中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,042話 「レジリエントな人」になるには

2021年07月28日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

紆余曲折を経て始まった東京オリンピックですが、このところ日本人選手が目覚ましい活躍を見せており、私の周囲でも盛り上がってきています。中でも、私が今後も自分の中で印象に残り続けると感じているのが、卓球の混合ダブルスです。

ご覧になった方も多かったと思いますが、水谷隼・伊藤美誠ペアのドイツ戦、中国戦は、試合開始直後は対戦相手に圧倒的にリードされたのにも関わらず、最終的に逆転して勝利を勝ち取ったのです。

特に伊藤選手はまだ20歳という年齢に関わらず、両試合におけるあの強靭な精神力に圧倒されました。毎試合伊藤選手の戦う姿を見ていて、実に「レジリエントな人」だと感じました。

この「レジリエンス(resilience)」、まだ一般的ではないかもしれませんが、困難な問題、危機的な状況、ストレスといった状況に遭遇してもうまく適応できる心理的な特性のことです。近年は人事部門において比較的使用されることが多くなってきています。

もともとは物体の弾性を表す言葉ですが、それが心の回復力を説明するものとして使われるようになったものです。それゆえに逆境や困難に押しつぶされることなく外的環境に順応して適応する力、精神的回復力と訳されることもあります。

具体的には、未来に対して肯定的な期待をイメージしたり、物事に対する興味や関心を幅広く持てたり、感情のコントロールが適切に行えたりする特性です。レジリエンスが高い人は、たとえ困難なことや脅威に直面しても、一時的には精神的なストレスを感じることがあってもそれを抑えて、乗り越えたり適応できたりすることができると言われています。

伊藤選手が当初は不利な状態であっても果敢に攻め続け、最終的に勝利につなげられる精神的な強さは天性のものなのか、親の影響なのか、もしくは幼少時代からの努力の積み重ねが生んだものなか、ぜひ聞いてみたいところです。でも、もしかすると本人にもわからないのかもしれませんね。

では、今後私たちが仕事や日常生活の中で自身のレジリエンスを少しでも高めるためには、一体どうすればよいのでしょうか。

当然、人によってポイントは違うでしょうし、その道筋も決して簡単なものではないだろうと思います。しかし、日常の生活の中で何らかの逆境に出くわしたときに、自分がどのように感じてどう対応しているのか、まずはそこをしっかり意識してみるところから始めてみるのが良さそうです。

これから佳境を迎える競技も多いオリンピックです。純粋にスポーツを楽しむ視点のみならず、試合に臨んでいる選手のメンタルの強さなどに注目して見るのも、また興味深いと思います。

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第1,004話 入社式は対面?オンライン?それとも中止?

2021年03月10日 | 仕事

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「今年度は20名弱が入社する予定ですが、入社式は実施しません。」

これは、先日ある企業の経営者からお聞きした言葉です。もう少し詳しく知りたいと思い、さらに伺ったところ、この経営者は「入社式は、本来はオンラインではなく対面で行うことが望ましい。しかし、一堂に集まることは感染リスクにつながるため中止にする」と判断したとのことでした。

さて、あなたの会社では今年の入社式は実施する予定でしょうか?

株式会社ディスコが2月に行った調査によると、今年の入社式を実施予定の企業は全体の8割強(84,2%)。入社式の形式は「リアル・会場型のみ」が7割強(76,2%)、オンラインのみでの実施は1割未満(6,9%)とのことです。コロナ禍での入社式の実施に関しては、いろいろな考え方があると思いますので、一概にどういう選択が良い・悪いと判断できるものではありません。

しかし、私は入社式の実施の有無にかかわらず、経営者として新入社員に何らかのメッセージを届けることがとても大切だと考えています。

そこで、一つ思い出す事例があります。昨年報道された時から印象に残っているのが、伊藤忠商事の新入社員の初出社日に、会長CEO自らが社屋の1階で120名の新入社員一人ずつを出迎えたというものです。

先日(3月8日)の日経新聞には、まさにこの会長CEO自らの言葉が紹介されていました。「せっかく希望をもってわが社に来てくれた若者たちに、『やっぱり伊藤忠に入ってよかったな』と思ってもらえるようなことが何かできないかと考えた」とのこと。

これを読んで感じたのが、入社式が対面型かオンライン型かという形式にこだわるよりも、経営者が入社式で新入社員に何を伝えたいのかがとても大切だということです。

たとえば、会社の理念を伝えたいと考えるのか、中長期のビジョンなのか、自社が存在する意義なのか、また新入社員に何を期待しているのか、どのような社員になってほしいのか、将来どのように活躍してほしいと考えているのか、などメッセージとして何を伝えたいのかを明らかにし、それを自らの言葉で伝えることこそが大切であり、必要だと思うのです。

冒頭に紹介した会社のように、もし入社式は行わないとするのであれば、伊藤忠商事の例のように社長が新入社員一人一人と向き合う時間を別途設けるのもよいでしょうし、また文章でメッセージを送る方法もあるかもしれません。

どのような形でも構いませんので、ぜひトップが自らの言葉でメッセージを送っていただきたいと思います。そうすることで新入社員がこの会社で頑張ろうと前向きな気持ちを持つことにつながっていくはずです。

因みに、伊藤忠商事のCEOは今年の新入社員をどのように迎えるかについては、「昨年と同じことをやっていたのでは進歩がない。(途中省略)今年はどんな演出で彼ら彼女らを迎えようか、今から思案している」とのことです。

4月1日以降に報道されることと思いますが、一体どういう演出をするのか外部の者としても今から楽しみにしています。

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第958話 在宅勤務時の部下へのフィードバックはどうするのか

2020年09月23日 | 仕事

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「書類を提出しても何の反応もありません。せめて『受け取った』という連絡くらいはほしいのですが・・・」

これは先日、弊社が担当させていただいたある企業の中堅社員研修の際に、受講者のMさんをはじめとして数人から聞いた話です。この企業では、現在週に3日間の在宅勤務を取り入れているとのことですが、在宅勤務の開始直後から日報をはじめ、様々な資料の提出を求められるようになったとのことです。

Mさんは続けて、「せっかく時間をかけて作った書類なのに、受信しましたという連絡すらないのです。そもそもちゃんと届いたのか、きちんと見てもらえているのか、そして書類の内容は良かったのか、それとも改善点があるのか等、何もわからないので不安になります。上司から何らかの反応がほしいというのが、正直な気持ちです」と話していました。

弊社では、この企業で中堅社員研修以外に監督者研修も担当させていただいているのですが、その際に先の受講者の声を紹介したところ、監督者の実に4人が部下から提出された書類に対して、特にフィードバックをしていないということを正直に話してくれました。

過去にこのブログでも何度か取り上げていますが、フィードバックとは「事実を伝えることであり、行動のプロセスや成果についての情報を提供する」ことです。

たとえば、部下ができなかったことができるようになったり、改善した際にはそのことをきちんと伝えほめることもそうです。また、部下が達成したい目標に対して現況を伝えたり、部下が周囲にどのような影響を与えているのかを伝えたりすることも、フィードバックなのです。

監督者に「部下から送られてきたものに反応されていないのはなぜですか?」と聞いたところ、「10数人の部下から届いたものに対して、1回ごとに反応するのが大変だと感じています。対面であれば、ささっとその場でコメントしていたのですが、コメントを文章にするのは結構骨が折れます。それでつい先延ばしにしてしまっていました」とのことでした。

実はこれと同様の話は、この企業以外でも悩みの一つとして最近顕在化されてきているようです。提出する側の部下も、それを確認する側の上司の方も、今までであれば言葉だけで済んでいたことを、その都度文章化しなければならないため、その分のエネルギーがかかってしまうということです。

こうして在宅勤務による手間が増えた分、確かに要領良く行っていかないと、下手をすると本来業務に支障が出てきてしまうということにもなりかねません。

では、どうすれば良いのでしょうか。

お勧めしたいのが、まず受信確認の連絡に関してはあらかじめ決まったフォーマットを作っておき、それを使うようにする。具体的なフィードバックについては、オンライン会議や対面時に必ず行うようにするなど、ある程度ルール化して行うことです。このように、ある意味で機械的に行うようにしてしまうことで手間が省けるだけでなく、お互いに機会を逸することなくコミュニケーションをとるようになるのです。

言うまでもなく、部下にも上司にもコミュニケーションを密にして情報を共有していくことは、ビジネスにおいて欠くことのできない最重要事項です。在宅勤務が進められている今だからこそ、それが滞ることのないように双方があまり負担に感じることなく取り組める方法を、あなたの職場でも話し合って作ってみてはいかがでしょうか。

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第956話 オンライン会議の回数が多くて、長い

2020年09月16日 | 仕事

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「何でもかんでもオンライン会議をやりましょうと言われることが多くて、困っています」

これは、先日ある企業に勤める知り合いのA氏から聞いた言葉です。A氏の会社では、緊急事態宣言の解除後も週に2~3日は在宅勤務が続いているとのことですが、在宅勤務になってからもオンラインでの会議を頻繁に行っているとのことです。

A氏の話を具体的に聞いてみると、話し合う必要性を検討することもせずに、何でもかんでも即「オンライン会議をやろう」ということになってしまうのだそうです。

A氏は続けて「在宅勤務になってはじめの頃は、まだオンライン会議に慣れていなかったため、そんなに頻繁に会議をすることはなかったのです。しかし、その後皆がオンラインの使い方にも慣れて6月ころからは少々安易に会議をすることになってしまっています。まるで、子どもが新しいおもちゃを使いこなせるようになったことが嬉しくて、使いたくて仕方がないというような感じがします」とのことでした。

私自身もこの数ヶ月、様々なオンライン会議に出席しましたが、確かにリアル(対面)の会議のときと比べると、たとえば会議室の予約などの手間が必要ないため、開催するための敷居が下がっているように感じます。

また、リアルの会議であれば、予定時間を過ぎると次に予約している人が会議室を訪れたりすることがあり、その時点で会議を終了せざるを得ないときがあります。しかしオンラインではそのような制約はないため、会議時間が予定時刻を過ぎてしまうこともままあるように感じています。

日本の企業においては、オンライン会議が普及する前から会議の多さや、時間が長引いたりすることが問題になっていました。新聞の報道(朝日新聞2019年4月21日)によると、1万人規模の企業では年間に67万時間、15億円も無駄な会議に使っているとの記事がありました。オンラインになってもA氏の会社だけでなく、実は多くの企業でも同様の問題が起きているのかもしれません。

コロナ禍の影響により、オンラインによる会議が日本の企業に一気に普及して、はや半年になろうとしています。この間、メリットともに様々な課題もはっきり見えてきたのではないでしょうか。まさに、今こそがオンライン会議を効率的に進めるためのルールを考えるちょうど良いタイミングだと感じます。

オンライン会議で何を行うのか、報告なのか、意思決定なのか、その会議には誰が出席すべきなのか、時間はどの程度なのか、などなど考えてみる必要がありそうです。何も生み出さない会議は、製造業で言えば何も生産していないのと同じことです。

これを機に、自分の企業でのオンライン会議はどうか、あらためて見直してみませんか。

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第953話 今こそ経営者は学ぶべき

2020年09月06日 | 仕事

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コロナ関連の倒産が徐々に目立ってきました。やはり「飲食、旅館、雑貨小売り」など、対面で行う商売への打撃が大きくなっています(詳しくは日経や帝国データバンク等が報じています)。

さて、今回のコロナ禍のような経済構造の根底を揺るがすような大きな厄災は、中小企業を直撃します。悲観的になり過ぎてはいけないと思いますが、逆に「このピンチをチャンスに変えよう!」とばかりにポジティブ宣言をしまくる評論家や似非コンサルタントの言動はもっと問題です。

環境の大きな変化に対して生き残る施策は2つあります。1つは思い切った縮小策です。出費をとことん切り詰め、低利で借りられる融資で食いつなぎ、経済環境が徐々に改善するのを待つ戦略です。言うまでもなく、これが一番正しいやり方です。

約6,500万年前に隕石の衝突で地球環境が激変した時に、環境に適応し過ぎて巨大化していた恐竜は絶滅し、小さくてエネルギー消費の少ない哺乳類はなんとか生き残りました。ちょっと大げさなようですが、ビジネスにも通じる教訓になっていると思います。

もうひとつの方法は変身策です。今までのビジネスをすべて中止して、まったく新しい仕事に切り替えることです。飲食店を止めてソフトウェアの開発を行う、旅館を廃業して物流倉庫にするなど、これから可能性のありそうな業態に変化する戦略です。言うまでもなく非常にリスキーですが、実際に新しいビジネスに挑戦しようとしている中小企業もあります。

どのような戦略を選択するにしても、トップである経営者の意思決定が全てです。だからこそ今、経営者は学ぶべきです。

「いやいや、こんな状況で学ぶ余裕なんてない」と思われた方は生き残れないでしょう。他者の失敗や、自分が経験したことがないことを学んでヒントを得る、そしてすぐに実践してみる。生き残るにはそれしかありません。

私たちは古代生物とは違って知識を利用することができる、それはとても有難いことだと思いませんか。

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第923話 テレワークで淘汰される社員

2020年05月24日 | 仕事

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「脱・指示待ち型へ」5月22日の新聞に載っていた日本電産・永守重信会長兼CEOのインタビューのタイトルです※。このインタビュー記事は大変興味深いものでした。

まず、永守氏は「テレワークは日本人に向いていないと思っていました。」と言っています。その理由としては「指示待ち型が多いから」ということでした。「子供の頃から親や先生に従うのを是としている。会社員になっても、何かあればすぐ上司にお伺いを立てる」とのこと。

一方、テレワークは自己管理を厳しくしなければ勤まりません。それは「日本人にとって間違いなくプラスです」とのことでした。テレワークは「指示待ち型」から脱却するチャンスだと言うのです。

「これからの教育界は、偏差値や大学のブランド信仰を捨てて、一芸に秀でた人材、とがった人材を育てなければならない」これは昔から言われていることです。学校教育もオンライン授業に大きく舵を切っている今、「学校に入学し、教室で先生の授業を受ける」形態が崩れつつあります。ネットで自由に授業や先生を選び、一芸を磨くようになれば従来のような「指示待ち型」の社会人は淘汰されていくことでしょう。

しかも、それは学生や子供たちの話だけではなく、現に会社で働いているすべての人に対しても言えることです。

もしあなたが会社にしがみつく「指示待ち型」社員だとしたら、この先、若い人たちにどんどん追い抜かれていきます。

玉石混交ではありますが、ネットには様々な情報が数限りなくあります。家にいても一流の講義を聴講することも、価値のある本を読むことも、同じように学んでいる人同士でディスカッションすることもできます。チャンスは平等です。

「指示待ち型」を脱却して生き残りたいなら学ぶしかありません。

え?「どうやって学べばいいの?」ですって?

それじゃ淘汰されてしまいますよ。

※「朝日新聞」5月22日(朝刊)

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第918話 ステイホーム週間は本を読もう(番外編2)

2020年05月08日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、ステイホーム週間が明けましたが、今回は「番外編」と題してこのブログの筆者、芳垣と平野の著作を紹介しています。番外編2はこの本です。

「働き方の統計学: データ分析で考える仕事と職場の問題」平野茂実 (著)

統計学の入門書は、一般向け理工学書の中では断トツに数多く出版されているのではないでしょうか。実際、2013年に大ヒットとなった「統計学が最強の学問である」(西内啓・著)以来、文系出身のビジネスパーソンにもよく売れるようになりました。

私が「働き方の統計学」を書いた理由は、統計学が文系にとっていかに役立つのかを、いままで統計学を敬遠していた人たちに知ってもらいたかったからです。もちろん類似の本はたくさんありますが、この本の特徴は「とにかくわかりやすく書いてある」ということです。そのため、確率に関する記述は思い切って端折ってあります。理系の方々からは「統計学でありながら確率をきちんと説明しないとは何事か!」とお叱りを受けそうです。それを承知で書き進めた理由は、文系にとって確率が最大の難所だからです。

さらにこの本で目指したものは「仕事の現場で使ってみたくなる」ことです。本書がターゲットとする読者層は「文系のビジネスパーソン」です。そうした読者の仕事はなにかと考えたときに、答えは必然的に「営業」になります。偏差値40~60くらいの大学の文系学部を卒業し、民間企業に就職する人たちの7割は営業部門に配属されます。これは自信をもって断言できます。それなら、文系で偏差値50前後の大学を出た営業部員を主人公にしたストーリーにしてしまおう、ということになったわけです。

この本のタイトルの通り、主人公は営業部門の「働き方改革」の渦中に放り込まれます。まず、残業を減らすため「残業偏差値」なるものを作ります。次に営業部員の仕事の仕方に着目して、客先への「限界訪問件数」なるものを発見(?)します。その結果「営業は足で稼ぐ!」という職場の雰囲気が徐々に変わっていきます。さらに、顧客(スーパーマーケット)の店舗に出かけて行ってトマトやメロンの糖度(甘さ)を測ったり、新しい店舗の開店に口を出したり、新発売のお弁当のメニューは何がヒットしそうかを調べたりと、大活躍します。

とはいえ、主人公はAKB48ならぬSBH48(私大文系で偏差値48くらいの大学)出身ですから、数学が得意と言うわけではありません(というより、中学生レベルです)。 

それでも上司やExcelの助けを借りて色々な「気付き」を経験します。著者である私が言うのもなんですが「若手社員の成長物語」としては、とても面白いお話になっていると思っています。テレビ東京あたりで「お仕事ドラマ」の原作に使ってほしいくらいです(^_^;)。 

肝心かなめの統計学の部分ですが、標準偏差や回帰分析あたりまでは、考え方の説明にかなりのページを割いています。半面、後半あたりから、それがやや難しくなってきています。本当は、多変量解析あたりはページ数を十分費やしてじっくりと書きたかったのですが、「分厚い」入門書になっても好ましくないので止めました。

統計学は何を隠そう(?)数学の一分野です。じっくり時間をかけて学べば、普段の仕事に本当に役に立ちます。しかも、皆さんが普段お使いになっているパソコンと、それに搭載されているExcelという超便利なソフトもあります。今や、道具はすでに揃っていると言っても差し支えありません。

「働き方の統計学」は、すべての文系ビジネスパーソン、中でも日々数字に追われている営業部員や販売担当者の方々にとって、「実感を持って」読むことができる本です。是非、ご一読ください。

最後に、この本のイラストを描いてくださった黒渕かしこ先生のチャーミングな絵に、かなり救われていることを告白しておきます。

さて、この「ステイホーム週間は本を読もう」という企画は、今回で最後となります。この後は通常のブログに戻ります。ありがとうございました。

 

働き方の統計学: データ分析で考える仕事と職場の問題

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第917話 ステイホーム週間は本を読もう(番外編1)

2020年05月07日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、ステイホーム週間が明けましたが、今回と次回は「番外編」と題してこのブログの筆者、芳垣と平野の著作を紹介いたします。手前味噌も味噌のうちということで何卒ご容赦ください。

「突発的な仕事に先手を打つ 残業ゼロのビジネス整理術」芳垣玲子  (著)

「整理術」の本はたくさん出版されています。それらをざっくりと2つに分けるならば、個人向けか企業向けになります。前者は近藤麻理恵氏(こんまりさん)の「人生がときめく片づけの魔法」が最も有名です。ただ、この本は「整理術」というより「スピリチュアル版☆お家の収納術」です。企業で実践するのは極めて危険です。私のよく知る某社の社長はこれにハマり、仕事の書類や多くの専門書を「ときめかないから」といって捨てまくってエライ目にあいました。

 さて、「突発的な仕事に先手を打つ 残業ゼロのビジネス整理術」は、職場で実践する整理術を解説した本です。家庭向きではありません。というのも、ビジネスの現場でしか登場しない様々な物事(ものごと)を対象にしているからです。

 ここで物事を「物」と「事」に分解してみます。この本は、職場にある書類や文具、備品といった「モノ」よりも、仕事という「コト」そのものに焦点を当てています。
 では、仕事とは何か?それは、時間と労力を費やしてそれに見合った対価を得るための行為です。机の上に山積みされた書類やファイル、それ自体が仕事ではありません。それらはあくまでも仕事という行為の「影」のようなものです。たとえば、今現在とりかかっている仕事が急に無くなってしまったら、関係する書類は無用の長物になってしまいます。無用どころか早くシュレッダーで裁断した方が良いかもしれません。

 また、仕事はルーチンワーク(スケジュール通りにこなす定型的な仕事)ばかりではありません。突発的に割り込んでくる仕事も多くあります。
 ひとつ例を挙げてみましょう。あなたが、今日は定時で帰れそうだと思っていたら、突然上司に「○○君、ちょっといいかな?」と手招きされました。仕方なく行ってみると、分厚いファイルを渡されました。上司は続けて「このデータ、明日の10時までにプレゼン資料にまとめておいてくれる?実は、さっき専務に呼び付けられて、明日の午後の会議で使いたいって言うんだよ。急だよね~。でも仕方ないよね。悪いけど頼むよ。」と言いました。ほんと悪いよ!専務もあんたも!と言いたい気持ちを堪えて残業に突入・・・ビジネスパーソンなら誰でも経験したことがあるはずです。

 本書は、まさにタイトルにあるように、突発的な仕事の発生を事前に抑えるための「手の打ち方」を実践的に解説した本です。

 その背景にあるのは「渋滞」という考え方です。仕事が流れている状態を、高速道路を走る車にたとえています。予定通りに仕事が進んでいれば、快適なドライブをしているようなものです。ところが、車間距離が十分ではない場合、側道から急に車が割り込んでくると、ついブレーキを踏んでしまいます。すると後ろの車もブレーキを踏み、そのまた後ろも・・・という具合にあっという間に車の流れが滞ります。これが、渋滞が発生するメカニズムひとつです。このメカニズムを仕事に応用して考えてみると、「急に割り込んでくる仕事」を減らせば仕事の渋滞は防げることがわかります。

 しかし、ほとんどの方は「上司の割り込み仕事に先手など打てるのか?まして顧客に対して先手など打てるわけがない!」とお思いのことでしょう。もちろん、突発的な仕事を100%完璧に阻止することはできません。野球選手で10割バッターなどいるわけがないのと同じように。

 しかし打率3割なら十分強打者です。突発的な仕事に対して「先手など打てるわけがない」と言うのは、バッターボックスに立ってバットを全く振らないのと同じです。考え方とノウハウを身に付ければ、十分に先手は打てます。しかも、それは上司にも顧客にも喜ばれることなのです。
 本書には、具体的な先手の打ち方から、職場の机の上の整理方法まで、具体的かつ非常にわかりやすく解説してあります。

 仕事の渋滞を減らして仕事をスムーズに流しましょう。それはまさに「働き方改革」を迫られているすべての企業に求められていることです。

是非、ご一読ください!

突発的な仕事に先手を打つ 残業ゼロのビジネス整理術

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第914話 ステイホーム週間は本を読もう(10)

2020年05月04日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、いつもはビジネスに関わる内容をお届けしているこのブログですが、ステイホーム週間に合わせて「お薦めの本」を紹介しています。10冊目です。

「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」山口 周

 今回はたしかに「お薦め」なのですが、非常に批判的に書きます。すでに本書を読まれて好意的な感想をお持ちの方には、「申し訳ありません」と先に述べておきます。批判するなら、お薦めしなければいいのでは?そう思われた方も多いと思います。それでもここで紹介する理由は「なるほど。商売とはこうやってはじめるのか!」と感心したからです。

 本書の主張は極めてシンプルです。「おわりに」の一部を引用します。

「本書が、世の中で通説とされている「生産性」「効率性」といった外部のモノサシではなく、「真・善・美」を内在的判断する美意識という内部のモノサシに照らして、自らの有り様を考えていただくきっかけなれば、著者にとってこれほどの幸福はありません。」

 以上です。従来のようなロジック中心の「サイエンス重視の意思決定」ではこれからは立ち行かなくなる、ビジネスエリートは「アート」を学んで「美意識」を鍛えなければVUCA(ご存じない方は調べてください)の時代においてビジネスの舵取りをすることはできない、乗り切れないというわけです。

 その「美意識」は絵画を鑑賞し、哲学者の言葉に耳を傾けることで培われます。欧米のグローバル企業で働くエリートたちが、世界的に著名なアートスクールに通うのはそうした理由だからだそうです。今までの考え方の中心にある「サイエンス」を批判し「アート」へと導こうというわけです。

 ところが、「サイエンス」を批判する手法が極めてサイエンスなのです。最先端の経営学の学識を身に付け、ボストン・コンサルティングやコーン・フェリー・ヘイなどの超一流コンサルティングで働いた経験を持つ著者だけのことはあります。

 この本はベストセラーとなっています。「得意な技」を使って「得意な分野」を批判する。そりゃあ上手く行くわけです。「なるほど!商売が上手です!」と思わずうなってしまいました。

 さて、本書の中で、スティーブ・ジョブズについて触れています。「(ジョブズの意思決定は)一瞬の直感に導かれて行われていたことは確かようです」、「ジョブズは製造コストや在庫のシミュレーションを行うことなく・・」と書かれています。

 これには爆笑してしまいました。その理由にご興味のある方は以下のサイトをご覧ください(有料ですが)。 

https://www.businessinsider.com/apples-steve-jobs-was-an-expert-in-supply-chain-management-2018-3

 

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

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第903話 中小企業は今こそマーケティングリサーチを!

2020年04月19日 | 仕事

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「マーケティング」と聞いてどんなイメージを持つか、何人かの中小企業の経営者に聞いてみたことがあります。

「広告宣伝のことだろ?」、「市場調査だね」という答えのほかに「広告会社のクリエイティブな人たちが会議室で斬新なアイデアを出し合っている」、「イケメン社員が高層ビルの会議室でかっこよくプレゼンをしている」、「切れ者の社員がPCでデータを分析してExcelで見栄え良くグラフにしている」

いかにも、というかテレビの見過ぎというか、そんな感じでした。

Wikipediaによれば「(マーケティングとは)企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにするための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。」となっています。しかし、この定義は抽象的過ぎてピンときません。

定義はさておき、マーケティングは実は仕事にとても役に立つ重要な「概念」です。

営業活動がままならない現状だからこそ「重要だが緊急ではない」仕事に取り組むチャンスだと思って(居直って)マーケティングしてみましょう。

そこで真っ先にやっていただきたいのは、マーケティングリサーチです。それは「商品やサービスをより多くのお客様に買っていただくため、市場のニーズを調査すること」です。

マーケティングリサーチは端的に言えば市場調査と言うことになりますが、中小企業は大企業と同じようなリサーチをすることはできませんし、行う意味もありません。

マーケティングリサーチのひとつにグループインタビューがあります。グループインタビューの例ですが、ユーザーになりそうな人を何人かランダムに選んで部屋に集まってもらい、いくつかの商品を試してもらって意見を聞くというものです。

また、実際に集まってもらわなくても、動画配信やZoomを使ってネット上で意見を集めてみるという手もあります。これなら中小企業でもできそうです。

ただし、これはあくまでも「大企業が供給する」視点での調査です。たくさんのお客様にたくさん買ってもらう商品ならばこれで良いかもしれません。

中小企業はこれとは真逆の視点に立つべきでしょう。つまり、リサーチされる側です。

実は商売をやっていると真の顧客視点である「リサーチされる側」になることはほとんどありません。商品を供給するの忙しくて、そんな悠長な立場になってみる余裕などないからです。

しかし、商品が売れず、営業活動もできない今こそ徹底的に「リサーチされる側」になってみましょう。

ネットを検索していろいろな商品のアンケート調査に答えたり、自社が供給しているものに近い商品やサービスを試用したり、時には実際に買ってみたりしてはいかがでしょうか。

おそらく「意外とこれは便利だ」とか「このやり方は面倒だ」とか「別にこれでなくても良いのでは?」といったユーザーとしての実感を得ることができるはずです。

本当の「顧客目線」が身についたと思うまで、何度でもそうしたことをやってみてください。

市場が回復するにつれ、大きな効果を発揮してくるはずです。

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