北のとうさんの鉄道旅・アマチュア無線JA8HBO

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幻の新型特急・JR北海道の「キハ285」甲種輸送

2014年10月02日 | うんちく・小ネタ
  
JR北海道が、2006年から25億円の巨費を投じて開発していた新型特急の開発を中止し、ほぼ完成していた試作車は2016年度を目途に線路等の検査車両への転用を検討すると発表してから1ヶ月近く経ちました。
車両は川崎重工業並びに鉄道総合研究所と共同で協力で開発ししてきましたが、8月頃には川崎重工の工場内でほぼ完成した姿が目撃されていました。
開発は中止したものの、完成した?試作車の納車は行われ、9月26日に出庫、同28日には甲種輸送で北海道まで輸送されました。
(甲種輸送→被輸送車両自体の車輪を用いて走行し、JR貨物の機関車の牽引で、貨物列車扱いで輸送する方法)

この車両はディーゼルエンジンを電気モーターでアシストして走るモーターアシスト(MA)方式のハイブリッド走行機構を持ち、省エネルギーとCO2などの排気ガスの低減を実現した画期的な車両です。
さらにカーブの通過性能と乗り心地を向上させるために、空気バネ車体傾斜と振り子式の二つによる「ハイブリッド車体傾斜システム」を搭載しているという、いままでの鉄道車両には見られない新機軸の新型車両です。
振り子式の欠点であり、乗り心地を損なう原因である動作時の床面の移動量を大幅に縮小しながら、空気バネを併用することによって車体傾斜角度は283系より多い8度となるため、曲線通過速度が+50Km/hとなり、所要時間の短縮が期待できます。

ただ、これだけのシステムとなると、導入時の費用も当然に高額となるだけでなく、曲線部分の線路には厳格な保守整備が求められ、なおかつ使用時の整備コストと整備部門への負担は大なるものがあります。

現在、JR北海道は石勝線での炎上事故、大沼での脱線事故等をきっかけに保線、車両整備、運用などで多くの問題点が顕在化し、まさに「再建途上」の状態です。
「再建」のためには多額の資金の投資が必要ですが、まだ資金の確保の目処も立ったとはいえない状態だと、社長が社内での「再生会議」で発言したとの報道もありました。

このような中で、現状新型車両は経営的には重荷となるばかりでメリットは少ないと判断したのはやむを得ないと思います。
ただ現在、特急に相当数を使用している183系は名車の誉れは高いものの経年劣化は隠しようも無く、延命措置によって何とか運行させている状態です。
そのため、予定していた新型車両の大量導入の代わりに、現在運行している特急用車両の中で最も新しく、かつ安定した運行を実現している261系を、今後160両増備していくとの方針が打ち出されました。
結果、いずれ北海道の非電化区間を走る特急は261系に281・283系の高年式車という時代が近い将来訪れるわけです。
今回、開発を中途で断念したハイブリッド走行システムは省資源とCO2等の排出削減には大きな役割を果たす技術です。JR東日本が一部実用化しているシリーズ式は、リゾート列車や、話題づくり的に短距離のローカル線での運用にとどまっており、増車の話も聞きません。
電気式ディーゼルにバッテリーを付加したようなお手軽ハイブリッドでは、用途も限られるからでしょうか。

今回の開発中止は、役員を派遣している冒険嫌いのJR東日本の意図も強く働いたものと考えるのは、私の邪推でしょうね(笑)。

JR北海道には、今回の新特急車両の開発によって得られた技術的な成果を生かして欲しいものです。
そして、さらなる新車両の開発のためにも、検測車として使用する試作車の新システムから得られる様々なデータを収集活用して欲しいものです。

特に、普通列車で多用されているキハ40等の旧式気動車の後継車の開発は焦眉の急となっています。
今回得られた開発の成果を役立てる場面はけっして少なくないと考えます。

私は、現在のJR北海道の特急車両の中では261系が最も好きですから大歓迎です。
ただし、それは車体傾斜装置が装備・活用されているとの前提の上です。
一部報道と巷間ささやかれている車体傾斜装置の廃止は反対です。現在、261系の同装置は作動を停止されています。そのため、スーパーとかちにいたっては所要時間が10分近くも増加するという弊害を生んでいます。
車体傾斜装置に空気を圧送する装置の不具合の問題との話も漏れ聞きますが、JR北の公式な発表は線路と装置の保守の関係で安全確保のためだとしており、齟齬を感じます。安全・安全とお題目を唱えれば、社会がすべて許してくれる、待ってくれると信じ込んでいる様子も伺えます。
私は安全をないがしろにしろと言うつもりは毛頭ありません。ただ、この会社には、なんでも秘密にしたがり、取り繕うような閉鎖的な社風を強く感じるのです。
その一方で、列車の運行情報を一部の鉄道ファンにたれ流すなど、一貫性も感じられません。
社員全体に広がる親方日の丸意識と、自分は関係ないという風土も感じます。
駅で談笑するなとは、言いませんが、近くを利用客が通ったときに、口を閉ざしてしまうような話題はやめて欲しいものです。

今回の甲種輸送は、偶然に室蘭近郊の登別の母の家に行く用事と重なり、東室蘭のJR貨物ターミナルで待機している姿を撮影できました。