てください。「これぞ時代劇」です。
 
 出演は、井上丘隅(森繁久彌)、妻(山岡久乃)、長女(坂口良子)、次女(池上季実子)、三女(工藤夕貴)。西郷頼母(里見浩太朗)、神保内蔵助(丹波哲郎)、神保修理(国広富之)、萱野権兵衛(西田敏行)、田中土佐(佐藤慶)、山川大蔵(堤大二郎)、佐川官兵衛(本田博太郎)、松平容保(風間杜夫)、照姫(多岐川裕美)、野村左兵衛(竹脇無我)、秋月悌次郎( 露口茂)、山本覚馬(竜雷太)、篠田兵庫(長門裕之)、山本八重子(田中好子)、中野竹子(岩崎良美)、西郷千恵子(野川由美子)、さつき(富田靖子)、赤羽きよ(美保純)、間瀬まつ(南田洋子)、野村みね(榊原るみ)、中野こう子(赤座美代子)、頼母の長女(伊藤つかさ)、永瀬くら(上村香子)、野村駒四郎(坂上忍)、篠田儀三郎(新田純一)、飯沼貞吉(宮川一朗太)、日向内記(火野正平)、伊藤俊彦(柳沢伸悟)、川崎尚之助(田中健)、土方歳三(近藤正臣)、近藤勇(夏八木勲)、沖田総司(中川勝彦)、松平定敬(中村橋之助)、板垣退助(あおい輝彦)、世良修蔵(泉谷しげる)、吉松速之助(勝野洋)、坂本龍馬(中村雅俊)、中岡慎太郎(木之元亮)、中川宮(松山英太郎)、三条実美(堀内正美)、桂小五郎(石橋正次)、高崎左太郎(加納竜)ほか。


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