昨夜のTEDカンファランスの放送は、すい臓がんの簡単で安価な検査の方法を確立した、アメリカの高校生の講演であった。
Jack Andrakaは15歳のアメリカの高校生であるが、すい臓がん(pancreatic cancer)の安価で5分でできる検査法を確立した。
すい臓がんがなかなか見つけにくいということはよく知られており、その検査法も高価だという。それは血液中のたんぱく質の中で8000種類もあるものから、すい臓がんに関係したものをみつけるという操作に手間がかかるためだという。
検査にかかる費用は80万円(?)くらいかかるらしい。Jack君は親しかった叔父をすい臓がんで最近亡くした。そのことが彼がすい臓がんに関心をもった理由である。
インターネットでWikipediaとPublic Library of Scienceで検索をしてすい臓がんについて調べた。その中ですい臓がんに罹ったことを示す、メソテリンというたんぱく質があるということを知って、これをどうやって簡単に検査できるかを考えた。
アメリカ中の約200人のすい臓がんの研究をしている医者にメールを出して、自分の研究計画を示したが、それらの研究者の199人からは否定的な返事しか来なかった。1人だけ関心を示してくれた教授の実験室を借りることができるようになり、検査法の確立の実験をした。
そのアイディアは高校での生物学の授業の途中で思いついた。それは抗体についての生物学の先生の退屈な講義中であった(注)。カーボンナノチューブについての最新の科学雑誌をその授業中に見ていたところ、メソテリンとカーボンナノチュ―ブとの組み合わせることを思いついた。
血液とか尿からその中にメソテリンが増加していることをその検査材料を用いて調べればよい。電気抵抗がメソテリンが増加していれば、変わるのだという。
約5分の検査で生存率100%の段階でメソテリンを検知できるのだとはJack君の講演で知った。
私は兄嫁をすい臓がんで亡くしたし、自分自身もいつかはすい臓がんで死ぬのではないかと予想したりしている。だから、これはなかなか希望の持てる話である。
Jack君のお父さんは土木技術者であり、おかあさんは麻酔科の医師であるという。彼によると小さいころから彼の疑問に両親は答えてはくれなかったが、彼の疑問を解くための助力を惜しまなかったという。
いまでは、無料でいろいろな情報や知識をインターネットで得ることができるようになっており、それでJack君の研究ができたとのことである。
私もいろいろなことでサイトで検査したりするが、これは主に日本語で検査しているせいか、なんでも答えが見つかるわけではないと思っている。だが、かなりのことが以前と比べてインターネットで分かるようになっているとは思う。
(注) 放送の中では抗体の講義が退屈だったとあったが、このブログでもいつかも述べたように抗体そのものが退屈だというわけではない。これはJack君の当面の関心からは遠かったということを示しているだけだと思う。
コメント有難うございます。
やはり研究はヒトの個性によるという感じを強くしました。
この一人の先生は関心をもってくれたのですが、その先生に話に行ったときに、その場に約20人の研究者が同席をされて、よってたかって質問攻めにされたそうです。わるい言葉で言えば研究者が若い高校生をいじめたような感じです。
強い個性の人ではないとつぶれてしまいます。
その前に200人の研究者にメ―ルしたときに、ある教授は研究計画に細かくそれは上手くいかないと反対の理由をコメントして送ってくれたということです。
それでもつぶれないくらいの自分のアイディアに自信があるというか。
もっとも研究計画は実際には実験をやりながら、いろいろと変更がなされたとのことです。
だから、Jack君が人の意見を聞く耳をもっていなかった訳ではないということも明らかです。
恐るべき15歳の高校生ですね。
そういえば、数年前になりますが、高校生のときに量子力学のそれも新しい知見までも取り入れた書を書いた、ドイツ人の女子高校生がいました。もう大学を卒業していると思います。
その書は訳書が岩波書店から出されました。私もそれを購入して持っていますが、あまりよくは読んではいません。
偉大な発見は偶然の産物かもしれませんね。めくら千人、めあき千人ともいいますね。おっと、この場合はめあき一人でしたか。