怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「困難な結婚」内田樹

2017-07-28 08:05:00 | 
日本人男性の生涯未婚率は20%を超え、結婚しない、できない人が私の周りのもたくさんいる。我がテニスクラブにも何人かいるのだが、もはや50歳を過ぎて統計上は生涯未婚確定。いつもは枯れた雰囲気が漂っているのだが、テニスの後のいつもの飲み会にミポリンが隣に座ったりするとその時だけはやに下がって現役感を醸し出している。
う~ん、こんなに生涯未婚率が右肩上がりでは、この日本はどうなってしまうんだろう。
日本は非嫡出子の率が非常に低く、そのため生涯未婚率の上昇は少子化に直結している。子育て環境をいかに整えようと結婚しなければなかなか子供も生まれない。
でも、内田先生曰く、結婚ということは法律的にとかその形態はともかく人類が誕生してきてから男女が一緒になり子供を産み育てるということをしてきたのである以上、「誰にでもできるはずのもの」であり、それでなければ人類の再生産は不能になってしまうはず。「とても大切なものだからこそ誰にでもできるのでなければならない」というのが根本にあるはず。どうやら現代人は結婚を難しく考えすぎているかもしれません。
この本は、結婚する前の人が読めば「結婚したくなり」、すでに結婚している人たちが読めば「結婚生活が気楽になる」ことを目的にして書かれたもの。私自身、これを読んで、ちょっと気楽になったかな。

ところで結婚するとなるといろいろ条件を付けてハードルを高めている人が多いのですが、未来のことは分からない以上、結婚後もその条件をクリアーし続けられるかは全く分かりません。結婚してからいつの間にか容色も衰え、事業に失敗したりすると話が違うとなるのですが、そもそも結婚というのは、病気したり失業したり、そういう困難に直面した時に支えあうためにするもの。自身が「健やか」で「富める」時には結婚しなくてもいいし、そのほうが可処分所得も多いし自由気ままに過ごせる。こういうと身も蓋もないのですが独身のほうが楽なのです。まあ、結構独身生活が長かった私もこれは全面的に同意します。
でも結婚というのは「病気ベース」「貧乏ベース」で考えるもので、人生の危機を生き延びるための安全保障なのです。「結婚」という制度は「幸福になる」ための制度ではなくて「不幸にならないようにする」、生存率を高めるための制度なのです。
みんな分かっているのかな…
ところで今の若者が結婚できないのは雇用問題(詳しくは山田昌弘さんの本でも読んでください)と言っていますが、日本全体を見ればそうなんでしょうが、私の周りの人は雇用もしっかりしているし、そこそこの財産もありそうな人ばかり。これは一体何なんだろう。
さていざ結婚しても、この人は本当の自分にふさわしい理想のパートナーでないなどという輩がたまにいますけど、本当の自分と偽りの自分などというのはデジタルに分かれているわけでもないし、全部等しく「自分」なのです。結婚は一期一会で男女が出会って、恋愛関係が始まった段階で、たった一つの後戻りできない道を歩み始めている。誰と結婚するかによって人生は変わりますが、後戻りできない以上、いい悪いを比べることは不可能で、どれがよくてどれが悪いとは言えないはずです。
因みに、内田先生もこの状況を憂慮してか見合いの世話焼き役を買って出て何人かを引き合わせたことがあるそうですが、結果は一つもまとまらず。昔は「迷っているのなら嫌いっていうわけでない」からとばかりに周りがどんどん手続きを進めていっていた(私の父母も聞いた話ではそんな感じでした)のですが、今は「迷っているならやめなさい」と親が言う時代。結婚してしまえば少なくとも家庭生活では「男なんてだいたい同じ」なんですけど、今の親はひょっとしたら子供がずっと結婚しないで独身で年を取っていくことを望んでいるのでしょうか。
ところで、最近は結婚式もしないという人も多いのですが、結婚式の誓いの言葉なんて言うのは、先のことは分からないし、(小説や漫画の世界ならともかく)誰も責任をもって誓えないはず。でも儀式進行上その期に及んで正直に「誓えません」ということもできず、みんな誓うのですが、この誓言が結構最後に効くこともあるとか。「神様を前にして約束しちゃったから」という気おくれが最後の一歩を踏みとどまらせるということだってある…そういう意味では仲人だって共同責任者であり、結婚生活がうまくゆくかどうかを夫婦以外にも気にかけている第三者がいるということは大切だとか。まあ、私は誰かに頼むのも面倒臭くて照れ臭かったので、仲人なしでしたけど。
こんな風にいろいろ書いてありますが、実は内田先生もバツイチで再婚しています。どうしてですかという質問もあったのですが、やっぱり夫婦と言えどもある種の権力関係というかどちらかがボスにならざるを得ない。最初の結婚を失敗したのは当初は内田先生が無職で向こうがボスだったのに、定職を得てからそれにカチンとくるようになったからとか。今は年も離れているし権力関係は安定しているみたいでうまくいっているみたいですけど。
とまあ、ほんの触りを紹介しましたが、質問に答える形で書いてあり、文章は平易で読みやすく、サクサク読み進めていくことができます。思わず我が身を振り返ることもあるのですが、「私の結婚生活、まあ、それでいいんだ」と最初に書いたようにちょっと気が楽になったかな。危機管理の面でいえば一人娘のかみさんの両親は無事看取り、私は2回とも喪主を務めました。私の父も2年近く胃ろうで要介護5の状態で看取り、これまた喪主を務めたのですが、独身だったら大変だっただろうと思います。まだ半分認知が来ている母が残っているので気が抜けないのですが、「めでたさも 中くらいなり おらが春」と思うしかないでしょう。
未だ結婚していないあなた、ぜひ手に取ってみてください。
コメント
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