ポルトガル領のマデイラ島に行ったことがある。太陽電池の国際規格を審議する小委員会が開催され参加したものだ。大西洋の真珠とも呼ばれる美しい島である。首都フンシャルに降り立つと平地が少ないのか街並みは入り組んで清潔そうだがゴチャゴチャしている。観光地のようだが委員会はホテルに缶詰め状態で3日間くらいあれやこれやと議論して合間に少し観光が混じる。小委員会のメンバーはヨーロッパの人が多く、各地で何回も開催しているので皆家族のように仲良しである。こちらは一見の客のようで簡単には溶け込めない。誰が開催地を決めるのか知らないが大抵は風光明媚な観光地に設定される。各委員は公費を使って参加するが態々大西洋の小島まで来る必要があるのかと不思議に思った。もっとアクセスの便利な都会の会議室でやれば費用だって少なくて済むのに何となく私利私欲が働いているようでもあり良い気はしなかった。さらに驚くのは会議のアジェンダを無視して話があちこちに飛んでしまう。項目ごとに結論を出して進むという雰囲気ではない。議事録を纏めるのは大変だと思ったが帰国後間もなく立派な議事録が届いた。ますます仲良しグループの出来レースのような気分になった。
間に挟まれた観光は山裾にオレンジ色の屋根と白壁で統一されて家並みは美しかった。バナナが名産とか言っていた。海岸は殆ど断崖絶壁でスティーブマックイーンの映画パピヨンに出て来る場面のようである。さらに小島にヨットで行ったときはクルーがサングラスなど掛けて日本にいれば俳優になるようなカッコいい奴ばかりである。小島で気象観測所に設置された小さな太陽電池を見学して帰ってきた。最近ネットで見るとクリスチアーノ・ロナウドがマデイラ出身だと知った。フンシャルの小さな広場でボールを蹴っていた少年に10歳くらいのロナウドが居たのかも知れない。リタイアして海外旅行に行く気にならないのは、例えばマデイラに行く?と聞かれたらとてもとても自腹ではとなる。ここ以外にも結構観光地には行っているが観光など余裕のない仕事ばかりで、今思えば海外旅行潰しの出張だったと思う。折角の機会に残念だったと今は多少の後悔はある。大瀧詠一の歌ではないがカナリア諸島にも同じような思い出がある。