トマ・ピケティは7日、メルケル首相にギリシャの債務減免を求める公開書簡を出したという。ピケティが貸し手の度量に期待して借金帳消しを求めて対処していく方向は、7月2日の読売新聞の「欧州統合の精神 反する」という記事を読んでいたから納得できる。
ギリシャの惨状を理解するには、第2次大戦前後の欧州を思い起こす必要がある。ギリシャは2009年から15年までに国内総生産(GDP)を3割減らした。フランスで言えば1929~35年の恐慌時に匹敵する。ギリシャの借金はGDP比170%に及ぶ。敗戦直後のドイツにほぼ相当する。しかし、過去の借金を棚上げにして、未来に投資する余裕がいまの欧州にあるのだろうか。ましてや相手はチプラスのギリシャなのだ。
ドイツが復興できた大きな理由は、連合国が1953年に借金を事実上、帳消しにしたことだ。その結果、西ドイツは基盤整備や教育などに投資できた。そして欧州統合の道を進む。過去の借金は棚上げにして欧州の未来に投資する。それが欧州統合の精神のはずだ。
だがドイツは主導の欧州はギリシャに対し、「借金は1ユーロも負けない」と迫っている。ギリシャ歴代政府の愚行に責任があるから、借金を返せと言う。ドイツ歴代政府も愚行を犯したではないか。ドイツは自らの歴史を忘れている。