「デフレの正体」で一躍注目された藻谷浩介さん。じつは旅行オタクで、日本全国全市町村を回っているとか世界各国も可能な限り回っているとか。全国47都道府県を全部回ったぐらいで喜んでいるぐらいでは全くのひよっこでした。
その藻谷さんは毎日新聞のインターネットサイト「経済プレミア」に海外見聞録を連載していて、この本はその抜粋です。毎日新聞はネットでfollowしていないので連載は読んだことはないのですが、連載は続いているみたいなので、これからは読んでみましょうか。

この本で藻谷さんが行った国は、さすがにディープかつマニアックなところばかり。
最初に取り上げたところは「カリーニングラード」
バルト3国とポーランドに挟まれたロシアの飛び地。知らなかったけど、ここは第2次世界大戦のあとドイツから奪ったところ。その昔はハンザ同盟の一員だった貿易港であり、プロイセン王国建国の地であった。当時そこに住んでいたドイツ人はすべて強制移住させて、その後ロシア人が入り、建物を根こそぎ旧ソ連式に造り替え、今はロシア人しかいない。その過程で犠牲になったドイツ人将兵、住人は戦争中、戦後を含めて十数万人以上となるという。ここと比べると日本の満州引き上げ、シベリア連行の規模は大したことないと思えるほど。長い歴史の中で複雑に絡み合っているヨーロッパの領土問題は島国の日本人には想像が及ばない経緯があり、ジェノサイドとか強制移住などはユーゴの解体をみれば現在進行形であって、解決とは何かもわからないし出口は見えない。
戦争の結果、それまでの歴史的経緯を無視してロシアの領土にしてしまったという点では、日本の北方領土と同じなのだが、今やこのカリーニングラードはロシアにとって戦略的に非常に重要な土地となり、またそこにはドイツだけでなくポーランド、リトアニアまで複雑に絡んでいる。仮に北方領土を解決することでカリーニングラードの問題に火が付くのならロシアにとって絶対に容認できないことなのだろう。
次は英国のユナイテッドキングダムの実情。北アイルランドにウエールズ、スコットランド。イングランド以外の地を訪れて、その複雑な心情と経済の実情を描いている。ブレグジットとともに.北アイルランドの過去の激しい対立の怨念が再び吹き出しそうになること、スコットランドのアンビバレントな心情、イングランドとは一線を架したウエールズの町、なかなか凡百の旅行記ではわからない実態経済に即した情報がどんどん出てきます。
続いては旧ソ連・コーカサス3カ国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)。ほとんどの日本人は,相撲の把瑠都の出身がジョージアという以外はどういう国かも知らないだろうけど、民族と利害が複雑に絡み合ってそれぞれが内部紛争を抱えている。複雑すぎて簡単には説明できないのでぜひこの本を読んでください。
この後藻谷さんのインタビューが挟まれていますが、取材の裏側がよくわかります。基本的には自費でコンパクトカメラ片手にできるだけ歩き回って犬も歩けば棒に当たるという精神で観察をしていきます。「地理は歴史の微分、歴史は地理の積分」と言うように、過去の出来事から構造を理解することが大事ですが、直観に従って歩きながら見た儘を感じるを基本にしています。インフラのメインテナンスの状況は必須の観察事項みたいですけど。実際に自分で旅行日程を考えて航空券を取り、ビザを取っているので、実際に実務的な参考になることもいろいろあります。もっとも私はドメスティックに生きているので使うことのない知識ですけど。
この後はさわりだけですが、スリランカとミャンマーを巻き込むインド対中華の地政学。インドと中国という2大国の端に位置するスリランカとミャンマーの立ち位置の難しさ。うまく立ち回れば大きなメリットを得ることもできそうですが、飲み込まれていくリスクも抱えています。これはある意味日本の立ち位置にも共通することも…
台湾・韓国・中国の高速鉄道乗り比べは、鉄道オタク的な面もわかります。もちろん高速鉄道の駅周辺の開発や路線のありようにも目を配っていています。現在の岐阜羽島駅のありようを見るにつけ、駅を作ればいいというものでもなく、いろいろな構想があったにしろ経済的合理性を欠けば駅が孤立するだけで、あり様を深く考えさせられます。
最後はアメリカの周辺。アメリカではかつて中継地で栄えたアンカレジ。中米のパナマに南米のボリヴィア。それぞれの国・地方の来し方行く末に思いを走らせます。
世界各国の現地を歩いた実情を知ることによって、日本の実力とあり様を映し出すことができるはずで、参考になるとともに考えさせられます。詳しくは本を読むか、毎日新聞の「経済プレミアム」の連載を読んでみてください。
その藻谷さんは毎日新聞のインターネットサイト「経済プレミア」に海外見聞録を連載していて、この本はその抜粋です。毎日新聞はネットでfollowしていないので連載は読んだことはないのですが、連載は続いているみたいなので、これからは読んでみましょうか。

この本で藻谷さんが行った国は、さすがにディープかつマニアックなところばかり。
最初に取り上げたところは「カリーニングラード」
バルト3国とポーランドに挟まれたロシアの飛び地。知らなかったけど、ここは第2次世界大戦のあとドイツから奪ったところ。その昔はハンザ同盟の一員だった貿易港であり、プロイセン王国建国の地であった。当時そこに住んでいたドイツ人はすべて強制移住させて、その後ロシア人が入り、建物を根こそぎ旧ソ連式に造り替え、今はロシア人しかいない。その過程で犠牲になったドイツ人将兵、住人は戦争中、戦後を含めて十数万人以上となるという。ここと比べると日本の満州引き上げ、シベリア連行の規模は大したことないと思えるほど。長い歴史の中で複雑に絡み合っているヨーロッパの領土問題は島国の日本人には想像が及ばない経緯があり、ジェノサイドとか強制移住などはユーゴの解体をみれば現在進行形であって、解決とは何かもわからないし出口は見えない。
戦争の結果、それまでの歴史的経緯を無視してロシアの領土にしてしまったという点では、日本の北方領土と同じなのだが、今やこのカリーニングラードはロシアにとって戦略的に非常に重要な土地となり、またそこにはドイツだけでなくポーランド、リトアニアまで複雑に絡んでいる。仮に北方領土を解決することでカリーニングラードの問題に火が付くのならロシアにとって絶対に容認できないことなのだろう。
次は英国のユナイテッドキングダムの実情。北アイルランドにウエールズ、スコットランド。イングランド以外の地を訪れて、その複雑な心情と経済の実情を描いている。ブレグジットとともに.北アイルランドの過去の激しい対立の怨念が再び吹き出しそうになること、スコットランドのアンビバレントな心情、イングランドとは一線を架したウエールズの町、なかなか凡百の旅行記ではわからない実態経済に即した情報がどんどん出てきます。
続いては旧ソ連・コーカサス3カ国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)。ほとんどの日本人は,相撲の把瑠都の出身がジョージアという以外はどういう国かも知らないだろうけど、民族と利害が複雑に絡み合ってそれぞれが内部紛争を抱えている。複雑すぎて簡単には説明できないのでぜひこの本を読んでください。
この後藻谷さんのインタビューが挟まれていますが、取材の裏側がよくわかります。基本的には自費でコンパクトカメラ片手にできるだけ歩き回って犬も歩けば棒に当たるという精神で観察をしていきます。「地理は歴史の微分、歴史は地理の積分」と言うように、過去の出来事から構造を理解することが大事ですが、直観に従って歩きながら見た儘を感じるを基本にしています。インフラのメインテナンスの状況は必須の観察事項みたいですけど。実際に自分で旅行日程を考えて航空券を取り、ビザを取っているので、実際に実務的な参考になることもいろいろあります。もっとも私はドメスティックに生きているので使うことのない知識ですけど。
この後はさわりだけですが、スリランカとミャンマーを巻き込むインド対中華の地政学。インドと中国という2大国の端に位置するスリランカとミャンマーの立ち位置の難しさ。うまく立ち回れば大きなメリットを得ることもできそうですが、飲み込まれていくリスクも抱えています。これはある意味日本の立ち位置にも共通することも…
台湾・韓国・中国の高速鉄道乗り比べは、鉄道オタク的な面もわかります。もちろん高速鉄道の駅周辺の開発や路線のありようにも目を配っていています。現在の岐阜羽島駅のありようを見るにつけ、駅を作ればいいというものでもなく、いろいろな構想があったにしろ経済的合理性を欠けば駅が孤立するだけで、あり様を深く考えさせられます。
最後はアメリカの周辺。アメリカではかつて中継地で栄えたアンカレジ。中米のパナマに南米のボリヴィア。それぞれの国・地方の来し方行く末に思いを走らせます。
世界各国の現地を歩いた実情を知ることによって、日本の実力とあり様を映し出すことができるはずで、参考になるとともに考えさせられます。詳しくは本を読むか、毎日新聞の「経済プレミアム」の連載を読んでみてください。
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