海岸線は、三の宮・花時計前駅~新長田駅間を結ぶ7.9㎞の路線(全10駅)で、神戸市営地下鉄としては4路線目の地下鉄で、リニア地下鉄としては、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、東京都営地下鉄大江戸線に次ぐ国内3番目の地下鉄です。
私は、今年7月に関西に旅行に行った際に初めて海岸線を利用してきました。
ちなみに、海岸線開業以前から営業していた神戸市内の3路線の地下鉄とは、具体的には、①山手線(新神戸~新長田間、7.6㎞)、②西神線(新長田~名谷間、5.7㎞)、③西神延伸線(名谷~西神中央間、9.4㎞)の3路線のことですが、実際には、これらの3路線は全線が通し運転で、新神戸~西神中央間22.7㎞が「西神・山手線」という通称で呼ばれ一つの路線として機能しており、更に西神・山手線は、北神急行電鉄(谷上~新神戸間、7.5㎞)とも相互直通運転を行っています。
海岸線は、当初は既存の地下鉄(西神・山手線)と直通することを前提としていたのですが、市交通局の財政が悪化したことから、建設費の安いミニ地下鉄として建設することになり、そのため、既存路線との相互直通は出来なくなってしまうものの、リニア方式を採用することになったのです。
リニア地下鉄として新路線を建設することを決めた神戸市は、平成5年に三宮~新長田間の免許を取得し、翌6年に海岸線を着工しましたが、阪神・淡路大震災によって高速道路の橋脚や築島橋の基礎が損傷を受けたため、基礎を避けて海抜30mの地中深くにシールドトンネルを掘ることに変更し、このため開業は予定よりも遅れ、平成13年7月に営業を開始しました。
海岸線は、将来的には三の宮・花時計前から更に路線を延伸・分岐させ、新神戸までの新線と、ポートアイランドを経て神戸空港に至る新線を建設することが計画されています。
更に神戸空港からは、海底トンネルを建設して関空にまで路線を延伸するという壮大なプランもあります(この場合の想定建設費は1兆円)。
ところで、リニア地下鉄とは具体的にどのような地下鉄なのかというと、その名が示す通りリニアモーター駆動の地下鉄のことですが、高速で走るリニアモーターカー(例えばJR東海の山梨実験線のようなリニアモーターカー)とは違い、車輪は浮き上がらず、車両は常にレールの上を転がる車輪によって支えられています。
そのため、見た目は普通の地下鉄と大差はないのですが、走行する原理が一般的な鉄道車両とは大きく異なっており、2本のレールの間に敷かれたリアクションプレートという金属板と、各車両の台車に設置されている磁界を発生するコイル(ニリアモーター)との間に発生する磁力によって車両が動きます。
このため、リニア地下鉄の車両は、例えレールの幅が同じであったとしても、リアクションプレートの設置されていない他路線への乗り入れは一切出来ず、利用者にとっては、実はあまり利便性が高いとはいえません。
それでも、近年リニア地下鉄が国内各地で建設されるようになってきた背景には、リニア地下鉄の建設費が通常の地下鉄よりも大幅に安いということが挙げられます。
なぜ安く建設できるのかというと、リニア地下鉄では、通常の鉄道では車両の台車に設置されている大きなモーターを平にしたモーター(コイル)に変えたことで、床下から線路までの高さを低くすることができ、これにより車両が小型化し、トンネルの断面積を小さくすることができるようになったからです。
また、車輪自体には動力がないため、車輪の空転によって思うように加減速が出来ないということもなくなり、これによって急勾配にも対応できるようになり、様々な埋設物が埋まっている都会の地下でもトンネルのルートが簡単に決まられるようになり、これも地下鉄の建設費削減に大きく関係しています。
しかも、海岸線で使われている5000系電車は軸バネをゴムブッシュして柔支持し、これによってステアリング(自己操舵)機能を持ち、また、ゴムサンド式の防音車輪を採用しているため、走行音も静かで、急カーブでの軋み音もあまりしません。
昨年2月に開業した福岡市営地下鉄七隈線や、今年の12月に開業予定の大阪市営地下鉄今里筋線もリニア地下鉄で、今後建設される地下鉄はリニア方式が多く採用される傾向にあります。
ただし、前述したようにリニア地下鉄は、他路線との乗り入れが出来ない、という大きなデメリットもあります。リニア地下鉄は専用線以外を自走することはできませんし、他路線の車両も、トンネルの断面積が小さリニア地下鉄の路線に乗り入れすることは出来ません。
例えば、リニア地下鉄である都営大江戸線の電車は、検査や修繕のため馬込研修場へ向かう際、リアクションプレートの設置されていない浅草線を走るのですが、そのときは自走が出来ないため、わざわざ専用の電気機関車E5000形(地下鉄の電気機関車としては国内唯一の存在)に牽引されて浅草線を走っています。
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