阪急と阪神が経営統合する事になった件については、平成18年6月2日の記事、同月5日の記事、同月29日の記事、同年10月2日の記事などでも解説させていただきましたが、今回はそれらの記事の続編的な内容として、経営統合を果してから6年を経た阪急・阪神の現状について、まとめてみようと思います。
…と思っていたら、先日たまたま読んだ週刊ダイヤモンドのバックナンバー(2012/8/4号)に『関西鉄道・流通地図が変わる!? JR西日本 VS 阪急阪神の熾烈』というタイトルの記事が掲載されていて、これが丁度良い内容だったので、以下にこの記事をそのまま転載させていただきます。かなり長いですが、二重かぎ括弧内の青文字の文章が転載箇所です。
『2005年9月、阪神電気鉄道を揺るがす“事件”が起こった。村上世彰氏率いる村上ファンドが筆頭株主になったことが発覚したのだ。
大株主として発言権を得た村上ファンドは、阪神タイガースの上場など、さまざまな要求を突き付けてきた。
追い詰められた阪神電鉄は、阪急ホールディングス(HD。当時)に助けを求め、阪急HDによるTOB(株式公開買い付け)が成立した。
こうして、積年のライバルだった阪急と阪神は、経営統合することになったのである。
村上ファンドの登場がなくても、両社の経営統合はあったのか。この問いに、当時、阪急HDの社長だった阪急阪神ホールディングスの角和夫社長は、明確に「ノー」と答えた。「長期的にはそういう議論が出てくることがあったかもしれない。しかし、私の頭の中には阪神電鉄と一緒になるという構想はまったくなく、夢にも思わなかった」。
大阪で起きた私鉄の巨大再編は、戦略的なものではなく、ファンドに後押しされる形で産み落とされた。だが、その後の関西鉄道網や都市開発のパワーバランスを大きく塗り替えることになった。
戦略なき統合は、どんな効果をもたらしたのだろうか―。
阪急電鉄と阪神電鉄は、梅田(大阪)―三宮(神戸)を走る両社の主要路線が競合する。
経営統合後もいまだに持ち株会社の下に両社がぶら下がる兄弟会社の形を取る。夜間整備列車を共通化するなどの合理化はしても、「鉄道会社はブランドもあり、短時間での合併は難しい」(角社長)という。
それよりも、「阪神の持つ豊富な資産を取り込んだという点で、阪急側にメリットがあった」(関西財界関係者)といえる。
図1-3に見られるように、統合以前(05年3月末時点)の阪急HDの自己資本比率は16.6%だったが、現在(12年3月末時点)は22.6%になり、バランスシートの改善に寄与した。
その資産の一つに阪神百貨店があるが、これは後に詳述する。
鉄道網の変化としては、09年に阪神なんば線が開通して近鉄奈良線と相互乗り入れし、三宮―奈良がつながり、奈良方面から乗り換えなしで甲子園球場に行けるようになるなど、大きな利便性向上をもたらした。ほか、神戸高速鉄道を子会社化したことが挙げられる(図1-4参照)。
第三セクターである神戸高速鉄道は、阪急神戸線、阪神本線、神戸電鉄、山陽電気鉄道の私鉄4線をつなぐ役割を担ってきた。
ところが、神戸高速鉄道を経由する列車に乗ると、利用者の多くは、鉄道3社ぶんの運賃を支払うことになり、割高なのが課題だった。そこで、09年に阪急阪神HDが当時の筆頭株主の神戸市から株式を買い取って、子会社化を実施した。
阪神電鉄がオペレーションを担うことで、コスト削減効果を出せるようになり、「将来的には運賃還元策も考えている」(阪急阪神HDの角社長)という。
こうした諸施策もあり、阪急阪神HDは、私鉄の中で、営業利益額、売上高営業利益率共にトップを誇る。一定の統合効果はあったといっていいだろう。
JR VS 私鉄―。“私鉄王国”の関西では、多くのJRと私鉄の路線が競合関係にある。その筆頭が、JRと阪急電鉄、阪神電鉄の路線が競合する、前述の梅田(大阪)―三宮だ。
阪急と阪神が統合する以前から、JR西日本を含む3社は、輸送をめぐって激しく競合してきた(図1-4参照)。
この勝負は、JR神戸線が1995年の阪神・淡路大震災からの復旧が早かったこと、新快速を投入するなどスピードを向上させたことで、「JRに軍配が上がる形で決着がついた」(関西の鉄道事情に詳しい関係者)。
現在、梅田(大阪)―三宮の運行時間は、JR神戸線が20分、阪急神戸線が27分、阪神本線が31分である。
スピード競争では、JRにかなわない。このため阪急と阪神は、特急の停車駅を増やして、沿線の利便性を向上させてきた。
阪急神戸線では、特急を岡本駅や夙川駅に停車させ、同時に夙川駅からの支線である甲陽線は15分に1本間隔での運行を10分に1本間隔に増便した。
同じように阪神本線も区間特急が香櫨園駅に停車するようになった。
また、08年には阪急神戸線の西宮北口駅前の阪急西宮スタジアム跡地に大型ショッピングセンターの「西宮ガーデンズ」を開発。阪急百貨店も入居するなど、ショッピングセンターとしては高級な雰囲気が阪急沿線住民の支持を受けて好調だ。
JR西日本も黙っていない。
阪急と阪神が特急停車駅を増やしたことに対抗して、JR神戸線に甲南山手駅、さくら夙川駅と新駅を開業した。現在も六甲道駅灘駅の間に新駅構想がある。
こうした阪神間での利便性向上競争もあって、梅田―三宮間の人口は伸びている。
さらに最近、JRと阪急阪神の間で勃発しているのが、関西国際空港―京都での乗客獲得競争である(図1-5参照)。
関空―京都には、JRの特急「はるか」が走っているが、これに対抗するべく、阪急と大阪市交通局(市営地下鉄)、南海電気鉄道の3社がタッグを組んだ。
はるかが3690円かかるのに対し、3線を乗り継いで行けば、京都の河原町駅から途中、天下茶屋駅で乗り換えがあるものの、関西空港駅まで1200円と格安で行くことができる。
この3社の動きに対抗して、JR西日本も訪日外国人向けに、“風神雷神”の絵柄のついたICカード「ICOCA」とセットではるかの切符を売り出すなど、応戦。JR VS 阪急阪神HDの競争は熾烈さを増している。
JRと阪急阪神HDの競合は、本業の鉄道事業にとどまらない。主戦場は、両社の本丸である大阪・梅田の再開発競争に移った。
JR西日本が昨年オープンした大阪ステーションシティ(OSC)に百貨店のJR大阪三越伊勢丹が出店し、大丸梅田店ほか周辺の百貨店も呼応した。もちろん、阪急うめだ本店も増床計画を打ち出し、大阪百貨店戦争を巻き起こしている。
初年度となる11年度、OSCに入るJR西日本系の「ルクア」は年間目標の250億円を上回る340億円を売り上げて成功したが、JR大阪三越伊勢丹は売上高550億円の目標に対して310億円と苦戦している。
それでも大阪駅周辺の開発効果は、鉄道輸送面にも恩恵をもたらし、JR西日本の大阪駅の乗降人員は1日当たり78.9万人から81.3万人に増えた。
迎え撃つ、阪急阪神グループは、統合効果をフルに発揮して開発に着手した。
現在、阪急うめだ本店は、営業しながらの建て替えで、営業面積を半分以下に縮小している。隣の阪神百貨店も老朽化し、建て替えの必要があったが、阪急うめだ本店と建て替え時期をずらした。両百貨店の売り場を連携させながら進める計画だ。
同時に、この鉄道会社同士の統合は、流通業や映画・演劇の制作・興行などを含めた「阪急阪神東宝グループ」の結束力強化という副次的効果をもたらした。
創業者・小林一三が創り上げた阪急グループは、鉄道を敷設し、沿線に宅地を開発。宝塚歌劇団を発足させ、ターミナル駅にデパートを開業した。これらの一体開発により、鉄道沿線全体の価値向上を目指す事業手法は、「小林一三モデル」と呼ばれ、後の鉄道経営の模範となった。
しかし、カリスマ創業者の没後50年がたち、資本関係が薄いグループの連携はバラバラになっていた。かつての阪急電鉄は、阪急百貨店の株を3%しか保有していなかった。
ところが、経営統合した阪神電鉄の傘下に阪神百貨店があったことから、グループを再編。
阪急百貨店が阪神百貨店と統合して、持ち株会社のエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが発足した。その結果、阪急阪神HDがH2Oの株式の2割以上を保有することになった。
阪神との統合をきっかけに、阪急阪神東宝グループは、求心力を取り戻しつつある。
JR西日本の真鍋精志社長は、「大阪域内で争っている場合ではない。人口が減り続ける中で、大阪の都市としての魅力を上げてインバウンド(訪日外国人)も含めていかに人を集めるかが重要」と話す。
大阪百貨店戦争は、都市間競争に打ち勝つ強い大阪を創り出すのか、はたまたエリア内でのオーバーストアによる自滅を招くのか。
百貨店戦争の本命とされる、阪急うめだ本店が、まもなく11月にはオープンする。そこで一つの答えが出るだろう。』
以下も、同誌からの転載で、これは阪急阪神ホールディングスの角和夫社長がインタビューに応えたものです。
阪神ブランドは解体すべきではなく、今後も、鉄道会社としての阪急と阪神の合併は考えていない、とのことです。
『阪急電鉄と阪神電気鉄道は、100年間、私鉄グループとして似たような事業を展開してきた。経営統合による合理化効果は出せる。
まず、お互いに梅田をターミナルとしている。グループ内にお互いに百貨店があるが、2店の開発時期をずらし営業への影響を最小限にとどめながらの開発が可能となった。
二つ目はホテル事業。六甲山に両グループともホテルを構え収益が苦しかった。これは阪急のホテルを残して、阪神のホテルを閉鎖することで収益を改善させた。
だが、鉄道会社同士の合併は考えていない。コスト構造も長年築き上げてきたブランドも異なり、短時間でできるものではない。
私は、阪急電鉄の社長に就任後、2005年には阪急ホールディングスを発足させて持ち株会社制に移行した。そのときは考えもしなかったが、持ち株会社制になっていたことが、結果的に後の阪神電鉄との経営統合をスムーズにした。
村上ファンドは出口戦略の中で、阪神の所有する資産の切り売りを主張したが、阪神ブランドは解体するべものではないと考え、経営統合に踏み切った。しかし、合併ではない。
11年度で90億円の統合効果を出し、私鉄の中でも最大の営業利益額と売上高営業利益率を出している。統合効果は出せているのではないか。
阪神なんば線の開通や甲子園駅のリニューアルにより、統合効果の果実をいよいよ取る時期に入ったと考えている。
経営統合後の07年に掲げた有利子負債/EBITDA倍率7倍という目標はリーマンショックもあり、達成が遅れた。13~14年度にかけて早期に達成し、それが実現すれば、次の成長戦略ステージに入る。』
ところで、先程の転載記事の中で、関西国際空港~京都での乗客獲得競争について触れていましたが、この件については続報があります。
今月24日、JR西日本が、「はるか」の特急料金を来年春に値下げすることを発表したのです。
「」の値下げは、関西空港~りんくうタウン間の関西空港連絡橋の使用料が今秋引き下げられるのに応じて行うもので、関西空港線ではこれまで「A特急料金」というJRの料金体系が適用されていましたが、今後は割安の「B特急料金」の額が適用されることになるそうです。
阪急阪神とJR西日本の熾烈な駆け引き・競争は、今後も目が離せません!
…と思っていたら、先日たまたま読んだ週刊ダイヤモンドのバックナンバー(2012/8/4号)に『関西鉄道・流通地図が変わる!? JR西日本 VS 阪急阪神の熾烈』というタイトルの記事が掲載されていて、これが丁度良い内容だったので、以下にこの記事をそのまま転載させていただきます。かなり長いですが、二重かぎ括弧内の青文字の文章が転載箇所です。
『2005年9月、阪神電気鉄道を揺るがす“事件”が起こった。村上世彰氏率いる村上ファンドが筆頭株主になったことが発覚したのだ。
大株主として発言権を得た村上ファンドは、阪神タイガースの上場など、さまざまな要求を突き付けてきた。
追い詰められた阪神電鉄は、阪急ホールディングス(HD。当時)に助けを求め、阪急HDによるTOB(株式公開買い付け)が成立した。
こうして、積年のライバルだった阪急と阪神は、経営統合することになったのである。
村上ファンドの登場がなくても、両社の経営統合はあったのか。この問いに、当時、阪急HDの社長だった阪急阪神ホールディングスの角和夫社長は、明確に「ノー」と答えた。「長期的にはそういう議論が出てくることがあったかもしれない。しかし、私の頭の中には阪神電鉄と一緒になるという構想はまったくなく、夢にも思わなかった」。
大阪で起きた私鉄の巨大再編は、戦略的なものではなく、ファンドに後押しされる形で産み落とされた。だが、その後の関西鉄道網や都市開発のパワーバランスを大きく塗り替えることになった。
戦略なき統合は、どんな効果をもたらしたのだろうか―。
阪急電鉄と阪神電鉄は、梅田(大阪)―三宮(神戸)を走る両社の主要路線が競合する。
経営統合後もいまだに持ち株会社の下に両社がぶら下がる兄弟会社の形を取る。夜間整備列車を共通化するなどの合理化はしても、「鉄道会社はブランドもあり、短時間での合併は難しい」(角社長)という。
それよりも、「阪神の持つ豊富な資産を取り込んだという点で、阪急側にメリットがあった」(関西財界関係者)といえる。
図1-3に見られるように、統合以前(05年3月末時点)の阪急HDの自己資本比率は16.6%だったが、現在(12年3月末時点)は22.6%になり、バランスシートの改善に寄与した。
その資産の一つに阪神百貨店があるが、これは後に詳述する。
鉄道網の変化としては、09年に阪神なんば線が開通して近鉄奈良線と相互乗り入れし、三宮―奈良がつながり、奈良方面から乗り換えなしで甲子園球場に行けるようになるなど、大きな利便性向上をもたらした。ほか、神戸高速鉄道を子会社化したことが挙げられる(図1-4参照)。
第三セクターである神戸高速鉄道は、阪急神戸線、阪神本線、神戸電鉄、山陽電気鉄道の私鉄4線をつなぐ役割を担ってきた。
ところが、神戸高速鉄道を経由する列車に乗ると、利用者の多くは、鉄道3社ぶんの運賃を支払うことになり、割高なのが課題だった。そこで、09年に阪急阪神HDが当時の筆頭株主の神戸市から株式を買い取って、子会社化を実施した。
阪神電鉄がオペレーションを担うことで、コスト削減効果を出せるようになり、「将来的には運賃還元策も考えている」(阪急阪神HDの角社長)という。
こうした諸施策もあり、阪急阪神HDは、私鉄の中で、営業利益額、売上高営業利益率共にトップを誇る。一定の統合効果はあったといっていいだろう。
JR VS 私鉄―。“私鉄王国”の関西では、多くのJRと私鉄の路線が競合関係にある。その筆頭が、JRと阪急電鉄、阪神電鉄の路線が競合する、前述の梅田(大阪)―三宮だ。
阪急と阪神が統合する以前から、JR西日本を含む3社は、輸送をめぐって激しく競合してきた(図1-4参照)。
この勝負は、JR神戸線が1995年の阪神・淡路大震災からの復旧が早かったこと、新快速を投入するなどスピードを向上させたことで、「JRに軍配が上がる形で決着がついた」(関西の鉄道事情に詳しい関係者)。
現在、梅田(大阪)―三宮の運行時間は、JR神戸線が20分、阪急神戸線が27分、阪神本線が31分である。
スピード競争では、JRにかなわない。このため阪急と阪神は、特急の停車駅を増やして、沿線の利便性を向上させてきた。
阪急神戸線では、特急を岡本駅や夙川駅に停車させ、同時に夙川駅からの支線である甲陽線は15分に1本間隔での運行を10分に1本間隔に増便した。
同じように阪神本線も区間特急が香櫨園駅に停車するようになった。
また、08年には阪急神戸線の西宮北口駅前の阪急西宮スタジアム跡地に大型ショッピングセンターの「西宮ガーデンズ」を開発。阪急百貨店も入居するなど、ショッピングセンターとしては高級な雰囲気が阪急沿線住民の支持を受けて好調だ。
JR西日本も黙っていない。
阪急と阪神が特急停車駅を増やしたことに対抗して、JR神戸線に甲南山手駅、さくら夙川駅と新駅を開業した。現在も六甲道駅灘駅の間に新駅構想がある。
こうした阪神間での利便性向上競争もあって、梅田―三宮間の人口は伸びている。
さらに最近、JRと阪急阪神の間で勃発しているのが、関西国際空港―京都での乗客獲得競争である(図1-5参照)。
関空―京都には、JRの特急「はるか」が走っているが、これに対抗するべく、阪急と大阪市交通局(市営地下鉄)、南海電気鉄道の3社がタッグを組んだ。
はるかが3690円かかるのに対し、3線を乗り継いで行けば、京都の河原町駅から途中、天下茶屋駅で乗り換えがあるものの、関西空港駅まで1200円と格安で行くことができる。
この3社の動きに対抗して、JR西日本も訪日外国人向けに、“風神雷神”の絵柄のついたICカード「ICOCA」とセットではるかの切符を売り出すなど、応戦。JR VS 阪急阪神HDの競争は熾烈さを増している。
JRと阪急阪神HDの競合は、本業の鉄道事業にとどまらない。主戦場は、両社の本丸である大阪・梅田の再開発競争に移った。
JR西日本が昨年オープンした大阪ステーションシティ(OSC)に百貨店のJR大阪三越伊勢丹が出店し、大丸梅田店ほか周辺の百貨店も呼応した。もちろん、阪急うめだ本店も増床計画を打ち出し、大阪百貨店戦争を巻き起こしている。
初年度となる11年度、OSCに入るJR西日本系の「ルクア」は年間目標の250億円を上回る340億円を売り上げて成功したが、JR大阪三越伊勢丹は売上高550億円の目標に対して310億円と苦戦している。
それでも大阪駅周辺の開発効果は、鉄道輸送面にも恩恵をもたらし、JR西日本の大阪駅の乗降人員は1日当たり78.9万人から81.3万人に増えた。
迎え撃つ、阪急阪神グループは、統合効果をフルに発揮して開発に着手した。
現在、阪急うめだ本店は、営業しながらの建て替えで、営業面積を半分以下に縮小している。隣の阪神百貨店も老朽化し、建て替えの必要があったが、阪急うめだ本店と建て替え時期をずらした。両百貨店の売り場を連携させながら進める計画だ。
同時に、この鉄道会社同士の統合は、流通業や映画・演劇の制作・興行などを含めた「阪急阪神東宝グループ」の結束力強化という副次的効果をもたらした。
創業者・小林一三が創り上げた阪急グループは、鉄道を敷設し、沿線に宅地を開発。宝塚歌劇団を発足させ、ターミナル駅にデパートを開業した。これらの一体開発により、鉄道沿線全体の価値向上を目指す事業手法は、「小林一三モデル」と呼ばれ、後の鉄道経営の模範となった。
しかし、カリスマ創業者の没後50年がたち、資本関係が薄いグループの連携はバラバラになっていた。かつての阪急電鉄は、阪急百貨店の株を3%しか保有していなかった。
ところが、経営統合した阪神電鉄の傘下に阪神百貨店があったことから、グループを再編。
阪急百貨店が阪神百貨店と統合して、持ち株会社のエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが発足した。その結果、阪急阪神HDがH2Oの株式の2割以上を保有することになった。
阪神との統合をきっかけに、阪急阪神東宝グループは、求心力を取り戻しつつある。
JR西日本の真鍋精志社長は、「大阪域内で争っている場合ではない。人口が減り続ける中で、大阪の都市としての魅力を上げてインバウンド(訪日外国人)も含めていかに人を集めるかが重要」と話す。
大阪百貨店戦争は、都市間競争に打ち勝つ強い大阪を創り出すのか、はたまたエリア内でのオーバーストアによる自滅を招くのか。
百貨店戦争の本命とされる、阪急うめだ本店が、まもなく11月にはオープンする。そこで一つの答えが出るだろう。』
以下も、同誌からの転載で、これは阪急阪神ホールディングスの角和夫社長がインタビューに応えたものです。
阪神ブランドは解体すべきではなく、今後も、鉄道会社としての阪急と阪神の合併は考えていない、とのことです。
『阪急電鉄と阪神電気鉄道は、100年間、私鉄グループとして似たような事業を展開してきた。経営統合による合理化効果は出せる。
まず、お互いに梅田をターミナルとしている。グループ内にお互いに百貨店があるが、2店の開発時期をずらし営業への影響を最小限にとどめながらの開発が可能となった。
二つ目はホテル事業。六甲山に両グループともホテルを構え収益が苦しかった。これは阪急のホテルを残して、阪神のホテルを閉鎖することで収益を改善させた。
だが、鉄道会社同士の合併は考えていない。コスト構造も長年築き上げてきたブランドも異なり、短時間でできるものではない。
私は、阪急電鉄の社長に就任後、2005年には阪急ホールディングスを発足させて持ち株会社制に移行した。そのときは考えもしなかったが、持ち株会社制になっていたことが、結果的に後の阪神電鉄との経営統合をスムーズにした。
村上ファンドは出口戦略の中で、阪神の所有する資産の切り売りを主張したが、阪神ブランドは解体するべものではないと考え、経営統合に踏み切った。しかし、合併ではない。
11年度で90億円の統合効果を出し、私鉄の中でも最大の営業利益額と売上高営業利益率を出している。統合効果は出せているのではないか。
阪神なんば線の開通や甲子園駅のリニューアルにより、統合効果の果実をいよいよ取る時期に入ったと考えている。
経営統合後の07年に掲げた有利子負債/EBITDA倍率7倍という目標はリーマンショックもあり、達成が遅れた。13~14年度にかけて早期に達成し、それが実現すれば、次の成長戦略ステージに入る。』
ところで、先程の転載記事の中で、関西国際空港~京都での乗客獲得競争について触れていましたが、この件については続報があります。
今月24日、JR西日本が、「はるか」の特急料金を来年春に値下げすることを発表したのです。
「」の値下げは、関西空港~りんくうタウン間の関西空港連絡橋の使用料が今秋引き下げられるのに応じて行うもので、関西空港線ではこれまで「A特急料金」というJRの料金体系が適用されていましたが、今後は割安の「B特急料金」の額が適用されることになるそうです。
阪急阪神とJR西日本の熾烈な駆け引き・競争は、今後も目が離せません!
1880円で乗り換え1回は同じだし。
それでも高いが不平等。
ダイヤモンドに悪意を感じますね。
なお、最安値は
なるほど、そういう見方も出来ますね。
ただ私は、京都~関空を利用する時は、いつも「はるか」に乗っていました。