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中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,201話 問題解決に取り組んだ後のドキュメントとは

2024年01月31日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「いずれ新たなパンデミックは発生するだろう。そうであれば、『古株』の最後の仕事として、これまでの経験を記録に残すべきだと考えるようになった。」

これは、新型コロナウィルス感染症対策分科会会長をはじめ、コロナ対策で数々の役割を担った医師である尾身茂氏が、その著書「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」(日経BP)の中で語っている言葉です。

本書には、尾身氏をはじめ専門家が出した100以上の提言の根拠やそれらに込めた思い、専門家同士の激しい議論、首相や大臣、行政官などとのやり取りなどが詳しく書かれています。特に、第1回緊急事態宣言の解除の条件を議論する勉強会で尾身氏自身が声を張り上げたときの生々しいやりとりをはじめ、当時の緊張感あふれた様子などにもふれられており、3年半にわたるコロナ禍の中、専門家としてどのようにコロナ対策に向き合ったのかを知ることができます。

コロナに対応した専門家ほどの大きな問題ではないかもしれませんが、私たちも公私を問わず日々大なり小なり様々な問題にぶつかり、その解決を模索しながら生きています。問題が生じることは滅多にないという人もいるにはいるようですが、そういう人はそれほど多くはないのではないでしょうか。

さて、弊社では定期的に問題発見・課題解決をテーマとした研修を担当させていただいていますが、その際は問題を発見し解決するまでの一連の流れを6つのステップ(①問題を発見し、②原因を分析し、③3現主義によって調査し、④解決策を立案する、⑤解決策を実施、⑥評価と対策)に則って進めることが多いです。

このステップに基づいて問題解決に取り組む場合に、①から⑤までは熱心に取り組む人が多いかと思いますが、⑥の評価と対策まで取り組む人は限られているようです。本来は解決策を実施した後には、実行からその評価までのプロセスをドキュメントにして、記録として残すことが必要なはずですが、問題が解決できるとそこで安心してしまい、その後にしっかりと記録を残すという人は多くないというのが実際のところのようです。

しかし、せっかく問題解決に取り組んでも、ドキュメントをきちんと残さないと、一連のプロセスの中で行われた議論やそこで獲得した知識や経験等が、時間の経過とともにやがては薄れていってしまいます。次に同様の問題が発生してもそれを活かすことができず、最悪は再び0(ゼロ)からのスタートになってしまうなど、せっかくの取組みの積み重ねが無駄になってしまいます。

そのように考えると、今回尾身氏が執筆された本書はまさに問題解決の最終ステップである「評価と対策」を中心に書かれています。尾身氏も指摘するとおり今後新たなパンデミックが発生するようなことがあった場合には、今回書かれたようなドキュメント(書籍)が役に立つことは間違いないと思います。

私たちも、日々の仕事の中で遭遇する問題発見・課題解決に取り組む際は、同じことを繰り返さないためにも、また速やかに対応できるようにするためにも、一連の流れを必ずドキュメントとして残しておくことが肝要だと、今回尾身氏の書籍を読んで改めて感じました。

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第1,196話 パワハラが横行する組織になってしまったのはなぜなのか

2023年12月20日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

パワーハラスメント(以下パワハラ)に関しては、2022年4月に防止措置への対応が大企業のみならず中小企業へも義務づけられていますが、では実際にパワハラ防止は進んでいるのでしょうか。

パワハラはという言葉を聞くようになったのは、今から20年以上も前です。それまで職場での威圧的な態度などをはじめ様々な嫌がらせ等に悩んでいた人々は、パワハラという言葉が生まれたことをきっかけに声をあげるようになり、この言葉は一気に社会に浸透していったと言われています。

そうした流れの中、厚労省が2011年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を発足させ、パワハラの現状把握や予防・解決に向け具体的な取り組みを開始し、様々な議論等を経てようやく2019年にパワハラ防止法が成立した経緯があります。

こうしてパワハラが広く認知されるようになり、パワハラをしてはいけないという機運が高まりましたが、その一方で最近ではパワハラを恐れるあまり、部下に必要な注意をしたり育成のために叱ることにも慎重になりすぎてしまっている管理職が少なくありません。弊社でも、この10年ほどはパワハラ防止や部下育成をテーマとした研修を継続的に担当させていただく機会が増えてきているのですが、研修の中で強く感じるのは、管理職が部下に対して必要以上に「遠慮」しすぎてしまっていたり、部下育成に対しても必要以上に「謙虚な姿勢」で臨んでいるということです。

これに関しては、これまで本ブログでも何度も触れてきていますが、職場をとりまとめるために、あるいは部下の育成のためには必要な注意や指導、時には叱ることは管理職として当然に行うべきものであり、それはパワハラとは別のものなのです。パワハラと捉えられてしまうことを恐れるあまり、管理職として必要な指導等までを控えてしまうのは本末転倒と言えます。

そういう中、先日一部の新聞で報道された神奈川県内のある市役所の職場におけるハラスメント行為の報道には、正直驚きを隠せませんでした。この報道をご存じの方も多いかと思いますが、昨年市が職員を対象に実施したハラスメントについてのアンケートでは、「ハラスメントを受けたり、見聞きしたりしたか」と尋ねたところ、複数回答でパワハラが690件、セクハラが229件あったとし、上司や同僚、さらに相談窓口にも相談したが解決していないという回答が149件あったそうです。 

具体的な行為としては、「馬乗りになって殴打する」「5時間叱責する」「男性職員が約30分、女性職員に罵声を浴びせた」「不在になった職員の悪口を大声で話す」「育児のための時短勤務について上司から嫌みを言われる」「廊下ですれ違うたびに舌打ちをし、にらみつける」等とのことです。パワハラ防止が広く認知されているはずの今でも、これだけあからさまにパワハラ行為が行われているというのは、一体どういうことなのでしょうか。

あくまで推測ですが、パワハラ行為をしている人は自身もかつてパワハラをされた経験があるなどにより、上記の行為がパワハラにあたると理解していない、あるいはこの程度はいけないことではないと思っているのかもしれません。そして結果として、組織の中でパワハラを許してしまう風土がはびこってしまっているのではないでしょうか。しかし、この状況はそもそも法律上も問題であるだけでなく、このような組織は人の流失が続いて、いずれ組織として成り立たなくなってしまっていくのではないでしょうか。

このような風土を改善するのはなかなかに前途多難だと思いますが、「ハラスメントは絶対に許さない」という思いを全職員が共有し、それを確実に実行していく。時間は長くかかるかもしれませんが、取組みが進んでこうした風土が一掃されることを願ってやみません。

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第1,195話 人が「固定」されることによる影響

2023年12月13日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「上司(男性)が仕事中にスマホばかり見ているので、やる気が失せてしまうのです。やめさせるために、何か良い方法はあるのでしょうか?」

これは先日、私が担当した公開セミナーでお会いした30代前半の受講者から相談された話です。詳しい状況を聞いてみると、その上司は50代後半で非常に仕事ができる人である一方で、仕事中の大半の時間で私用のスマホをいじっているのだそうです。

毎日長時間スマホを見ることが許されてしまうのは、この部署では組織のシークレットの内容を扱っているため個室になっており、さらに構成メンバーは上司とこの受講者の2人きりのため、周囲の目に触れることが全くない状態だからなのだということです。上司は仕事自体はできる人のため、その意味ではもちろんプラスの影響もあるのだそうですが、いくら仕事ができると言ってもスマホばかりいじっているのを見るのは、マイナスの影響を及ぼしているとのことでした。

私は人事や他の部署の上司に相談することをお勧めしましたが、何分にも2人しかいない部署のため、受講者が相談をしたことが容易にわかってしまうことが懸念されるとのことでした。

これに関連して、「仕事をしない上司」や俗に言う「仕事ができないおじさん(おばさん)社員」の話は、これまでにもたびたびマスコミ等で取り上げられたり、私自身も何度も聞いたことがあります。しかし、このケースは仕事ができる上司ということであり、そういう人がこっそりと仕事をさぼるのではなく、部下の目の前で毎日正々堂々とスマホばかりを見て過ごすというのは、一体どういう心境なのだろうと首をかしげたくもなってしまいます。

今回のケースは、組織の経営にかかわる秘密情報を扱っているゆえに閉ざされた空間だからこそできてしまうわけで、そのように考えるとやはり何らかの形で「第三者の目に触れる」ことは必要なことではないかと思うのです。

現在、多くの組織は風通しのよい職場を作るためにハラスメント防止やコンプライアンスの観点から様々な研修を行ったり、意識改革を行うための工夫をしています。この受講者が所属している組織でももちろんそれらを重要視はしているようですが、他の社員や経営者の目が届かない状態になってしまっていることにより、このような結果を生んでしまっているのだと推測します。

それでは、どのようにすればこのような事態を回避することができるのでしょうか。私はやはり定期的な異動を行う仕組みが必要だと考えています。近年ではジョブ型雇用を始めたり、異動に関しても本人の意向を大切にすることが重要視されるようになってきました。もちろん、それらを否定するものではありませんし、これまでこのブログでも何度も書いてきたように、異動にはメリット・デメリットもあるとは思います。

しかし、人が「固定」されることによる弊害は必ず何らかの形で生じてしまうものであり、それを避けるためにも定期的に異動を行って様々な人の「目」を入れることで、組織に適度な緊張感を持たせ、風通しも良くしてすることができると考えています。今回相談を受けたようなケースは組織としても決して看過できないものであり、抜本的な対策を講じる意味でも「人を固定しない」ことが必要なのではないかと考えています。

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第1,194話 物ごとを浸透させるためには

2023年12月06日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」

これは先月開催された「令和5年度自衛隊音楽まつり」のスローガンです。ご存じの方も多いと思いますが、自衛隊音楽まつりは防衛省が毎年11月に日本武道館で行う各自衛隊音楽部隊の演奏会です。1963年に第1回目が開催されて以降、東京オリンピックが行われた1964年と、昭和天皇の病状が悪化し祝典行事等の自粛が要請された1988年、および新型コロナウィルス感染症の拡大防止が求められた2020年と2021年を除いて毎年実施されているとのことです。

今年も陸・海・空3自衛隊のみならず、在日米軍軍楽隊の演奏やマレーシア軍中央音楽隊がゲストで演奏したほか、防衛大学校儀仗隊によるファンシードリルや全国の基地・駐屯地の和太鼓チームによる演舞がありました。大変盛りだくさんの内容の演奏が冒頭の「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」に基づいて行われ、私も観覧する機会がありました。

私をはじめ、このスローガンを聞いたのは当日が初めてという観客が多かったのではないかと思いますが、おそらく大半の観客の心にこのスローガンがしっかりと刻まれたのではないかと思います。と言うのも、私は当日自由席だったこともあり開演の1時間前くらいに会場に到着したのですが、それから開演までの1時間の間、そして2時間の演奏中に繰り返しこのスローガンを耳にすることになったのです。(ちなみに、今年はこれまで以上に人材の募集に力が入っており、このスローガンもその流れなのだろうなと思いました。)

はじめに聞いたときには「なるほど。そういうスローガンの基に今年の演奏会が行われるのね」という程度に軽い気持ちで聞いていました。ところが、10回くらい聞いているうちに徐々に「+(タス)×(カケル)ヒビク・・・」が頭の中で繰り返されるようになり、最後のころは主催者のナレーションとともに、私の中でこの言葉が繰り返されるようになっていったのです。

話は変わりますが、組織において理念やミッションやバリューなど様々な「パーパス」を掲げているところが多いかと思います。しかし同時に、「従業員に言葉が浸透しない、思いが伝わらない。どうすれば全従業員で共有することができるのか」という問題意識を持っている経営者は少なくないと思います。

今回、自衛隊音楽まつりのスローガンを繰り返し聞いたことで、あらためて「物ごとを浸透させるためには、繰り返し繰り返し伝えていくことが最もシンプルであり、かつ効果発揮を期待できる方法なのではないか」と感じました。

もちろん、ただ単に言葉を覚えたからと言って、それだけですぐに全従業員が同じ方向性に向かえるというものではないのは当然ですが、それでもまずは言葉を共有することがはじめの一歩なのではないかと、今回の経験を通して改めて考えたのでした。

それにしても、コロナ禍を経て4年振りに本格的に開催された自衛隊音楽まつり、マーチングのように様々なフォーメーションをしながら演奏するなど、以前に比べエンターテイメント色が強くなり、より楽しめるようになったと私には感じました。YouTubeなどでも視聴できると思いますので、見ていないという方はぜひご覧になってください。

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第1,189話 部下指導は脈々と受け継がれる?

2023年11月01日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「Aさんから教わりました」

これは、先日弊社が担当させていただいた中堅社員を対象にしたある研修で、2人の受講者から異口同音に聞いた言葉です。

2人とAさんは別の部署で働いていますが、仕事の関係で定期的に接点があり、2人はその際にAさんから「仕事で使うと便利だから覚えるように」とあるフレームワークを習い、使うようになったと話をしてくれました。

この話を2人から聞いた際に私の頭に浮かんだのは、かつてAさんの上司だったBさんのことです。当時Bさんはある支社で管理職として働いていましたが、様々な部署のメンバーへもリーダーシップを発揮していたことを覚えています。Bさんはメンバーと積極的にコミュニケーションをとっており、日々気軽に声をかけていましたし、仕事だけでなくアフター5には飲み会や花見会などのレクリエーションも積極的に開催していることなどを、本人や周囲のメンバーからも聞いていました。

こうしたことから、Bさんは直属の部下だけでなく、他のメンバーからも相談事を持ちかけられることも多々あったようで、それに対してBさんからアドバイスをしたり、ときには注意をしたり厳しく指導したりすることもあったということを聞いていました。そのときにBさんから様々に影響を受けたメンバーの一人が、Aさんだったのです。Aさんは当時30代でしたが、Bさんから様々な指導を受けて40代後半になった今、監督職として活躍していることを人事の研修担当者から伝え聞いていました。

そうした中で今回、冒頭の言葉を中堅の2人の受講者から聞いたのです。私は以前から「部下指導を熱心に行う人に育てられた部下は、やがてその人が管理監督職になった際に今度は自身が部下や後輩の育成を積極的に行う人になる」と考えていましたが、かつてBさんに熱心に指導を受けたAさんが、今度は自分が後輩や部下を熱心に指導するようになったということで、これはまさにプラスの意味での「因果応報」とも言えるような気がしているのです。

そのように考えると、後輩や部下育成を時間の流れで考えてみると、それは単なる「点」ではなく、その「点」がつながって「線」となり、それがやがては広がりをもって「面」となるといったように、将来に向かって脈々とつながっていくものなのではないかと思うのです。ですから、もし管理監督職が「部下の育成なんて、大したことではない」などと考え疎かにしてしまうようなことがあると、それが次の世代にも、さらには後々の世代にもマイナスの影響を与えてしまうということになってしまうのではないでしょうか。

たった一人の管理監督職の部下への対応が、その組織の未来にも大きな影響を及ぼすと言っても過言ではありません。そのことをしっかりと考えて対応しなければならないと今回の一連の話をお聞きして改めて考えました。

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第1,186話 社歌の効用とは

2023年10月11日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「社歌を作ります」

時々、弊社がお付き合いをさせていただいている会社の中で、社歌を作る予定であることを経営者やご担当者からお聞きすることがあります。社歌と言えば、つい先日「NIKKEI社歌コンテスト2024」の応募が締め切られ、今後は11月の一般投票と審査員推薦によって来年開催される決勝大会への参加者が決定されるとの記事を目にしたところでした。

さて、あなたの会社には社歌はありますか?日本初の社歌をどこの会社が制作したかという記録は残っていないようですが、一説には南満州鉄道が1917年(大正6年)に制作したという話があるそうです(Wikipediaより)。日本では、これまでに定期的に社歌のブームがあり、現在は5回目のブームの到来かと言われ、社歌にまた注目が集まっているとのことです。

私自身は、最近では社歌の話を聞くことはあまり多くないように感じていたのですが、かつて私が就職した40年近く前は、様相が大きく異なりました。入社式で社歌を斉唱する新入社員の姿や社内運動会などの催しを前に社歌を練習している姿が報道されているのを見たり、毎日朝礼で歌っているという友人の話を聞いたりしたことがあります。

それでは、組織が社歌を作成する理由は何なのでしょうか?社員の一致団結や士気高揚、愛社精神の醸成などが代表的なところだと考えられます。最近は新入社員の採用を目的にしたり、取引先に対して自社のイメージアップのために社歌を作る組織もあるようです。

かつて私がお会いしたある中小企業の社長は、自ら作詞を手掛け、完成した社歌を自らピアノを演奏して社員に披露したという話を誇らしげにされていました。この会社では社歌のおかげなのか業績が向上し、また新入社員の採用活動でもフルにこの映像を活用することによって、応募者が増えたということです。

私自身は、これまで社歌がある組織に勤めた経験はないのですが、数年前から「青春かながわ校歌祭」に出場する機会があり、それ以来、愛社精神ならず愛校精神?といったものを感じています。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「青春かながわ校歌祭」とは神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露し、卒業生と在校生が交流するなどして、親睦を深めることを目的として行われているものです。

今年はちょうど2週間後に開催されるため、各校とも練習に励んでいるタイミングだと思いますが、当日は県立青少年センターホールに25校が集結し歌います。各校ともそれぞれに趣向を凝らすため、見応え・聞き応えがあるのですが、この校歌祭は結果に優劣をつけるものではありません。他者に聞いていただくためのものではなく、あくまで歌っている自分たち自身がそれぞれ学校に通っていた青春の日々を思い出し、懐かしみ楽しむというものなのです。

社歌と校歌は目的も意味合いも異なる場合が多いように思いますので、必ずしも同じ土俵考えることはできませんが、社歌であっても校歌であっても歌っているその一瞬に帰属意識のようなものを感じられることが大切なのではないかと考えています。特に社歌は、外部の人へのアピールというよりも、まずは「この会社が好きだ、ここで働いていることが楽しい」と感じられるものであってほしいと考えています。

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第1,180話 部長職へ昇格するために必要となるスキルとは

2023年08月30日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「どういうスキルを身に着ければ、部長になれるのでしょうか?」

これは、私の知り合いが「万年課長」として活躍している部下のA氏から相談された際の言葉だそうです。

知り合いによると、A氏は非常に真面目な人柄で業務にも丁寧に取り組み、部下の育成も熱心に行うタイプとのことです。そのため、課長としては及第点がとれるそうですが、知り合いが言うには残念ながら「部長の器」としては十分ではないと感じるのだそうです。

それでは、A氏が部長の器として足りないのはどのような点で、部長になるためにはどのようにすればよいのでしょうか?

管理職として活躍するために必要となるスキルには、様々なものがあります。まず、コミュニケーションを筆頭に、折衝力や交渉力が必要になります。また、部下を評価する力も必要ですし、問題解決や数字に関する力、さらにはリスク管理など幅広いスキルが求められるのです。もちろん、これらのスキルは部長だけに求められるものではなく、課長職にも必要になるものですが、課のトップである課長とそれより規模の大きい部のトップである部長では、当然求められるレベルが大きく異なってくるわけです。

A氏が望む部長職には部長だからこそのハイレベルが求められるわけですが、私はもう一つ大切なスキルがあると考えています。

それは、業種業態により異なるものだとは思いますが、ある程度共通するものとして、大きな問題やトラブルなどが発生した時に、全体最適の視点を持てるかどうかということです。つまり、問題やトラブルが発生した際に、自部署のみならず組織全体の視点から最善かつ最適な道を探れるかどうか、ということだと考えています。

先のA氏の例では、A氏は問題やトラブルが発生した際に、解決すべく前向きには取り組むものの、少々慌ててしまい部下を右往左往させることが多いとのことです。何より問題なのは目先の問題に拘泥することで部分最適の対応のみに走ってしまうことが多々あり、業務全体の中でその問題を捉えて、最終的にどうしていくことが一番良いのかを考えて行動することができないのだそうです。

そのように考えると、現時点でのA氏は規模の大きい組織のトップとしては少々危ないと感じざるをえないところがあり、部長の器にはまだ物足りないということなのではないでしょうか。

ちなみに、組織における部長職の比率はどれくらいのものなのでしょうか?もちろん組織規模によるわけですが、私が仕事でお付き合いをいただいている企業などでは全社員数の数パーセント程度といったところが多いようです。そのように考えると、部長になるということは簡単なものではではありませんし、その「器」を持っている人はほんの一握りということです。

そのような中で、A氏のように部長職に就いて活躍をしたいと望むのであれば、前述の様々なスキルを磨いていくのは当然必要なことです。それに加えて絶えず全体最適の視点を持つことを心がけ、日々の業務の中で「トータルで考えるとなにが一番良いのか」と考えるようにしていくことが第一歩になるのではないでしょうか。

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第1,178話 「失敗を許すのか? 許さないのか?」

2023年08月09日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「責任をとって辞めます」

これは、日本の組織において仕事などで大きな失敗をしてしまった人が、自ら職を辞することで責任を取ろうとする際によく使われる言葉です。テレビドラマの女性外科医のように「私、失敗しないので」と皆が言えればいいのですが、現実には必ず失敗は起こるものです。

ところで、企業をはじめとする日本の組織は己が招いた失敗については何らかの「形」にして責任をとらざるを得ない、つまりは「失敗を許さない」という企業風土が強くあるように思えます。実際、経済協力開発機構(OECD)が各国の15歳を対象にした2018年の調査でも、日本は「失敗への恐れを感じる生徒の割合が77%と、加盟国中で最高とのことです。(日本経済新聞2023年8月7日)

このような「失敗を許さない・認めない」、「個人が責任をとる・職を辞する」といった、ある種の文化のようなものになっていると思えるものは、組織にとどまらず国民性とさえ言えるのかもしれませんが、一体いつ頃から形作られてきたものなのでしょうか。これは定かではないものの、相当昔からのもののような気もします。たとえば、江戸時代に武士が切腹したというのも同じような責任の取り方だったのではないでしょうか。藩内で起こった不祥事に対して、ときには主君を守るために、自らが責任を取って切腹するという道を選んだわけです。

翻って、現在の組織は失敗をした人に対してもちろん切腹こそさせないものの、限られた人に責任を負わせる形で事を締めくくることが往々にしてあるように思います。つまりは、今も脈々とこうした文化が受け継がれているのかもしれません。しかし、このような責任の取り方は結果として失敗を次に活かすことをせずに、闇に葬っているだけです。

一方で、数は少ないのかもしれませんが、組織を揺るがすほどの大きな失敗をした人を許したことによって、その後それらの人が大活躍をしているという組織もあります。

そのような企業を取り上げている番組が、最近NHKで放送されている「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」です。番組では、大失敗した商品や巨大プロジェクトなどを「黒歴史」として取り上げ、講談師の神田伯山が当時のエピソードを講談調でおもしろおかしく紹介しています。

これまで放送された中で私が特に印象に残っているのが、生活日用品メーカー「エステー」の家電開発秘話を取り上げた回です。社運をかけて開発した商品が結局は全く売れず、社の「黒歴史」となったのですが、しかしそのときの開発技術者は現在部長に、そのときに営業力を発揮できなかった営業パーソンは今年6月に、何と社長に就任しているのです。

当時、会社には大きな損失・損害を与えたわけですが、失敗の責任を追及してそこで辞職させていたら、現在のこのような姿はなかったわけです。本人の努力はもちろんのこと、今後その失敗以上の成果を得ることに期待して、リカバリーのチャンスを与えた会社(経営者)の「器」の大きさが見えるような気がしています。

失敗はしない方がいいのというのはもちろんですが、失敗することによってはじめて見えてくる世界や、新たな知恵が生まれるということもあると思います。失敗を許し、教訓を次に活かすことができる組織になれるかどうかが、組織としての「器」というものなのかもしれません。

競争がますます厳しくなる今、失敗しないための取り組みはもちろんですが、成長という観点で「大きな器の組織」にするためにはどうすればよいのかということを考えていく必要もあるのではないでしょうか。

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第1,174話 「ホワイトすぎる」対応も不安にさせる

2023年07月12日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「仕事が何となく物足りないのです。社会人とはもっとバリバリ働くものだと思っていたので」

これは最近、弊社が若手社員を対象とした研修を担当させていただいた際に、研修終了後に相談されることが多い内容です。

詳しく聞いてみると、職場に配属後、上司をはじめ先輩達は忙しそうに働いているのにもかかわらず、自身はまだ担当する仕事があまりなく、また残業になることもほとんどないことから、そのことが物足りなく感じてしまうのだそうです。また、学生時代の友人の中には、既に複数の顧客を担当したりプロジェクトのメンバーに入ったりするなどしていて、どんどん成長している。一方の自分は、今は少々ぬるま湯の中にいるような感じすらして、このままの状態が続けば友人たちとの差は広がる一方のように感じ、自身の将来に不安を感じてしまうとのことです。

少々贅沢な話のようにも思えますが、これはここ最近話題に上ることが増えている、いわゆる「ホワイト企業」のことを言っているように思われます。かつて長時間労働の企業を「ブラック企業」と評したことがありましたが、ホワイト企業はその反対を指す意味で近年使われるようになりました。具体的には、仕事量をはじめとして若手に配慮をした結果、若手社員にとっては仕事の難易度が低すぎると感じられたり、仕事の絶対量が少ないために不安にさせたり、やる気を削いだりしてしまう企業や上司の対応のことを指しています。冒頭の受講者の悩みは、まさにこのホワイトすぎる対応によるものだと思います。

このような話を聞いた際には、上司や先輩に仕事量を増やしてほしいと具体的に話をしてみると良いのではとアドバイスをしているのですが、入社後半年から数年程度の彼らが自らそのような話をすることは少々ためらわれるようです。実際にそのような行動に移せる人はあまり多くはないように感じます。

しかしながら、こうした状態が長期間続いてしまうと、成長の実感が得られないことに不安を覚え徐々にモチベーションが下がってしまい、その結果離職につながってしまうというケースも実際にあるそうなのです。

それでは、こうした問題にどのように対応すればよいのでしょうか?「べた」な方法かもしれませんが、私は上司と若手社員が定期的、継続的に意見交換をする場を設けることが最初のステップだと考えます。そのような場を通じて、若手社員の考えや希望を聞きながら仕事量が適切であるかどうかを見極めて必要な対応を行い、それを繰り返すことで若手社員の成長の度合いを確認することもできるのです。もちろん、組織としてオフィシャルな面談の機会を用意しているところも多いと思いますが、若手社員の不安や物足りない気持ちに向き合うためには、もう少しカジュアルな雰囲気の面談を月に1回程度設け、フリーな意見交換をできる場があるとさらに良いのではないでしょうか。「昔は一緒に飲みに行けば、話を聞いていろいろアドバイスができたのに・・・」と思われる上司も多いのではないかと思いますが、今は昔ではありません。飲み会や飲ミュニケーションに頼るのではなく、双方が率直に話すことができる場を上司の方から積極的に設けていくことが「ホワイトすぎない」ためにも必要なのではないでしょうか。

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第1,173話 仕組みを根付かせるための、(株)キーエンスの根幹にあるものとは

2023年07月05日 | 仕事

「仕組みを作っても根付かない。時間の経過とともに、いつの間にか機能しなくなっている」

仕組みを作ってもそれがなかなか継続しないというのは、多くの組織に共通する悩みではないかと思います。職場で問題が生じた際に、解決策の一つとして挙げられることが多いのが「仕組みにする」であり、仕組みを万能薬のようにとらえている人も少なくないように感じます。

では、そもそも「仕組み」とは何なのでしょうか?辞書によると、「物事の組み立て、事をうまく運ぶために工夫された計画」とあります。つまり、組織において「仕組みにする」とは、たとえば異動や退職によって人が変わることがあっても、きちんと回るシステムを構築するといったことなのではないでしょうか。しかしこの「仕組み」、作ること自体も簡単ではありませんが、さらに大変なのは継続的に回し続け、きちんと組織に根付かせることです。

これに関して実際に仕組みを作り、それを徹底することにより驚異的な数字を出している会社があります。それは株式会社キーエンス(以下(株)キーエンス)で、時価総額14兆4,482億、平均年収 2183万円、売上高営業利益率55.4%、自己資本比率93.5%とのことです。(西岡杏(2022)「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」日経BP)

(株)キーエンスの仕組みは様々あるようですが、私が最も驚いたのは営業の仕組みです。その一部を紹介すると、毎夕先輩と後輩でペアを組み、顧客役と営業役に分かれて1000本ノックのようなロールプレイングを繰り返したり、5件以上のアポがないと外出が許されなかったり、さらに顧客との商談後には5分以内に外報と呼ばれる報告書を記入したりするのです。本書によると、こういった仕組みは営業のみならず、例えば代理店を通さない「直接販売にする」、「当日出荷にする」体制など、「付加価値を最大化する」という目標に向けた同社の仕組みはあらゆるところにあるそうです。

本書では、多くの企業では仕組みを構築したとしても維持継続が難しく、時間の経過とともに仕組みが壊れてしまうのに、(株)キーエンスがこれだけの仕組みを維持継続できるのはなぜなのかについても紹介されています。それによると、これらの仕組みをやりきる人材を育てる取組みや、そのベースにある風土、さらにはその源流をなす創業者の基本的な経営観や仕事観にも焦点が当てられています。ポイントは仕組みを表面的に真似するのではなく、そこに込められた「哲学」も真似するということだとされています。

しかし、入社してすぐにその哲学が浸透するわけではないことから、(株)キーエンスでは個人ではなくチームとしてより良い結果を残すことを目指して、部下の育成にも余念がないようです。こうした育成を通して社員に哲学がしっかり浸透し、それが組織の風土になっているのだと思います。このように(株)キーエンスでは個々の社員が自らやる気になるような内発的動機付けをしっかりと行い、同時に営業利益の一定割合を賞与として社員に還元するなど、外発的動機付けも徹底して行っているのだそうです。

どの組織もが(株)キーエンスのようになるのは簡単なことではないでしょうが、50年という社歴としてはそれほど長くはない時間の中で「哲学」をしっかり根付かせた(株)キーエンス。書籍を通して一部しか垣間見れていませんが、今後もますます目が離せない存在ではないかと感じています。

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