怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

小幡 績「円高・デフレが日本を救う」

2019-02-22 07:29:46 | 
アベノミクスとは何か?
それは「超緩和的金融政策」である。結局それに尽きる。
日銀が国債市場に介入し、その結果、株が上がって円が下がった。
こう言うと実も蓋もないみたいだけど、アベノミクスは悲観論により極端に割安だった株価を超金融緩和をきっかけに修正した。この修正は2013年4月までの半年でほぼ終了した。それ以降はアベノミクスとは無関係の市場の投資家による株価の上下だけ。
高度成長期の日本と違い今は人口は減りつつあり、円安によるガソリン、食料品の値上がりの方が経済に悪影響をもたらす。現実に円安になっても輸出数量は増えることなく経済全体トータルで見ると国富が減少している。
外国人投資家が買いやすくなって株価が上がったことだけで喜んでいてはいけない。
そもそも今の日本では需要不足とは言えないのに、無理やり金融緩和でじゃぶじゃぶと金を提供して短気に需要をつくろうとしても無理筋。現在の日本は人口減少社会に入っていて、高齢者は増えていても消費の中核となる生産年齢人口は減り続けている。もともとの潜在需要が伸びる様子がないのに無理やり需要喚起しても効果は限定的にならざるを得ないということ。
成熟社会の中で質的な豊かさを追求していかなくてはいけない。
歯切れのいい言葉でアベノミクスを一刀両断。高度成長の成功体験という過去を捨てて政策ヴィジョンの構造改革を行えと言っている。
そこからアベノミクスの代案を提示し、真の成長戦略への道を示している。
分かりやすい論旨で成熟経済に入っている日本の進むべき方向を示しているのですが、問題は国民が短期的なリセッションをどこまで耐えられるのかということか。代案は現在の金融緩和を前提として、慎重に途中下車して、いかに負けないように守り切る金融政策を行うのかとなっているのだけど、もちろん痛みのある政策であり、一時的には国債市場の混乱が生じ、年金の実質カットとか、公共事業の一部停止とかも必要になってくるかもしれない。
政治の世界では、アベノミクスと称して痛みを伴わない短期の刺激策を集中して行い、コストとリスクは先送りした結果として安倍一強による長期政権となった。
馬鹿正直に国民に痛みを訴える政治家は当選の望みはないでしょう。ということは実現可能性としては限りなく小さい。
結局コストとリスクが顕在化し、にっちもさっちもいかないように追い込まれた時にしか修正ができないとすると暗澹とした気持ちになります。
代案から進めて第8章では「真の成長戦略」についても書いてあります。
それは人を育てること、雇用関係と無関係な社会保障制度の構築、政府は補助に徹して伸びてくるところを側面的に支える。こうして真の好循環をもたらしていくはずとなるのですが、これは各論では議論が色々あり、抵抗勢力も強固なので、日本の進むべき道としてとてもまとまりそうではないのでは。

通奏低音としては日本経済はもはや高度成長は無理で人口減少社会となりで高齢化が進む中で、今取るべき道を考えなくてはいけないという現状認識があります。国民にとっての円高・デフレのメリットを考え、高度成長の幻想を追う政策はとるべきではないというアトキンソンさんの「新・生産性立国論」とも相通じる認識があります。
文章は平易で読みやすいのですが、通貨価値を守る円高・デフレこそが日本社会を継続的に発展させるという論旨は迫力あるアベノミクス批判となっていて一読の価値ありです。
コメント
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