怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「日本経済入門」野口悠紀雄

2019-05-18 07:54:56 | 
講談社現代新書で入門とついているのですが、決して入門書ではありません。
それなりに表現は分かりやすく数式は使わないように書いてありますが、内容は日本経済の現状を俯瞰するとともに巷間言われているようなことをデータに基づいて痛切に批判しております。

今の日本経済の産業構造は14年度で農業1.6%、製造業18.5%、非製造業68.1%。最近の伸び率を見ても製造業は停滞しており日本の中心産業は製造業ではなく、新興国と競争はできないので製造業の復活を目的とした経済政策は時代錯誤です。
日本の輸出のGNPに対する比率は約15%、アジア新興国と比べてかなり低く、輸出立国モデルは日本にとって過去の話。製造業の海外移転は不可避なのです。
ところで今や信頼性に疑問符がついていますが、毎月勤労統計によると日本の賃金の長期的推移は15年間で約1%低下しています。生産性の高い製造業では上昇しているのですが、医療福祉は大きく低下、小売業などは横ばいで比率が大きい部門に引っ張られて全体では低下という結果となります。また非正規雇用が伸びているために格差は広がってきています。日本では高い付加価値を生む高度サービス業が発達していないことが問題みたいです。
日本経済の不調はデフレが全ての原因だというのはアベノミクス以来政権べったりの学者が言うことですが、物価動向を詳しく見てみると工業製品の価格は著しく低下しているのですが、サービスの価格は上昇していて、サービスと工業製品の相対価格は大きく変わり、すべての物価が一律に下がる「デフレ」とは異なる現象です。
そして事実を見てい見ると消費者物価は需要面からはほとんど影響は受けておらず、原油価格と為替に大きく影響を受けている。デフレスパイラルによって消費が伸びないという訳ではないのです。円安は(輸出企業にとっては)企業収益増をもたらし株価も上げたのですが、、労働者の立場から見れば自らの価値を下げるものです。ドル建てで賃金を考えてみればわかります。企業収益があがれば税収は増えますし、株価が上がれば私も末席で微かに恩恵を被りましたが、円安が誰に利益をもたらすかを考えれば円安誘導なるものがいいのかどうか。誰のための政策なのか、国民がもろ手を挙げて願うものではないはずです。
異次元の金融緩和についていえば、よく言われていますが、マネタリーベースの増大がマネーストックの増加に結び付いていない。資金需要のないところでは貸し出しが増えるわけではない。結果として事実上は国債を日銀がファイナンスしていることになっている。金融政策では糸を引けるが押すことはできない!ところで金融緩和が円安をもたらしたという評価ですが、円安に方向を切ったのは野田政権の末期。アベノミクスの始まる前です。為替は海外の経済事情に大きく左右され日本だけの政策で決まるわけではないのは当たり前のこと。その面ではあの時点で解散を判断した野田首相のセンスは最悪だったかも。
これからの日本経済を考える時には人口構造の高齢化に大きく影響を受ける。団塊の世代の高齢化に対する医療、年金の社会保障費の増大にどうやって対処するのか、現在の問題を先送りしてるうちに団塊の世代は後期高齢者となって先送りできなくなってくる。企業の競争力に影響するのは法人税よりもむしろ社会保険の事業主負担。
今求められているのは金融緩和ではなくて技術開発と生産性向上。ここらあたりの議論はアトキンソンさんも同じようなことを繰り返し述べています。確か新刊(日本人の勝算)が出たと思いますので併せて読んでみてください。
でもサービス産業の生産性向上については具体的にどうすればいいのか、ここで思考がいつもとん挫するのですけど。
アトキンソンさんによれば最低賃金を大きく引き上げ、生産性の低い企業は退場してもらえば、自ずと生産性の高い企業が残るということなんでしょうけど。
話は違いますが、熊谷徹が東洋経済オンラインに「お客様は神様はドイツ人にはありえない理由」でドイツのサービス業の実情を書いています。国民性の違いなんでしょうが、ドイツでは24時間営業などはあり得なくて、売り場に人も少なくて店員が張り付いて接客するなんてこともない。日本では「お客様は神様です」とばかりに痒いところに手が届くようなサービスをしているのだけど、そんな接客はありえないドイツなら過剰なサービスをするぐらいなら値段を下げてくれという感覚かも。ドイツと日本の一人当たり消費金額はそんなに変わらないかと思うのですが、小売りの従事者数が少ないのならその分ドイツの生産性は高いということになるのか。日本は痒い所に手が届くサービスは当たり前で無料だと思っていることが生産性が上がらない事由?機械にできることは機械にさせて使い方が分からない人のために横に立つことはやめて、コンビニでも深夜は全品2割増しとか宅配便でも再配達は有料とかすべき。過剰なサービスにコストが掛かる分はお客が負担すべきということでしょう。そうすればサービス業の生産性はあがり従業員の給料も高くすることが出来る。
う~ん、でもこれには消費者の意識改革も必要ですね。

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