北のとうさんの鉄道旅・アマチュア無線JA8HBO

札幌に住むおやじが北海道を中心に鉄道旅の話題や無線の話題も織り交ぜてぼやきます。アマ無線のコールサインJA8HBO

国から見放された北海道の鉄道

2016年11月19日 | JR北海道 JR北
JR北海道の経営問題が顕在化したのは、表面的には函館線大沼駅での貨物列車の脱線と石勝線での車両火災が発端だった。
この二つの事故は、設備の整備保守費用を無理に削減して、強引に営業損失を削減しようとしたことが、根本的な原因であったことは間違いない。
この会社が、ここに及ぶまで経営を続けたことへの責任は、うやむやになっている印象がある。
事故多発当時、現場から100本の枕木を要求すると10本しか届かないといった信じられないようなことが組織的に行われていたそうだ。この大沼の事故は数名の社員の書類送検というトカゲのしっぽ切りのような後始末で終わっている。
さらに言うと、経営安定基金の運用益による損失の補てんができなくなっていることに対して、国は根本的な対策を講じることなく、漫然と小手先の策だけを弄してきたことも大きな原因だろう。
要するに国の不作為なのだ。過去の政策をわずかでも見直すことを嫌い、30年前のスキームをひたすら維持し続けてきた。

JRも「今後は頑張ります」とひたすら言っているだけでは、我々一般人には過去の過ちを本当に反省しているようには感じられない。
 逆に開き直って、これからは安全に資金が必要だから、利用者が金を出せと言っているように見える。
ここに及んで、経営不安が表面化してきた結果、驚くことに国はまるで他人事のような立場でJR北と北海道の自治体に後始末と責任を押し付けようとしている。
上下分離などという実現不可能な愚作をJR北に推進させようともしている。もし、この愚策を実行するというのなら、国が相当額を将来に渡って、負担するべきと考えるが、今のところ「支援する用意がある」という、いかにも官僚的なコメントしか出ていない
ここに及んでは、株主として、この会社の経営形態を大きく変更するくらいのことをしてほしいものだ。
 現経営陣の力量の問題も問われるはずだが、何事もなかったように続投している。新幹線の函館開業で一定の区切りはついたのだから、交代させて、北海道の商工界や全国の財界から人材を迎え入れることくらいをしてほしいのだが・・・・。
国は、何とか今のままの形態で乗り切りたいのだろうが、もう持続不可能なことや、上下分離も自治体が受け入れることはないのは分かっているはずだ。
 人口の減った北海道の鉄道は不要なんだろうと決めつけて、廃止ありきで進めようとしているのは明らかだ。

(解体を待つ急行はまなすの客車)

乗らないのだからバスで良いだろうと、訪問した自治体の首長に北海道運輸局の役人が語ったという。
雪の怖さを知らない地域の方々は、バス転換を簡単に言う。
雪が少ない太平洋側の地域ならまだしも、北海道の多くの地域では、吹雪のバス停で時刻表より大幅に遅れているバスを待つことが日常になっている。雪のない地域の方々に理解しろと言っても、無理だろうが、少なくとも北海道の移動手段としては鉄道は適したものだ。
JRの今回の公表文書を読むと、除雪の大変さを幾度となく嘆いている。
しかし、バスの走る道路も除雪が大変なのは同じだ。そして除雪費用は我々が税金として負担している。JRも運賃として徴収しているはずだが、足りないなら、国を説得して冬季運賃を設定すればよい。
健康保険では、病院にかかるとクリニックなどは冬季に一律で70円(21円)の請求をすることが認められている。これと同じことだ。間もなく出てくるだろう運賃値上げの提案には冬季料金の設定も考えるべきだろう。

過疎化も人口減も30年前にはわからなかったというのは詭弁だ、高齢化と過疎化は相当前から確実視されていたし、この30年で手を打つタイミングはいくらでもあったのに、放置してきた関係者の責任は重い。
第一、誰も乗らないようなダイヤを組んで「ほら、乗りません」ではあまりに稚拙と言わざるを得ない。この見本が札沼線で行われている愚作だ。

まあありえないが、国は日本の食糧基地である北海道を放棄したいのか、南は中国、北はロシアが手を出さないとも限らない。これは荒唐無稽な話ではない。
鉄道は国土保全にも、さらにロシアとの貿易拡大にも資する社会資本なのだ。北海道を見放したとロシアが気づいた時、北方領土返還など夢物語になってしまうだろう。
 このまま、自治体が吞めないような合理化策を進めるならば、ほとんどの路線は廃線となって、JR北海道は500キロ程度の札幌近郊と旭川、帯広方面への路線を運行する小さな鉄道会社となってしまう。その場合、新幹線は東日本に譲渡すべきだろう。
同時に、現在7000人と言われる社員は相当数が離職することになる。今は雇用情勢が良いと言われるが、求人の多くは非正規雇用と販売・サービス業と医療・福祉の分野だ。鉄道マンがたやすく転職できる職場はほとんどない。
多数の離職者の発生は北海道経済に大きな打撃を与えることとなるのは明らかだ。

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維持困難区間の公表を受けて・・・国鉄分割民営化スキームの見直しを

2016年11月18日 | JR北海道 JR北
国鉄分割民営化は、当時の国鉄の状況と政治状況からすれば選ばれる一つの手段であったことは明らかで、間違いだったとは思えない。

JRになってから接客やサービスなど利用者からすれば本当に良くなったと感じている。頻繁に行われた労使紛争によるストライキも消えてしまい、果たして労働組合はあるのだろうかと疑うほどに静かになった。
それでも労働組合と経営陣の対立は一部では続いているので、それを見て、労働組合なんて不必要だなどと考えている若い世代がいるのが滑稽にさえ思える。
JR北の問題は労働組合だなどと主張するのは的外れだろう。
私の学生時代の労使対立から見たら、実に穏やかなものだし、この程度の活動は労働組合としては当然だろうと感じている。

私のサラリーマン転職生活では労働組合のある会社と無い会社があったが、やはり一労働者としては労働組合の必要性は強く感じる。
ブラック企業として名を馳せてしまった電通や和民には労組はあるのだろうか。無ければ納得できるし、あるならば、労組としては失格と言わざるを得ない。
(間もなく廃線となる留萌線の増毛駅)

さて、JR北が「独自では維持できない路線」なるものを発表し、北海道の自治体、ひいては利用者たる北海道民、観光客に反旗(白旗)を翻した?。
いや、喧嘩を売ったといっても良いかもしれない(*^。^*)
本来であれば、営業面での利用客増加で売り上げと利益増加を狙うのが営利会社としては当然のことなのに、減便・減速で逆に利用者が減少するような施策を打ち出してきた。

古今東西、このような手法で再建できた企業はどれほどあったのであろうか。少なくとも、復活して発展したなどという話は稀だろう。
札幌にある老舗の菓子舗が、このような手法で昔からの顧客だけをターゲットとして根強い人気で経営を続けているが、公共交通と違って店舗数を縮小しても他店の商品で代替えが効く物を販売している点で大きく異なる。
公共交通は、ある意味、代替えの効かない商品、サービスを提供しているから営業の縮小は、社会的な影響は比較にもならないほど大きい。

この「縮小再生産・均衡」の中、「貧すれば鈍す」で営業面でのアイデアなどは枯渇してしまい、結局は会社自体が破たんしてしまうのではないかと心配になる方向へ驀進している。

 話を戻すが、国鉄分割民営化から30年、JR6社には、子供でも分かるほどの明らかな格差が生じている。「兆円」単位の投資で新しい高速列車を走らせようとする会社がある一方で、JR四国と北海道は、まったく未来を見通せないでいる。比較的安定していたかに見えていたJR四国も、先日の社長会見で、近い将来の路線見直しの可能性を明らかにした。
JR四国はJR北海道の今後を固唾を飲んで見守っていくことだろう。

このように分割された各社に格差が出たのは、言うまでもなく新幹線の存在だったのは論を待たない。
ただ、国は30年前に四国、九州、北海道の今日の状況を想定して経営安定基金なるものを「3島会社」に付与し、その運用益で営業損失を補てんするようなスキームを編み出した。
北海道は、特に厳しい状況を想定して約8000億円もの基金を積み立てた。しかし、予想外の低金利時代が到来し、近年さらに2000億円を積み増して総額1兆円超という金額になってしまった。
 1兆円から生み出される運用益(実際には国の特殊法人からの補てんだが)は昨年度は約420億円だが営業損失はさらに大きいので、埋めることができないでいる。
今年度は台風被害の復旧費用などもありさらに営業損失等が嵩み経常損失は200億円以上を見込むという有様だ。
その上、次年度以後も約180億円の損失を出し続ける見込まれる。
今後も低金利が長く続くと思われる今、この基金の運用益で損失を補てんするスキームは破綻し、今や現実的ではないと思われる。
現段階では新たなスキームでJR四国とJR北海道の経営を維持すべき時ではないかと思う。
責任逃れと、過去の分割民営化の修正をしたくない政府・国土交通省が盛んに喧伝しているといわれる上下分離も一つの方法だが、同省の意を受けて、JR北海道が盛んに主張する沿線自治体が地上部分を所有する形は、果たして現実的なのかと考えるとき、各自治体にそのような財政負担に耐える力がないことは明らかで非現実的と言わざるを得ない。
大げさに言えば荒唐無稽ということだろう。

欧米の鉄道は国が介在する上下分離が主流であるが、もし再建の手段が上下分離しかないのであるならば、わが国でも地上部分は国または特殊法人が保有する形が妥当ではないかと考える。

 地方自治体が出資するにしても国が主体となり、北海道と沿線自治体、さらにJR貨物が出資する「特殊法人」に地上部分を保有させ、JR北海道は運行と営業に専念するのが現実的かと考える。
さらに言えば、列車運行会社には北海道の商工界も出資してもらい、経営に参画してもらうのが良いと思う。
現状、JR北海道には営業力は無いといってもよいほどだ。2020年に国が目指す外国人観光客4000万人を実現させたいなら指すならなおさらでう。
ただ、北海道の商工界とJR北の関係が必ずしも良好ではないのがネックになるかもしれない。

 11月18日のJR北の提案はまるで最後通牒のようにも感じる。
 しかし、北海道民はここでは冷静に捉えて、上下分離などの手段を講じてでも残す路線と、鉄道は廃止してバス・乗合タクシーなどに転換する路線とに仕分けすることを、まず行うべきかと思う。
そして、民意をくみ取りながら一定の時間をかけて綿密に検討してほしいものだ。
JR北海道は3年などと一方的に期限を区切ったが、それにとらわれることはないと思う。

今後は、夕張支線線や日高線の一部で動きがみられるような、むやみに廃止に持っていくことだけは避けなければならない。代替え交通機関とされるバスでさえ、今後は確保できるのか不透明でもあるのだから。

以上述べてきたように私の考え方は国に支援を求めることなのだが、そのこと自体を嫌う方々が多いことに驚く。
たとえ辺境の地であろうとも人が住み暮らすための手段を国は守らなければならない義務がある。
富の再分配の一つの形なのだが、それは国のなすべき大きな役割である。

今日、正式にJR北が発表した維持困難路線の説明には冬期間の除雪の困難さが幾度となく文面に出てくる。
ただ、それは自動車道路とて同じなのだ、安易にバス転換しても除雪の困難さは変わらない。

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JR北海道・維持困難13区間を事実上公表

2016年11月15日 | JR北海道 JR北

「このままでは北海道から鉄道が消えていく日は近い」
本日は11月15日の北海道新聞をなぞりながらブログを作成した。
 JR北海道の島田修社長が14日、東京都内で道内選出の与党国会議員らの会合(非公開の自民、公明両党の「北海道総合振興に関する勉強会」)において「JR単独では維持が困難な路線」について、10路線13区間となることを表明。社長が公の場で具体的に維持困難路線に言及したのは初めて。18日にも記者会見で正式発表する。今後、路線廃止を伴うバス転換などを軸に、沿線自治体との協議に入る。

JRは早急に沿線自治体と協議に入る方針だが、13線区の関係自治体は56市町村に上り、協議は難航も予想される。維持困難路線は、現在の道内の鉄路の約半分に当たる計1237・2キロ。輸送密度のほか、区間ごとの赤字額、その区間に設置されているトンネルや橋などの設備の老朽化の状況などを踏まえ、路線を選定した。
具体的には
1.留萌線 深川―留萌間、
2.札沼線(学園都市線)北海道医療大学―新十津川間、
3.根室線富良野―新得間
(計179・4キロ)は、早期にバス転換を提案する。同様の状況にある石勝線新夕張―夕張間(16・1キロ)はすでに廃止が決まっている。

4.日高線の苫小牧―鵡川間
5.同.鵡川―様似間(現在は不通)、
6.宗谷線名寄―稚内間、
7.根室線の釧路―根室間(花咲線)
8.同・滝川―富良野間、
9.室蘭線沼ノ端―岩見沢間、
10. 釧網線 東釧路―網走間、
11.石北線新旭川―網走間、
12.富良野線富良野―旭川間
以上計7路線9区間(計1041・7キロ)については、「上下分離方式」で沿線自治体と協議を進める方針。
さらに
13.根室線帯広―釧路間
14.宗谷線旭川―名寄間
(計204・5キロ)についても、将来的に地元などへの負担増を求める方針を示した。
両区間は、列車の高速化事業などを行う 第三セクター の北海道高速鉄道開発(札幌)が線路の一部などを保有しており、JRは自治体による維持管理費などの積み増しを求めるとみられる。

今後、12月初めには留萌線留萌―増毛間が廃止され、 さらに北海道新幹線 の延伸後は函館線函館―小樽間(287・8キロ)が経営分離される。
さらに現在は函館・札幌間の大動脈として特急が一日12往復通過運行されている室蘭本線の長万部・苫小牧間約130キロも大幅に利用客が減少して、経営形態の変更が必須と見込まれるので、廃止も無いとは言えない。
この区間をあわせると道新幹線札幌延伸後は2000キロ近い区間が何らかの形で経営形態が変更されるか、廃止となり、15年後にJR北海道単独での運行を確信できる在来線区間は500キロ足らずとなる。
これは、最も悲観的に見た場合に北海道に残る在来線の距離ということになるし、北海道の自治体の財政状況を見る限りは、あながち大袈裟とはいえない。

JR北海道が行う、以上の合理化は単に沿線自治体の財政を圧迫するのみならず、現在7000人とされるJR北社員の大幅減員も伴うことになり、北海道の雇用情勢、ひいては経済情勢にも大きな影響を与えることとなる。
観光路線である富良野線や釧網線の廃止ということになれば、両線を利用する多くのインバウンド観光客に対する影響も看過できないものとなり、農業と並ぶ北海道の基幹産業である観光にも影を落とす。
単に、一鉄道会社の経営問題にとどまらず、北海道全体に与える影響の大きさを十分に自覚した上で的確な結論を出して欲しいものだが、とても楽観的に考えることはできない。

 国交省によると、全国的には上下分離方式でJRが運行を担う事例はないとされる。果たして上下分離しか方策はないのであろうか。
おそらくは、国土交通省の官僚が画策したものであろう。四国と北海道では、明らかに分割民営化は失敗した。その失敗を検証することもなく、新たな「上下分離」なる奇策をJR北海道の経営陣に押し付けたのであろう。
上下分離は、欧米において国単位で行われている。しかし、我が国では市町村単位で試行してみようというのか。国の政策を鵜呑みにしてレジャーランドを経営し、結局は破たんに至った夕張市を想起させる。

上下分離が実際に行われた際は、JR北で余剰とされてしまう社員の受け皿として第三セクター の設置を含め様々な方策を検討し、模索しなければならない。
国には何も期待できないであろうことは、相変わらず首都圏・都会偏重の現政権を見れば分かるが、国(機構)が株式を保有する形の独立行政法人などによる線路設備の保有を期待したい。
また、北海道によるさらなる出資、支援への期待もしたいところだ。高橋知事は赤字の解消を路線縮小だけで解決しようとする姿勢を批判しており、現状では期待できない。

知事は人件費の削減に言及したことがあるが、JR北の社員の賃金はけして高くはないので、できる範囲での見直しを要求したものだろう。
労働条件も悪くはない。以前、中堅の社員の方が言っていたが、昔勤めた会社から見たら天国のような環境だと笑っていた。
しかし、労働条件を低下させろとはいえないし。労働基準法の絡みもあるので、おかしなことは言えないが、会社の危急存亡のときに平常どおりに休暇が取れ、同じように給与が支払われているだろうことに、私は疑問を持たないわけでもない。

PS
JR日高線 を巡り、新ひだか町の住民有志が同区間の廃線は避けられないとし、バス転換による新たな交通体系構築に向け活動する市民団体「日高の公共交通を考える有志の会」を立ち上げた。管内の町長らでつくる日高総合開発期成会や日高町村会に年内にも陳情する予定とのことだ。
これまでのJR北海道と沿線自治体との協議を踏まえ、「JRには復旧の意思が感じられない。存続にこだわっていては話が進まない」と地域から声を上げはじめている。
日高線は廃線に向けて一定の方向性が出てきたものと思われる。
正直なところ、首長は決断できずに「存続」を唱えるばかりだが、住民は現実的な判断を望んでいるということだし、実態に即して正しい判断だと感じる。

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