何ともあざとい題名ですが、内容はやたらと挑発的なところがあるにせよ至極まともです。
子供の診療科は小児科があり、そこでは心身の発達状況に合わせた医療が行われている。しかし、老人に対してはどうか。最近こそ老人科とかができてきたが、その内実は内科のポストの増設で、老人の心身の状況を踏まえた医療になっていない。
筆者は老人病院として先駆的だった「浴風会病院」に勤務して数多くの老人患者を診てきた経験から成人と同じ医学知識で老人を診ても駄目だと言い、従来の常識は通用しないと具体的に述べている。アメリカと日本の老人医療の標準的テキストを見ても、その問題意識は大きく違っていて、日本のそれは老人の心身の状況に即していないと。
高齢化がどんどん進み今や高齢化率は30%になろうとしている時にこんなことをしていると、老人にとっても不幸であるし、医療費も際限なくかかってしまう。
後期高齢者医療制度を創設した時に、診療報酬体系も変えるという話もあったのだが、医療界を始めとした各方面からの反対が強く、ほとんど変えていなかったと思う。この本を読むとその議論がもっともっと必要だったのかと思うのだが、そこには裏付けとなる老人医療が学問として確立していなかったのだから対抗する術もなかったか。この本でも繰り返し大学できちんと何が必要か実証しろと言っているのだが民間の一精神科医の挑発に乗る人はいないみたいです。
筆者によると老人、と言っても80歳以上みたいですが、経年劣化によって動脈硬化はある程度進んでいる。その場合拡張期血圧は自然と下がってくるし収縮期血圧は高くなる。動脈硬化が進んだ血管は血液の流れが悪いので収縮期血圧が高くなければ血液を十分に末端まで運ぶことができない。
ここで50代と同じ判断基準で血圧を下げるために薬を出してしまうと脳に血液が行き渡らず「元気がない」「ふらふらする」ということになる。挙句の果てにつまずいて転んだり、せん妄が出て来るとなれば何のための薬かとなる。高齢者は下げすぎ(と言っても成人の正常値なのですが)にも注意しなくてはいけないのです。
血糖値についても高齢者の場合一日の変動が激しいし、たまたま検査した時に高くても夜間低血糖という場合もあり、そんな人に薬で血糖値を下げると慢性低血糖症になってしまう。脳への栄養補給が十分できなくなり、脳に重大なダメージを与え、認知症と同じような症状が出てくる。検査数値よりも自覚症状に注意しないといけない。
成人と同じような検査数値で老人を判断するのは私も素人ながらどこかおかしいと思います。
今盛んに骨粗鬆症の恐怖が言われているが歳を取ると骨のカルシウム量は減り女性なら8割の人が該当する。世界一寿命の長い日本女性の8割が恐ろしい病気にかかっているというのだろうか。骨粗鬆症は大騒ぎするようなことではなく誰にもなる老化現象の一つに過ぎないのでは。データを見てみると大腿骨警部骨折の人はすべて骨粗鬆症によるとしても骨粗鬆症の人130人に一人の頻度。恐ろしい病気と宣伝することによって必要のない人にまで薬をだしていれば(ほとんどの人に骨粗鬆症と病名がつけれるので日本全体でみれば膨大な量の薬を出すことができます)老人医療費は破たんしていく。老人医療費の使い道としてはもっと必要とされているところがあるでしょう。
ところでその昔老人病院の過剰診療が問題になったため入院医療費の定額制が導入されたのですが、結果それまでの薬漬け、点滴づけではもうからないので当時の有名な老人病院の院長によると、薬が三分の一に減ったそうです。薬がろくにもらえなくなった入院高齢者がどうなったかというと、寝たきり高齢者の多くが歩き出したと。残念ながらこれは全国的に調査した結果ではないのですが、大学の老人科の医師で入院療養費定額制の影響を調べた人はいないみたいです。こんな結果が出ると薬を出せなくなるのでいろいろ立場上困るだけなんでしょう。
日本の診療報酬が出来高払いなのでとにかく検査をこなして病名をつけて薬をたくさん出してなんぼの世界となってしまうのですが、如何ともし難いのでしょうか。
著者は精神科医なので特に目につくのでしょうが、老人には精神症状が出る場合が多く、例えば「せん妄」であり、「うつ」であるのですが、適切な治療が行われずに安易に安定剤、抗うつ剤で対処されてしまいがち。主治医は精神科専門医でないので往々にして心身状態を見ることなく大量の薬が出がちで、薬の副作用で朦朧としてしまうことも多いとか。
認知症について言えば、今は曲がりなりにもアリセプトなどの薬もあり、介護認定されればディサービスなりのサービスも受けられるので、診断を受ける意義はあるのですが、一番重要なことは普段通りの生活を続けること。認知症にとって周囲の環境が変わると進行が速くなるので、早く診断された結果、危ないなどと言って家に閉じ込めておくなどするとかえって早く進行する。
ここから認知症の知識と医者の掛かり方、家族の心得などが書いてあるので入り口に差し掛かっている親を持つ身としては参考になります。
若干独断気味ですが傾聴すべき点も多々ある本だと思います。
子供の診療科は小児科があり、そこでは心身の発達状況に合わせた医療が行われている。しかし、老人に対してはどうか。最近こそ老人科とかができてきたが、その内実は内科のポストの増設で、老人の心身の状況を踏まえた医療になっていない。
筆者は老人病院として先駆的だった「浴風会病院」に勤務して数多くの老人患者を診てきた経験から成人と同じ医学知識で老人を診ても駄目だと言い、従来の常識は通用しないと具体的に述べている。アメリカと日本の老人医療の標準的テキストを見ても、その問題意識は大きく違っていて、日本のそれは老人の心身の状況に即していないと。
高齢化がどんどん進み今や高齢化率は30%になろうとしている時にこんなことをしていると、老人にとっても不幸であるし、医療費も際限なくかかってしまう。
後期高齢者医療制度を創設した時に、診療報酬体系も変えるという話もあったのだが、医療界を始めとした各方面からの反対が強く、ほとんど変えていなかったと思う。この本を読むとその議論がもっともっと必要だったのかと思うのだが、そこには裏付けとなる老人医療が学問として確立していなかったのだから対抗する術もなかったか。この本でも繰り返し大学できちんと何が必要か実証しろと言っているのだが民間の一精神科医の挑発に乗る人はいないみたいです。
筆者によると老人、と言っても80歳以上みたいですが、経年劣化によって動脈硬化はある程度進んでいる。その場合拡張期血圧は自然と下がってくるし収縮期血圧は高くなる。動脈硬化が進んだ血管は血液の流れが悪いので収縮期血圧が高くなければ血液を十分に末端まで運ぶことができない。
ここで50代と同じ判断基準で血圧を下げるために薬を出してしまうと脳に血液が行き渡らず「元気がない」「ふらふらする」ということになる。挙句の果てにつまずいて転んだり、せん妄が出て来るとなれば何のための薬かとなる。高齢者は下げすぎ(と言っても成人の正常値なのですが)にも注意しなくてはいけないのです。
血糖値についても高齢者の場合一日の変動が激しいし、たまたま検査した時に高くても夜間低血糖という場合もあり、そんな人に薬で血糖値を下げると慢性低血糖症になってしまう。脳への栄養補給が十分できなくなり、脳に重大なダメージを与え、認知症と同じような症状が出てくる。検査数値よりも自覚症状に注意しないといけない。
成人と同じような検査数値で老人を判断するのは私も素人ながらどこかおかしいと思います。
今盛んに骨粗鬆症の恐怖が言われているが歳を取ると骨のカルシウム量は減り女性なら8割の人が該当する。世界一寿命の長い日本女性の8割が恐ろしい病気にかかっているというのだろうか。骨粗鬆症は大騒ぎするようなことではなく誰にもなる老化現象の一つに過ぎないのでは。データを見てみると大腿骨警部骨折の人はすべて骨粗鬆症によるとしても骨粗鬆症の人130人に一人の頻度。恐ろしい病気と宣伝することによって必要のない人にまで薬をだしていれば(ほとんどの人に骨粗鬆症と病名がつけれるので日本全体でみれば膨大な量の薬を出すことができます)老人医療費は破たんしていく。老人医療費の使い道としてはもっと必要とされているところがあるでしょう。
ところでその昔老人病院の過剰診療が問題になったため入院医療費の定額制が導入されたのですが、結果それまでの薬漬け、点滴づけではもうからないので当時の有名な老人病院の院長によると、薬が三分の一に減ったそうです。薬がろくにもらえなくなった入院高齢者がどうなったかというと、寝たきり高齢者の多くが歩き出したと。残念ながらこれは全国的に調査した結果ではないのですが、大学の老人科の医師で入院療養費定額制の影響を調べた人はいないみたいです。こんな結果が出ると薬を出せなくなるのでいろいろ立場上困るだけなんでしょう。
日本の診療報酬が出来高払いなのでとにかく検査をこなして病名をつけて薬をたくさん出してなんぼの世界となってしまうのですが、如何ともし難いのでしょうか。
著者は精神科医なので特に目につくのでしょうが、老人には精神症状が出る場合が多く、例えば「せん妄」であり、「うつ」であるのですが、適切な治療が行われずに安易に安定剤、抗うつ剤で対処されてしまいがち。主治医は精神科専門医でないので往々にして心身状態を見ることなく大量の薬が出がちで、薬の副作用で朦朧としてしまうことも多いとか。
認知症について言えば、今は曲がりなりにもアリセプトなどの薬もあり、介護認定されればディサービスなりのサービスも受けられるので、診断を受ける意義はあるのですが、一番重要なことは普段通りの生活を続けること。認知症にとって周囲の環境が変わると進行が速くなるので、早く診断された結果、危ないなどと言って家に閉じ込めておくなどするとかえって早く進行する。
ここから認知症の知識と医者の掛かり方、家族の心得などが書いてあるので入り口に差し掛かっている親を持つ身としては参考になります。
若干独断気味ですが傾聴すべき点も多々ある本だと思います。