中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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Elephant in the room (部屋の中の象)

2014年11月09日 | コンサルティング

Elephant in the room は英語のイディオム(慣用句)のひとつです。その意味は、A large problem or issue that everyone is aware of, however no one talks about because it's difficult or uncomfortable. 訳すと「全員が事の重大性を認識しているにもかかわらず、(難しかったり不愉快だったりするので)あえて触れようとしない問題」という意味です。

このイディオムは1950年代にアメリカで生まれたそうです。アメリカ人と言えばストレートで議論好きな印象があるので、あまりにも似つかわしくないように思います。逆に言えばElephant in the room はそれほどありふれた、万国共通の問題なのかもしれません。

もちろん、私たちがコンサルティングでお邪魔するほとんどの会社にも大きな象が会議室にいます。

コンサルタントという部外者を使ってでも現状を改革しなければならないはずなのに、「その問題」についてあえて触れようとしない経営者や管理職がいかに多いことでしょう。

私たちが経営会議に出席し、改革案の骨子を説明すると、社長以下ほとんどの経営幹部はうなずきながら聴いてくれます。しかし・・・

「では改革案に従って、営業部門から全ての取引先に以下の要望をお伝えいただくということで・・・」と発言すると、営業担当役員がさえぎるように、

「ちょっと待ってください。それを実行するには我社の最重要顧客のA社の同意が必要です。ご存知ないかもしれませんが、我社とA社の関係は大変深く、要望を伝えるなどと言ってもそう簡単なことではありません。」それにつられるように社長もうなずいて、

「そうだな。A社については我社の売上の20%を占めるし、先代の社長のときからうちをひいきにしてくださっているし・・・まあ、A社はちょっと難しいかな。他の顧客から取りかかることにしよう。」

そして、会議室は(A社を刺激する話をするなんてどうかしてるよ。だから空気が読めないコンサルなんか要らないんだよ)という気まずい雰囲気になります。

A社については誰も触れたがらないのですが、言うまでもなく売上の20%を占めるA社こそ最も大きな問題なのです。

Elephant in the room はマネジメント層に限ったことではありません。

たとえば、営業部と製造部が話し合って今後の生産量を決める「製造・販売調整会議」のような席で、売れ残った旧製品の処分について先送りにしてしまう、といったことがあります。

営業に売る力がなかったのか、売れない製品を作った製造の責任か、非常にやっかいな問題です。

売れない製品を倉庫に留めておくだけで保管のためのコストはかかる一方、陳腐化、劣化はどんどん進みます。一刻も早く廃棄することが望ましいのは分かっていても「今はその話題を口にしたくない」ということでしょうか。

あなたの会社にも小象から巨象まで、いろいろな大きさの象が会議室にいるはずです。

さて、どうしますか?

(人材育成社)