石油メジャーのShellはほぼ5年毎にエネルギーに関するシナリオを公表している。前回は2013年でOceansとMountainsの二通りのシナリオを提示した。今回はSky scenario と称し、海と山の次が空で粋なタイトルである。勿論内容は至って真面目でスケールの大きなものである。今回はパリ協定にあるゼロ・エミッションを50年後の2070年に達成し、温暖化を2℃未満に抑えるためのエネルギー関連が辿る道筋を示している。現在自己申告されている各国の温暖化対策は目標を総動員しても2℃未満の達成は困難と言われている中、いち早く道筋を示した勇気には驚かされる。しかもそれは本業である石油事業を決して依怙贔屓していない大胆なものである。聞く所によると多方面の著名なコンサルや専門家の頭脳を結集して相当な時間を割いて策定するとのことである。シナリオを発表することで事業が直接被益するとは思えないが、昔shellの会長がTVインタビューで「エネルギーの変革をする者は従来のエネルギー産業の担い手から出て来るものではない。石炭から石油に変わったのは石炭産業に携わる人とは全く別のところから生まれた。」と言う主旨の発言をした。言いかえれば次のエネルギー変革における自社も含めた石油業界への警告かも知れない。
今回のシナリオでIndexとして5年毎の具体的数値を2100年まで示している。Solarに関するところを拾ってみる。2070年、一次エネルギーに占めるSolarの割合は32.1%、そのうちPVと熱発電が77.9%、熱利用は22.1%である。PVと熱発電に比率は分けられていないが大半はPVと思われる。余談だが熱発電は蓄熱と言う意味では貯蔵が可能であり、PVの安定化に資するとも言われている。最終の電力消費ではSolarによるものが53.9%を占めている。詳しくはネット上に公開もされており読むことをお勧めする。
shellはシナリオを科学的見地による未来予測と捉えていない。ある目的を達成するための経路を示し、それがShellの指導者、学者、政府やビジネスリーダーが決定を下す時の参考にして欲しいと願っている。shellシナリオはそのための将来のもっともらしい挑戦的なビジョンと位置付けられている。
パリ協定があるから温暖化が進むということではない。このまま放置すれば確実に地球は何れ2℃以上の温度上昇を来す。もし、その時期が先になってもである。現実はもっと早く温暖化が進むという意見の方が多い。ジタバタと対策を講じることは逆に大きな負担を強いられることになる。本当は50年でもジタバタしなければならない期間なのかも知れない。毎回shellのシナリオを読むたびに、何故政府は真剣に取り組まないのか、少なくとも関連する委員会、審議会で議論している先生方からshellシナリオに対する感想くらいは聞きたいものである。
「Solarに関するところを拾ってみる。2070年、一次エネルギーに占めるSolarの割合は32.1%、そのうちPVと熱発電が77.9%、熱利用は22.1%である。」とある箇所についてです。
この記述は、
https://www.shell.com/promos/the-numbers-behind-sky/_jcr_content.stream/1530643757647/819ec76741cc7c6c803833a1649cbca75e812f45ccd0ef61e6a517a97dfc0619/shell-sky-scenario-data-2018.xlsx
の、[World]タブの「5 Total Primary Energy - By Source」および「8-7 Total Primary Energy - By Carrier - Solar」の2070年の数値から計算されたのではないかと考えました。
さて、「一次エネルギーに占めるSolarの割合は32.1%」については、V253セル/V73セル=313.03/975.37で、確かに32.1%という数字を導出できました。
しかし、「PVと熱発電が77.9%、熱利用は22.1%」については、導出できませんでした。何を何で割れば、この「PVと熱発電が77.9%、熱利用は22.1%」という数値を導出できますでしょうか。
また、「PVと熱発電に比率は分けられていないが大半はPVと思われる」とありますが、PVと熱発電は別々に記されているように思いましたが、勘違いでしょうか。
ご教示を賜れますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。