大変恥ずかしい話しですが、私がある会社の営業部にいたときのことです。経理部から異動してきたばかりで、お客さんのところに行ってもなかなか上手く話すことができず、苦労していました。そこで私は「営業トーク上達法」のような本を読んで、とにかく上手に話しをする技術を身につけることにしました。そして、ある厨房設備のメーカーの技術部を訪問した私は、自社製品のカタログを開くや、さっそく憶えたての「話法」を使って説明を始めました。
私は、思ったよりも上手く説明ができていることで気が楽になり、ノンストップで話し続けました。何分か経ったとき、お客さんが急に「ちょっと待って!」と言って私の話をさえぎり、カタログをじっと見つめました。
そして「・・・許容誤差ここまで要らないんでアナログのやつのカタログある?」と私に言いました。
私は価格の高いデジタルの製品を売りたかったので、安いアナログ製品のことはほとんど勉強していませんでした。アナログ製品のカタログをお客さんに渡しはしたものの、こんどは全く説明することができなくなってしまいました。
さっきまで饒舌だったのに一転して沈黙です。
お客さんが望んでもいないことを説明を延々とするのは、単なる「ダメ営業」としか言いようがありません。
営業の仕事の第一歩は、お客さんの要望を聞くことから始まります。それは多くの営業に関する本やホームページに書かれていることです。それをせずにいきなり売り込みトークをぶつけられたら、買う気が失せるだけではなく反感すら覚えます。
ところが、ほんとうに多くの営業パーソンが、いまだに同じことを繰り返しています。
実際、当社にかかってくる売り込みの電話や営業パーソンと対面で話すときなど、「自社の製品やサービスがいかに優れているか」を一方的聞かされます。
売れない営業パーソンに共通する唯一の特徴は、まさにこれに尽きます。
もしあなたが営業パーソンなら「これから自分が口にする言葉を聞いて、自分自身、買いたいと思うだろうか?」と自問してみるべきです。
それでも「何がなんでも売り込みトークをしたい」というなら、せめて当社に電話をするのだけは止めてください。
(人材育成社)