高校時代の同級生に勧められて読んだ「有頂天家族」ですが、荒唐無稽の森見ワールドはどっぷりつかると麻薬のような作用がある。
図書館の本棚を渉猟していると森見登美彦の棚にファンタジーノベル大賞受賞作の帯が私に色目を使ってきます。
思わず手に取ってみるとデビュー作の「太陽の塔」
早速借りて来て読んでみました。
帯に書いてある「膨らみ切った妄想が京都の街を飛び跳ねる」がまさに正鵠を得ている。
確か内田樹が書いていたと思うのですが、太宰治の小説に魅入られる人は小説を読んで「これは私のことを書いているんだ」「なぜ太宰は私の内面をこんなに知っているのか」と思うとか。
この本に書いてある膨らみ切った妄想は、まさに私の大学生時代の妄想です。日常的漫画的欺瞞の日々の中、孤独で猥褻で自意識過剰で精神だけは刃物のように尖って人を寄せ付けようとせず、昼夜逆転したような生活の中で精神世界だけが膨らみ続ける世界。
まさに主人公の一言で表現すると「華がなかった」大学生活。
女性とは絶望的に全く縁がなかったとは俺のことか。
何といとおしい妄想の世界。
齢66にもなるとこんな妄想に浸ることも考えることもできないのは残念と言うか歳をとったというべきか。
中学時代の同級生二人が京都の某大学に行っており、何回か下宿に泊めてもらい京都の街を逍遥したのですが、鴨川の河川敷に等間隔に並ぶ男女に対する激しい敵意と無駄な戦い、クリスマスイブの四条河原町の喧騒、あ~、京都は今も昔も学生の街です。
主人公の森本とその友人飾磨、高薮、井戸、それぞれ個性的で異様で性格。でもその中にはシンパシーを感じるというか私の一部と言うものがそこかしらに隠れているような。
どうも本のレビューを書くつもりが自分の妄想にふけった過去を書いているようで、ちょっとと言うかかなり恥ずかしい。独特な軽やかなリズムの文体にそんなことを思い起こさせる力がありました。
ところで表題の「太陽の塔」は、半ばまで読んでも出てこない。ある種の象徴的な意味があるのですが、ちょっとピンとこなかったか。この小説、どこで収斂するかと思ったのですが、クリスマスイブのええじゃないか運動で妄想のフィナーレを飾り、うまく着地しています。
日本ファンタジーノベル大賞についてはまったく知識がなく、これを読んでファンタジーとはちょっと違うのではないかなとも思うのですが、妄想こそファンタジーと考えればいいか。独特のリズムある文体で笑いながらちょっぴり身につまされて、ぐいぐい読むことができました。
同級生は森見作品では「夜は短し歩けよ乙女」を推薦していたと思いますが、この本を借りるときの図書館では見当たらなかったような。まあ、これが作者のデビュー作で受賞した出世作だったので、これは押さえておくべき本でしょう。
図書館の本棚を渉猟していると森見登美彦の棚にファンタジーノベル大賞受賞作の帯が私に色目を使ってきます。
思わず手に取ってみるとデビュー作の「太陽の塔」
早速借りて来て読んでみました。
帯に書いてある「膨らみ切った妄想が京都の街を飛び跳ねる」がまさに正鵠を得ている。
確か内田樹が書いていたと思うのですが、太宰治の小説に魅入られる人は小説を読んで「これは私のことを書いているんだ」「なぜ太宰は私の内面をこんなに知っているのか」と思うとか。
この本に書いてある膨らみ切った妄想は、まさに私の大学生時代の妄想です。日常的漫画的欺瞞の日々の中、孤独で猥褻で自意識過剰で精神だけは刃物のように尖って人を寄せ付けようとせず、昼夜逆転したような生活の中で精神世界だけが膨らみ続ける世界。
まさに主人公の一言で表現すると「華がなかった」大学生活。
女性とは絶望的に全く縁がなかったとは俺のことか。
何といとおしい妄想の世界。
齢66にもなるとこんな妄想に浸ることも考えることもできないのは残念と言うか歳をとったというべきか。
中学時代の同級生二人が京都の某大学に行っており、何回か下宿に泊めてもらい京都の街を逍遥したのですが、鴨川の河川敷に等間隔に並ぶ男女に対する激しい敵意と無駄な戦い、クリスマスイブの四条河原町の喧騒、あ~、京都は今も昔も学生の街です。
主人公の森本とその友人飾磨、高薮、井戸、それぞれ個性的で異様で性格。でもその中にはシンパシーを感じるというか私の一部と言うものがそこかしらに隠れているような。
どうも本のレビューを書くつもりが自分の妄想にふけった過去を書いているようで、ちょっとと言うかかなり恥ずかしい。独特な軽やかなリズムの文体にそんなことを思い起こさせる力がありました。
ところで表題の「太陽の塔」は、半ばまで読んでも出てこない。ある種の象徴的な意味があるのですが、ちょっとピンとこなかったか。この小説、どこで収斂するかと思ったのですが、クリスマスイブのええじゃないか運動で妄想のフィナーレを飾り、うまく着地しています。
日本ファンタジーノベル大賞についてはまったく知識がなく、これを読んでファンタジーとはちょっと違うのではないかなとも思うのですが、妄想こそファンタジーと考えればいいか。独特のリズムある文体で笑いながらちょっぴり身につまされて、ぐいぐい読むことができました。
同級生は森見作品では「夜は短し歩けよ乙女」を推薦していたと思いますが、この本を借りるときの図書館では見当たらなかったような。まあ、これが作者のデビュー作で受賞した出世作だったので、これは押さえておくべき本でしょう。