システムキッチンの入れ替えを考えて5~6軒のリフォーム店を訪問した。韓国ドラマに出て来るようなキッチンがショールームに並んでいる。何れの店も販売女店員をおいて丁寧な対応である。中には営業マンが直接説明をするところもある。まず価格はメーカー小売希望価格とその店による値引き価格両方が表示されている。同じような製品でも店によって相当価格差があるがこれはその店がメーカーの一次卸か二次かで違うのであろう。さらに掘り出し物は現品限りの製品で多くは型落ちである。型落ちと言ってもメーカーが新製品を出すたびに在庫一掃で店頭に卸すものだろうが性能は大差ない。違いは工事費である。たかがシンクとコンロの組み合わせだから難しい工事はないと思うが施工部門を抱えている会社と都度外部に発注するかで差が出る。さらに製品の値引きと工事費の兼ね合いでどちらで利益を出そうとしているかは何店か訪問すると分かって来る。営業マンが出て来るとこちらの質問には全て尤もらしい(多分あたっているのだろうが)答えが返ってくる。女店員では分かりませんとは言えないのだろう、しどろもどろになる場合がよくある。さてどちらが営業マンとして優れているか。
実は難しいところである。何でもスラスラ答えられると何だか誤魔化されているような気がするし、しどろもどろは頼りない感じがする。本当に売る営業は商品知識は豊富にありながら一旦客の立場に立って同じように悩んだ後、売りたいものをそっと勧める。例えば客が「色」について迷っている時、白の在庫があるのでこれを売り捌きたいと思って白の良さを次々上げるのは一流ではあるが超一流ではない。そうですねグレーと白迷うところですね。私でも迷うところです。でも敢えて言うなら白でしょうか。と言って白の良さをさりげなく挙げていく。超一流は一度客に同調することが欠かせない。
次に何故売れるのか説明し難い営業マンがある。昔の話だが太陽電池が訪問販売主流で客先と対面営業をしていたころ新人に近い男が猛烈に販売件数を伸ばしたことがある。説得納得商品と言われた時代、商品知識は素人とあまり変わらない営業マンでセールストークも秀でている訳ではない。あまり深追いはしなかったが多分催眠営業を本人が意図しなくてもできる男だったと思う。話している内に何となく相手が信頼を寄せてくる。目ぢからがあったから多分天性のものだったに違いない。さらに昔自分が新入社員の頃技術系の社員も研修と称して3か月販売店の応援をやらされた。ある男が夏場にも関わらず倉庫に在庫されていた(売れ残った)暖房器具を殆ど売り捌いてしまった。その男は研修が終わって本来なら配属も決まり技術部門に行くべきところだが異例なことに営業部門から是非うちにと声が掛かった。どうやって夏場に暖房器具を売ったのだと聞いたが本人は売って当たり前という感覚だった。特にコツがあり特別のことをやったとは思っていない。今思えば催眠営業の資質があったのではないかと思う。
営業マンと同行して客先に売り込みに行くことも良く有った。しかし商品知識があり過ぎて立て板に水のような説明が逆効果と分かったのは相当年が行ってからのことである。もう一つは兎に角人柄が気に入られる者がいる。これもまた生まれ持った資質であろう。真似してできるものではない。一度も営業を本職でやったことは無いが会社の仕事で一番難しいのは営業ではないかと思っている。技術はある程度学べるが営業は学校で教えてくれるものではない。どんな素晴らしい製品を開発しても売れてなんぼである。研究などは相当前段階の仕事であり売れることが仕事の全ての結果であると上司に言われ、技術屋のプライドは瓦解した。