怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」「荒神」

2020-11-08 07:05:44 | 
硬い本を読んでいると合間に宮部みゆきの小説を無性に読みたくなる。読みだすと止まらなくてグイグイ読めるのですぐに読み終えてしまうのが欠点でしょうか。人気作家なので新刊が出るとすぐに予約殺到で、この本を借りるのに予約して順番待ちに何か月か掛かっています。すぐに読み終えてしまうので、次の予約をするのですが、また順番待ちなんですよね。
「昨日がなければ明日もない」は杉村三郎シリーズの最新刊。最初は逆玉の輿で大企業の広報室勤務だったのですが、紆余曲折があって今はしがない私立探偵になった杉村さん。

中編3篇からなっていますが、テーマというか設定は結構重たくて暗い。
「華燭」については話の展開がちょっとあり得ないというか現実味が感じられなかった設定だったので、イマイチ感情移入できませんでしたけど、杉村さんと彼の事務所の大家夫人とその周辺の人間関係と描写でそれなりに面白く読むことが出来るのですけど、これは作者の力量でしょう。
他の2編ですけど、まずは「絶対零度」
体育会系マッチョ集団のアンシャンレジームが巻き起こす事件。依頼を受けた杉村さんが飛び回って事件を解明していきます。私自身は体育会系の上下関係には嫌悪感しか感じないのですが、軟弱な運動音痴の文科系(と言うほどの文化はなかったですけど)だったからか。いまだにそんな世界に嵌まっている人がいるのかと思うのですが、日大アメフト部事件とか高校部活の監督コーチによる暴力事件も後を絶たないことからまだまだそういう文化は残っているのか。ここに出てくる夫のそういう世界に引き込まれ、そこから離れることができない妻と言うのは何時代に生きているのかと思うのですが、引き込まれて読んでいると説得力があって、現実にまだまだありそうに思えてきます。
この本の題にもなっている「昨日がなければ明日もない」
自堕落で浪費癖があり、あちこちに勝手なクレームをつけて周囲に混乱と迷惑をまき散らす毒親。負の連鎖でゆがんだ性格の娘。この本に出てくるような毒親は小説だからと思われるのでしょうが、かつての同僚に児童相談所のケースを仄聞するとこの程度の毒親は決してレアケースとは言えないのが悲しい。そんな親に育てられている子供も悲惨ですが、その親子に振り回される子ども、保護者、保育園、幼稚園、学校も疲れ果て消耗し、やってられなくなる。そんな親から依頼された件の顛末がストーリーなのですが、嫌悪感しか感じない毒親をありそうに感じてしまうところに怖さを感じてしまいます。
この2編、いずれも寛容と忍耐と誠実な対応で問題人物が悔い改めればハッピーエンドになるのですけど、最後はどちらかと言えば救いのない不幸な結末です。それだけに読後の余韻が残るのですが、不幸な連鎖がどこかで立ち切れ再生の道があることを願ってやみません。
もう1冊、宮部みゆきの「荒神」

これはだいぶ前に朝日新聞で連載されていたもの。当時朝日新聞では真っ先にこの小説を読んでいました。単行本化するにあたって大幅加筆となっていましたが、かなり以前(6~7年前?)のことなのでどう加筆したかは全く分かりませんでしたけど。
東北の山深い隣り合った藩の境界を舞台に、人を襲い食らうことで巨大化していく不気味な怪物、その物の怪を必死に退治しようとする人々。その怪物の正体は何で、どうやって封じ込めることができるのか。進撃の巨人のような話ですが、これまた読みだしたら止まりません。
一緒に写っているのは今野敏の「臥龍」ですが、これまた読みだすと止まらない。ハマの用心棒シリーズなのですが、少し読んで気が付いたのですが、これはもう読んでいた。でも最近記憶力の低下著しい私としては話の展開は大体分かっても細部の記憶は全くなく新鮮な気持ちで読み終えることができました。
コメント
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