新聞1面に掲載された論説の副題である。1面から2面へと結構なスペースを割いて1流と言われる専門家の意見を載せる。今回は憲法学者でありJICAの理事長でもある北岡伸一氏の登場だ。最近では憲法改正の討論会などで積極的に推進発言をしたり安保関連法の集団的自衛権の問題でも容認派としてしばしば登場した。今回の論説も上から目線、エリート臭に氏の特徴でもあるが相当な論客であることに間違いない。真っ向反論を書くと赤児のてを捻るごとく論破されるし、書かれていることが間違いというわけでもない。それ以前にこのブログなど目に留まるはずはないのだが。
反論ではなく在宅初老が考える世間と相当ズレテいることだけを挙げてみる。氏の母校愛は素晴らしいとは思うが、東大法学部の凋落により国家公務員総合職を目指す若者が減り、官僚の人材確保や司法試験に対する危惧を書かれている。総合職の人気が落ちているのは国家公務員給料が安すぎる割に仕事がハードだからと言う。さらに官僚の人事制度にも問題があると。外国人教師や女性教師の数が少なく、ある意味視野の狭い(この言葉使っていないが)教育の場になっているなどを掲げている。
国家公務員の給料を上げて東大法学部の凋落を食い止める必要を一般国民は感じてはいない。法学という学問自体がクリエイティビティなど無い既存の学問体系の中で蠢いているからではないか。給料が安いから官僚や裁判官、検事などにならないというならいっこうに構わない。その人達は別の世界に行って活躍するだろう。元々優秀な頭脳を持った人達なのだから。そもそもキャリアと呼ばれる人達が最近何をしでかしているか、それこそが人気凋落の原因である。東大法学部を就職のための一過程と考えるなら凋落の原因はその就職先にある。
何故東大法学部だけを問題にするのか。全国紙という言わば公器を使って。地方大学の法学部はどうでも良いと言うのだろうか。丁度今朝奨学金を返済することを困難と感じ大学進学をあきらめた学生の特集をNHKがやっていた。大学で学びたいが進学を諦めるというのである。地方大学であれ経済的理由で進学を諦める人達が居る方が問題である。この人達を3人集めれば東大法学部の一人より遥かに大きな社会貢献をするのではないだろうか。昔、バカ100人を集めてエリートに勝とうというブログを書いたことを思い出す。
氏は今回政府の有識者会議、GHG削減の長期戦略、2050年に温暖化ガスを8割削減という大事な会議の座長に選ばれている。メンバーには経済界のお偉方も名を連ねている。専門外であろうが政府関連の要職を次々担われていることから明晰な頭脳は容易に想像できる。ああいう人が行く学部なのだと思えば学生も憧れるのではないだろうか。キャリア官僚を生み出すだけの学部ではあまりに勿体ない。今度は環境という側面で如何なく論客ぶりとリーダーシップを発揮して欲しい。さらに東大法学部の人気は急上昇するはずだ。