とは外山滋比古さんの本である。長年の間読み継がれて百万部を突破したとかいつぞやの新聞で見たことがある。その本をブックオフに行ったときちくま文庫に収録されたものを古本で買っていたのだが、最近読み始めてあと2つの節を残すばかりとなった。
なかなかいろいろ書いてあって創造的な仕事をする人には有用である。「自分の思いついたアイディアは他人に話すな」とかある。これは頭のいい人に自分のアイディアを話すとその欠点を指摘されてめげてしまうことが多いからだという。
頭のいい人というのはその欠点にすぐ気がつくような人である。だが、ひょっとしたらその中に含んでいるかもしれない可能性にまでは気がつかないものである。
私もアイディアを他人に話したことがあるが、そのときにすげない反応だったことを覚えている。もっともそのときにはまだそのアイディアは十分でなかったので、もうすこし考えてその欠点を補い、そのアディアをもとにその後になって数本の論文を書いたことがある。
これはそういうアドバイスの一つなのだろうが、やはり大学院時代に数学者の池田峰夫先生から自分のアディアが形をとってまとまるまでそのことを自分の先生であっても相談するなと教えられたことがある。彼はある程度まとまって論文の形にした後なら、もし誰かから酷評されてもここまでやってしまったのだからまあいいやとなると教えられた。
なんでもないことだが、池田さんからそういうアドバイスをもらったことがあるのは私ぐらいかもしれない。もっとも彼が京都大学に帰った後では彼の指導を受けた学生は同じことを聞いたかもしれないが、私は狭い意味の彼の学生ではなかった。
別に私が彼から注目されていたということでもないし、なぜそういうアドバイスをしてくれたのかはわからない。もっともそれは私が多分に大学院生として研究が行き詰って苦しんでいたときのことであったろう。そういう苦しんでいる様子は私が彼につらいと漏らしたことはなかったのだが、私の直接の先生方を通じて伝わっていたのかもしれない。
池田峰夫さんは60歳前後で病気のために亡くなった。晩年の様子を詳しく知っているわけでもない。彼は数学者の山口昌哉先生の後任として京都大学工学部に勤めていたことしか知らない。
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