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第885話 生産性は量から質へ?

2020年02月16日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。 

以前、日本経済新聞を読んでいたとき「残業時間の削減に焦点を当てた『量』の改革から、生産性を上げることを目指した『質』の改革を目指すべき」という記事が目に止まりました。「なるほど、その通りだな」と一瞬思ったのですが、ある疑問がわきました。それは量と質についてです。

ここで、おさらいになりますが、生産性を表す式を見てみましょう。生産性は次の通り2つの量の割り算で計算します。

労働生産性=付加価値÷労働投入量

企業で生み出された成果物にはモノやサービスがあります。たとえばパン屋さんなら、仕入れた小麦粉(材料)を加工し、パン(製品)にして売ります。もし100円で仕入れた小麦粉が300円のパンになったとすれば、300-100=200円の価値が小麦粉に「付加」されたことになります。つまり付加価値は200円です。

300円のパンを1日で100個作れば200円×100個=2万円の付加価値が、1年で250日働いたとすれば2万円×250日=500万円の付加価値が生み出されたことになります。

日本中のすべての企業等で1年間に生み出された付加価値を合計したものがGDP(国内総生産:Gross Domestic Product)です。日本のGDPは約540兆円で世界第3位という立派なものです。

ところが国民1人当たりのGDPを計算すると、約430万円となり、世界では26位とパッとしません。しかも1位ルクセンブルク(1,260万円)、2位スイス(907万円)、3位マカオ(890万円)に遠く及びません。

では、ルクセンブルクやスイスやマカオはどれほど素晴らしいパン(?)を作っているのでしょう?

その答えは、「パンは作っていません」ということです。いえ、ジョークというわけではありません。

ルクセンブルクの主要な産業は「金融」です。ユーロ圏におけるプライベート・バンキングの中心地となっています。プライベート・バンキングは富裕層を対象にした金融サービスです。世界の大富豪や国家元首の隠し資産の大半がルクセンブルクの銀行に預けられているそうです。もちろん真偽のほどは明らかではありませんが、国内の労働人口の2割強が金融機関に勤務しており、かなりの高給を得ていることは事実ですから、推して知るべしとでも言いましょうか・・・。

2位のスイスも金融では有名ですね(デューク・東郷も口座を持っているくらいですから)。さらに観光収入も莫大です。

3位のマカオは言うまでもありませんが、カジノが「付加価値」を稼ぎ出しています。中国のGDPが上がるにつれ、中国本土からの観光客が増え続け、カジノで散財する額もどんどん増えていきました。

さて、お分かりいただいたように、これら上位の国はパン(製品)を作っていません。

労働生産性の式の分母に当たる労働投入量は労働時間です。したがって、1日中パン工場で汗水たらして働くのではなく、空調の効いた銀行のオフィスでコンピュータを使っているか、華やかなカジノで観光客にカクテルの入ったグラスを渡しているかした方が労働生産性は高くなります。

日本も3年ほど前に統合型リゾート(IR)整備推進法案が可決され、カジノや観光に力を入れるようになってきました。では、日本も国全体で同じやり方をすれば生産性を上げることができるでしょうか?

人口60万人のルクセンブルクやマカオ、800万人のスイスならいざ知らず、人口1億2千6百万人の日本では残念ながらそれは無理です。

単に生産性の数値のみに着目することは「量」を追いかけることと全く変わりません。生産性を上げることを目指した「質」の改革とは、今取り組んでいる仕事によって生み出される成果の質を上げることに他なりません。

日本の1人当たりのGDPの世界順位が低いことを嘆く前に、仕事の成果である製品やサービスの「質」とは何か、基本に立ち返ってもう一度考えてみてはいかがでしょうか。

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