
イスラエルのネタニヤフ政権による、ガザへの侵攻はもう21ヶ月にも及びます。
一向に停戦の気配のない中、日本児童文学者協会でも、子どもの本に関わる団体として、どうにか、声明を出さなくちゃと、先日の総会で、話されました。閉会の言葉では、私はその確約まで宣言しました。
ちょうど、そのタイミングでの、イスラエルのイランへの攻撃。
アメリカのイランへの核施設攻撃。
どこに的を絞っての声明にしていいのか、逡巡している中。
日本児童文学者協会の「子どもと平和の委員会」の委員長をがイニシアティヴをとってくださり、委員の方々が、反戦へのリレーエッセーを始めてくださいました。
ところが、そこへ、BBCニュースからとんでもない記事が飛び込んできました。ネタニヤフ政権が「人道」とは名ばかりの、強制収容所を、ガザの南部の廃墟に作り始め、そこにガザの人たちを押し込め、そこから2度と出られないようにするというニュースです。
おどろいて、先日の理事会で、その話をし、今度こそ、時期を逸せず、声明を出しましょうという話になりました。
叩き台を私が書き、いろんなご意見をいただき、まとめました。
本当に、ガザの人たちの人権を、どうやったら守れるのでしょう。
私は、1998年に『アンネ・フランク』(ポプラ社)の伝記を書きました。
その本は、ハード本、文庫本と、すごくたくさんの子どもたちに読まれ、今でも読まれています。
5年生の国語教科書にも採用されました。
その本のラストで、私は「ダビデの星」の旗が、新しいユダヤ人の国として誕生した「イスラエル」の空に輝きました。
と、誇らしさを持って書いたことへの責任を、ずっと背負い続けていました。
ユダヤ人が悪いわけではありません。
今のネタニヤフ政権の、非人道的な悪行への怒りです。
ガザの子どもたちへの想いです。
せめてもと、私は、声明の叩き台を責任を持って書きました。
最初は、サクッと10分で仕上げました。
そして理事の方たちに、流していただきました。
けれど、その後が大変でした。
微妙な語句が、声明となると神経質になります。
ディテールの部分で、丸2日、パソコンの前に座りっきりで、時間をかけて、夜の就寝時間を過ぎてまで、まだ考えていて、その夜は眠りにつくのも、大変でした。
日本児童文学者協会は、8月1日付で、新聞社各社、各団体の皆さんへも、この声明をお送りします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
声明
ガザ地区の人々を強制移住させる「人道都市」計画に反対し、ガザ攻撃の即刻停止を求めます
~子どもたちの命と未来を守るために~
粉ミルクが消えた!
この衝撃的な言葉は、私たちの胸を深くえぐります。
過去21ヶ月にわたる、イスラエルによるガザ侵攻は、止まることを知りません。
国連世界食糧計画(WFP)は「ガザの食糧危機はかつてないほどの深刻な段階に達している」と警告しています。
そして今、ガザ南部の廃墟に「人道都市」とは名ばかりの、強制収容所を作り、ガザの人たちを移住させる計画が進められようとしています。
イスラエルのネタニヤフ政権は、ガザに住んできた人たちを、そこに追い込もうとしているのです。
ガザでは、これまでもたくさんの子どもたちの命が奪われてきました。
飢えや絶え間なく強いられる避難など、子どもたちは想像を絶する惨禍の中にあります。
何より生活と直結している、病院や水道や学校や家などの破壊。ガザ地区の子どもたちの生きる権利そのものが、日々侵されているのです。
子どもの本の創作、翻訳、批評・研究に関わる私たちは、こうした状況の中で苦しみ、未来を奪われようとしている子どもたちの姿を目の当たりにして、沈黙してはいられません。
私たちは、ガザの人たちを強制移住させる、いわゆる「人道都市」計画に反対し、攻撃の即刻停止を求めます。
ガザの子どもたちに、日々の食べ物と当たり前の毎日を!
そして、すべてのガザの人たちに、人間らしく生きる権利を!
2025年8月1日
一般社団法人・日本児童文学者協会理事会
(理事長・藤田のぼる)