怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「世間のカラクリ」池田清彦

2015-10-29 07:14:22 | 
「ほんまでっか!?TV」のレギュラーコメンテータとして武田邦彦と組んで珍説奇説をさも本当らしく話している爺さんという印象があるが、本を読んでみると前にも紹介したように至って真面な生物学者です。世の中すべて遺伝子で決まるというものじゃないという生物進化の話は説得力があります。
この本は「池田清彦のやせ我慢日記」というメルマガを再構成したものですが、その分時評的で文体も砕けていて読みやすい。

いろいろな論点があるのですが、2~3紹介します。
地球温暖化説のまやかしというか二酸化炭素の量と気温は言われるようにはリンクしていない。確かに天気予報を聞いていても「今年10月の降水量の少なさは記録があるこの70年で最低」などとよく聞くのですが、ということは気温などの記録がきちんとあるのは高々この100年にも満たないということ。地球上の気温の記録があるのもその程度だとすると、簡単には100年単位の気温変動を論じられないでしょう。ごく限られた観測地点(それは文明化してヒートアイランド現象が起きているところが多いと思われるのですが)で全地球の気温の動向を言うのはどうか。都市化して人間が過密に生活し、生産活動をして熱を出していて、ほとんど自然が残っていないところの気温は上がるのは確かですが、それと地球温暖化は別でしょう。
言われるように過去にももっと大きな気候変動はあり、北極の氷はほぼなくなった時もあれば小氷河期で飢饉が起こった時もあったとすると、二酸化炭素と気温変動の影響はもっと精査が必要でしょう。ムードに踊らされて地球環境にいいと思ってやっていることが本当にいいのかどうか。
でも結構権威ある国連の機関が各国を集めて取り組んでいるのは、やっぱり裏に国としての利害思惑が裏に隠れているからで、お人よしの日本は建前に踊らされて苦労だけ背負わされている…
大麻と煙草については、たばこの害というけど感受性に個人差があって人によっては喫煙している方が長生きできるというのも、そうかもしれません。確か和田秀樹先生だったかが80歳過ぎての喫煙者は非喫煙者より元気だなんて言っていたよね。一方大麻は麻薬と違って習慣性もそれほどなくて健康に悪いという説も確かでないとか。まあ、酒でも飲みすぎると明らかに健康に悪いんだけど比べてどうなのということか。国家権力で大キャンペーンをして「ダメ絶対」と言わなければならない代物かですね。
健康に関していえば検診で日本人の半分くらいが引っ掛かる正常値という検査数値はやっぱりおかしいでしょう。数値が異常というのは圧倒的に少数だから異常なのでは。でも日本人の平均寿命は世界一なんですけど。以前何かの論文で検査数値と何年後かの生存率の関係をコーホート分析で調べたもので、コレステロールとか肝機能とかはほとんど関係なくて、唯一血圧は優位に相関があったとかというのを読んだ記憶があります。この本に書いてあるようにコレステロールが低い人の方が死亡率が高くなるというのはあちこちで言われています。日本人は心筋梗塞の死亡率は食生活もあるのでしょうが欧米より低いはずで、むやみに薬で下げるなんて言うのはやめるべき。
これは検診でいつも高脂血症で医者へ行けと言われている身としては耳に心地よいから余計激しく同意してしまうかもですが。
血圧についても加齢によって高くなるのは当然で、ある程度以上の年齢では血圧が高めでないと活動量が落ちてかえって寝たきりになりやすいというのは首肯できます。すべてが医師と製薬会社の陰謀というのもどうかと思いますけどね。
近藤誠のがんもどき理論についてもがんの発生の機序から解説してあってよく分かりました。がんは最初はたった1個の細胞変異から生じ何年もかけて大きくなっていく。検査で見つけられるぐらいの1センチまで成長していたら、それはがん細胞としては末期というべき状態。その状態で転移にしていなければ、それはがんもどきで手術しなくてもいい、転移していれば下手に手術するなりするとかえって体を痛めてしまうので緩和医療なりすればというのは、そうと分かっていても実際にがんと診断された時にほかっておけるのかな…ましてやがんもどきががんに転移する可能性はあると言われるとできるだけ苦しくない手法を選ぶにしても、やっぱり治療を選択しますよね。まあ運よく後期高齢者まで生き延びることができれば検診も受けずがんと分かっても(そのころには癌の進行も遅くなるので)積極的治療はしないと思いますが、まだまだそこまで割り切れない今日この頃です。
この他にもいろいろな論点を切れ味鋭く裁いてありますが、興味があれば続きは本を読んでください。
コメント (1)
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