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怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

山崎元「予想と希望は分割せよ」

2025-03-27 20:39:58 | 

2024年1月1日に亡くなった山崎元さん。この本が完成間近の逝去で結果的に最後の著書になりました。

2022年8月にステージ3の食道がんが見つかり手術。1年後に再発して闘病生活をしていたのですが、この本は山崎さんのいかにも資産運用本にしたくないということで、人生相談の位置づけ。楽天証券の投資情報メディア「トウシル」に読者から寄せられた疑問に回答したものがベースです。

がんが見つかり転移もあり、かなり厳しい状況になっても山崎さんは実に理性的論理的に回答しています。総じて人間はどうしても希望的観測のもとに予測をしがちなのですが、予測は冷静に事実を直視し、そのうえで判断を下す。でも分かっているけど自分の見たいものしか見ないし見えないと言うのが私達凡人の性。そこを怜悧に断じているのが山崎さんの魅力です。

質問に対する内容は証券会社とか銀行、保険会社にとっては不都合な真実なのでしょうけど、全く忖度していません。以前から山崎さんは書いているのですけど、対面のセールストークには胡麻化されて行けない、投資対象が生じた場合の運用競争では「平均」のポートフォリオを持ってじっとしていることが有利。アクティブ運用の実績を見ればインデックスファンドに劣ること、未来は誰も分からないのだから事前にどのアクティブファンドが運用実績が優れているかは選択不可能な以上、手数料の安いインデックスファンド、オルカンが優れていると推奨。金融機関が奨める手数料の高いファンドは問題外というと銀行などにとっては天敵のようなもの。まあ、自分の自由になる資金で趣味を兼ねて株式投資することまでは否定していませんけど自分が責任を持って判断出来る範囲でやると言うのは大原則です。

保険についても触れていますが、自らのがん闘病に要している経費も公開して、がん保険は意味がないと言い切っています。健康保険には今国会で問題になっている高額療養費制度があり、がんにり患しても多少の貯金があれば十分対応できるとのこと。山崎さんが2022年に支払って医療費は約235万円。でもそのうち約160万円は1日4万円の個室料。もちろんこれは保険診療の金額なので保険適用外の医療を行うとなればその分は大きくかかりますが、保険適用がない治療というのは必ずしも効果があるとは認められないので適用外と言えるのでは。森永卓郎さんは適用外の治療にかなりのお金をかけていたみたいですけどどれだけ延命効果があったのか。がん保険に入ったからと言ってがんにかからないわけではないですし、保険会社にとって有利な保険だから高いコストをかけて宣伝して売っている。

信託銀行のファンドマネージャーをしていた時には顧客の口座の利益付け替えが横行していたので密かに問題を告発していたこと、三和総研の研究員でいた時には「ダイエーは経営破綻してもおかしくない」とコメントして三和銀行を巻き込んで大騒ぎになったとか、でもそれは金融業界で働く人がやっている仕事にやりがいを持てるようにと思っての直言です。

金融関係のことばかりではなく、人生をどう考えるのか、趣味は何がいいかとかも自由に書いています。死後の世界は不可知で根拠なしで他人の作った物語を信じるのはバカバカしいと言うのは如何にも山崎さんらしい。他人と競合しない趣味を持てるといいと言い、料理を推奨。ウイスキーが趣味だと言えるレベルには達しなかったそうですが長年の友達だったと言っています。でもその飲み方が食道がんにはよくなかったのでは…ちなみにファイスブックは年寄りが同窓会で自慢話をしているような冴えない空間になっていると鋭い指摘していますが、いい歳をした大人がどこそこへ行きました、何を食べましたなどと言うのは情けないばかりと言われるとその程度のことを発信しているだけの私は恥じ入るばかりです。

最後の最後まで編集に当たって叱咤激励のメールを編集者に送っていたみたいですが、私には取り乱して鬱々とするだけでとてもできないと思っています。66歳というと今では若すぎると言うしかありませんが、瀧本哲史さんと言いぐっちーさんと言い、森永卓郎さんと言い、生き馬の目を抜くというこの業界にいると心の奥深くで神経を使いストレスをため込んでいたのか思ってしまいます。死後の世界は信じていない山崎さんに向かって言うのも何ですがご冥福を祈ります。

コメント
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