怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

北村薫「水に眠る」・ジャレド・ダイアモンド「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」

2020-11-01 12:33:44 | 
金沢富山の旅行では往復しらさぎを利用、かつ名古屋・金沢とも始発駅ですので、今回は自由席にしています。
行きは当然ながらがら空きで1車両にちらほらの乗客。胃が痛い中ゆったりと休んで、ビールではなく午後の紅茶を午前中に飲みつつ本を読むことができました。
読んだ本は、北村薫「水に眠る」

短編集なのですが、「円柴さんと私」とか「中野のお父さん」シリーズを親しんでいる私としてはちょっと趣の違う小説ばかり。
列車に揺れながら次々と短い小説を読み進めることができましたが、短いながら読み終えた後、考えさせられるような余韻がありました。
列車は米原で進行方向を変え座席をひっくり返る必要があります。加えて新幹線から乗り継いでくる人もあって少し乗客が増えます。それでも空いているのは変わらず、本を読み進めて加賀温泉駅に着く前に読了。この文庫本は短編小説1編ごとに違った解説者が書いているというぜいたくな解説。ちゃんと解説まで読んでください。
帰りは金沢発なのでこれまた余裕で座れるのですが、米原まではそこそこの乗客でした。
でも2座席を占拠しても問題なしなので、帰りもゆっくり本を読んで過ごせました。結構集中して読んだので検札に来た車掌に気づかず、声をかけられてしまいました。
読んだ本は「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」
実はこの本の原題は「why is sex fun?」というもの。訳者が書いているのですが、最初原題に忠実に「なぜセックスは楽しいか」としたのですが、税関では通関できない可能性があると言われるなど色々と誤解されたので、文庫化する時に今の書名にしたとか。そう言えば図書館で検索したのですが「なぜセックスは楽しいか」は該当図書なし。不適当な本と判断されたのでしょう。
でも決してセックスの指南書ではなくて、青少年が有害な妄想を抱く危険性があるので読むべきではないという類の本でもなく、至って、まじめに人間の性生活を進化生物的に分析した本です。

この本の冒頭では犬から見た人間の性生活なのですが、動物全体から見れば人間の性生活はいかに奇妙に進化したものか。哺乳動物全体から見ればオスとメスがつがいになってともに子育てする方法を取るのは圧倒的に少数派です。ほとんどのメスは繁殖可能な短い排卵期間には目立つシグナルを発して周りに宣伝してオスを交尾に誘う。それ以外の時期にはオスを刺激する性的シグナルを出さず、オスも性的関心を寄せない。動物にとって交尾は楽しむものではなく繁殖と言う機能とは密接不可分です。
人間の場合は排卵を宣伝するシグナルは現れず、繁殖と関係なくもっぱら楽しむためにのべつ間もなく(今ではそうでもなくなりましたが)性交するのは動物全体から見れば圧倒的に少数派。生きるか死ぬかギリギリの生活をしてる野生動物にとっては繁殖以外に交尾にエネルギーを無駄使いするのは許されないと言うことか。と思うと人間は食料革命などで生産力に余裕が出てきたからエネルギーをこういう方向に使えるようになったのか。
動物はメスでも生きている限り繁殖能力がある。人間のメスのように閉経と言う現象はない。繁殖能力をなくした後もメスが生きていく意味はなぜだろう。ヒトは少なく生んで大事に育てた方が個体数は増えるという戦略を取っているから。おばあちゃんの底力と言うか閉経になって生産活動に復帰したほうが家族集団としてはプラスなのだろうし、娘なり息子なりの子つまり孫の子育ての支援が大事な仕事としてプログラムされているから…男はそういう仕事には役に立たずに機能が果たせないから死ぬまで繁殖能力があるけど繁殖能力を喪失すれば寿命が尽きる時、う~ん、私の余命はあとわずか…
男女の体の特徴についても、なぜ成熟していくと女は胸と臀部に脂肪をつけるのか。男のペニスは何故あんなに大きい(動物全体から見ると体との割合を見れば非常に大きい)必要があるのか。進化的な意義はどうなんだろうか。どちらも無駄に大きいほどセックスアピールできるクジャクの羽の大きさみたいなものなのか。
進化生物学から見れば多くの子孫を残すように自然淘汰の圧力を受けつつ、人間の体の特徴、性生活の在り方を獲得してきたはず。なぜこのような形態になったのかはそれなりの理由があるはずで、この本で縷々述べられている。
いや~面白くて、かつ知的刺激を受けてどんどん読み進めます。ここにある議論がすべて正しいかどうかは分かりませんが、お酒を飲んだ時の話の種としては大いに使えそう。 
丁度金沢から帰りのシラサギで読了できました。ジャレド・ダイアモンドは大作「銃・病原菌・鉄」は農耕栽培以後の人類の大きなストーリーで評判通りの面白さでしたが、この本もそんなに評判になった訳ではないのでしょうが読んで損はなくお勧めです。  




コメント
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