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児童文学作家 加藤純子のblog
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『まともな家の子供はいない』(津村記久子・筑摩書房)

2012年01月18日 | Weblog
            

 今夜は「Be-子どもと本」の読書会です。
 隔月の第三水曜日、神楽坂にある日本児童文学者協会の事務局で18:00から行っています。
 今月のテキストは、芥川賞受賞作家・津村記久子の作品『まともな家の子供はいない』です。

 タイトルどおりこの本には、まともな家は登場しません。
 まともな親も、まともな子供も、まるで作者はフツーさを憎悪するかのように登場させません。
 むしろ傷口に塩を塗り込むように、これでもか、これでもかと嫌な人間を描写していきます。
 しかし人間を捉える筆の力はさすがです。

 先日、毎日新聞に津村さんのインタビューが掲載されていました。
 33歳の津村さんは就職氷河期世代。「内定がとれなかったら,人間失格」というくらいつらい思いをしてきたと言います。
 だから耐久力が強い世代だと。
 今の幸せ度は50%。それを少しでもあげていこうとするのではなく、最低限の50%が確保されていれば悪くないと言います。
 その彼女が、思春期の子どもを描いています。

 この本には他にも、『サバイブ』という短編が収録されています。
『まともな・・・』で気になった「室田いづみ」を主人公にした物語です。
 この「室田いづみ」にしても、『まともな・・・』の主人公の「セキコ」にしても、あきれるくらい、いつも不機嫌な少女たちです。そして大人たちへのやりきれない眼差しを内包しています。
 この思春期の子どもたちの不機嫌さ、あるいはやりきれなさ。
 子どもの本では、ここまで突き抜けられないと思いました。

 さて、今夜はどんな議論になるでしょう。
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