関西の名門(?)会社が経営難に陥って久しい。事の始まりは過剰設備投資によるものだが、何処かの教授のようにその会社を辞めてからあの時はどうだったとか批判するつもりは全く無いし、その資格も無い。寧ろ初めて勤めた会社であり太陽電池を教わったという恩義が先立つ。それだけに残念、他社の二の舞にならずブランドだけは残して欲しいとも思う。最初に危惧を抱いたのは太陽電池業界の説明のため経済産業省を訪問したとき、偶然本省の狭い廊下で当時の会長に出くわした。過剰設備投資の頃で辣腕経営者としてマスコミにも度々顔を出していた。何かの陳情に来られたと思うが、会長とは業界の会合で顔見知りであったため会釈をしてかわそうとしたとき、会長も軽く会釈されたが、会長の後にはおつきの方と思われる人が6~7人従って怪訝そうな顔でこちらを見て堂々と廊下の幅一杯に過ぎて行った。こちらは名もなき3~4人で大名行列の威光に触れたかのように側壁へ避けた。同じ頃だったかも知れない。成田空港の幅広い連絡通路を向かいから雁や白鳥のV字飛行のような隊形で進んでくる一段と出会った。先頭は顔は知っている本省の部長で手ぶらで正々堂々と胸を張って歩いて来る。その後ろには10人くらいの黒づくめの部下達。避けてやり過ごした後、その部下の一人が私を追いかけ戻って来た。顔見知りの課長が誇らしげに「これからCOP交渉のための出張です。」と言ってまたV字隊に戻って行った。こちらは訳の分からん途上国に一人で出張、部下もおらずちょと恥ずかしい気もしたが・・・。先の会社はそれから間もなく窮地に陥った。この間その会社の社員達と話をする機会も多く有ったが一様に「誰が部長、常務、専務になった。」とかやたら上部や周りの人事を気にする、会合などで上司と同席する者は議論よりやたら上司を気にする。担当だけの時はちょっとした意思決定でも上司と相談するという(自分の意見が正しいと思えば体張ってでも会社は説得するという意気込みはない)。「上の言う事」を相当気にする会社の体質があるように思った。設備投資の決断も同様だったろう。後の部長も将来の事務次官候補と目された俊才の誉れが高かった人物である。(後一歩まで迫ったが結局はなれなかった。)V字隊飛行の先頭は大変である。孔子の言葉に、
『君子に三畏あり、天命を畏れ、大人を畏れ、聖人の言を畏る』ここでおそれは恐れではなく畏敬の意味。また、「天命」には「宇宙の大法則」と言う意味があるようです。宇宙の大法則は後に移った会社のカリスマ経営者に散々説かれました。
『君子は泰(ゆた)かにして驕らず、小人は驕りて泰(ゆた)かならず』というのがあります。
「トップ」という誇りは大事です。その誇りを裏付けする実績も残し、能力もあったのでしょう。しかし誇りが態度や言葉に表されたとき、時として傲慢に映る時があります。カリスマには「上に行くほど謙虚であれ」とも教えられた。中々実践は難しいものです。