事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

殺人の動機

2010-10-01 12:18:51 | ミステリ

なんてものは怨恨、金、口封じの3つぐらいしかないわけで、「動機が同じだからパクリ」なんていわれた日にはミステリの新作なんか一切出せないことになる

のではあるが、久々に読み直してみると「愛国殺人」(2つ前の記事参照)の犯人はびっくりするほど「砂の器」の彼(加藤剛の役)に似てる*し、ミステリとしてのでき=犯人の意外性で読者をアッと言わせるテクニックは先輩の方がはるかに上、これ、もうちょっと年代が近かったら、絶対パクリ疑惑が生じたんじゃないかと思う

幸か不幸か「愛国殺人」は1940年初出、「砂の器」の連載が始まった昭和36年にはたぶんまだ翻訳出てなかったろうから、清張は知らなかった可能性が高い、それにどこかオトギ話めいた(実際童謡が基調の)クリスティ作品と、社会派の清張では作風違い過ぎるし・・・

でもそれどうかな、少なくとも「砂の器」は組織の犯罪じゃない、イギリスと日本という舞台装置の違いをはずして考えるとやっぱ似てるよ、私はクリスティを後に読んだし、何よりも意外な犯人の意外な動機に「アッ」と言うしかなかったから、以前に読んだ別に意外じゃない犯人と似てるなんて、その時は全然思わなかったらしいんだがな

*どこが似てるか?-身元不明の死体、ややこしい偽装工作、動機が「20年以上前に自分の顔を覚えられたこと」(わ、ネタバレ!!)、守るべきは金持ちまたは権力者との結婚(わ、もっとネタバレ!!)、無償の共犯者が存在-てなとこかな

あれ、何かホントにパクリのような気がして来た、「砂の器」の動機にどうして権力者(の娘)との結婚がかかわるのか(彼の職業は作曲家)、恋人がどうして黙って協力してくれたのか、最初読んだ時からどうも不自然だと思ってたもんね(不自然でないミステリなどあるか!!)

付記-「人間の証明」が「砂の器」のコピーなんてスットンキョーなことを言い出したヒトがいなきゃ思い出しもしなかったと思うんだが、よく考えたら「証明」に似てるのは清張作品でも「ゼロの焦点」じゃないか、「焦点」は昭和33年の連載、「証明」とは発表年代に20年の差がある分、被害者の性格は変わってるが、犯人の正体、戦争がらみの動機、守るべきもの、まさにまんまじゃないか、「焦点」がついこの前映画化されたのに「証明」に似てるって誰も言わなかったのはなぜ?(忘れられてただけとか・・・)

10/2付記-と思って検索してみたらけっこう似てると言ってるヒトがいた(映画について)が、森村誠一がパクったとは言われてないようだった、当時はまだ清張も健在だったハズだけど、きっと後輩に対しては鷹揚だったんだろね、ああ、もうあれから30年以上たつんだなあ・・・・・