中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,127話 主体的な人が求められているわけ

2022年08月03日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」

これは、つい先日お会いした、ある製造業に勤める女性(Aさん)から聞いた言葉です。

Aさんは34年前に高校を卒業後、新卒として製造業であるB社に入社したとのことです。入社後何度か異動し、その都度主体的に精一杯働くことでキャリアを重ねてこられ、現在は総務部で育成と採用の仕事をされています。

Aさんは入社後の自身のキャリアを、次のように話してくれました。

「はじめは営業管理部に配属されました。そこでは、自社の製品を覚えることができたのです。また、電話を積極的に取っていたら、どういう会社と取引しているのかを知ることもできるようになり、次第に相手の声を聴いただけで、どのお客様からの電話で、どういう用件でかけてきたのかがわかるようになりました。次は生産管理に行きました。そこでは、生産を管理するのですから、一気に製造業の理解が深まりましたね。その次は製造部門でした。男性ほどには重いものを持ち上げることはできませんでしたが、プレス加工の現場に女性として入りました。面白かったです。でも、製造部門にいるときにリーマンショックがきてしまい、会社は人員の整理もすることになりました。その次に起きたのは東日本大震災でした。そのときは、初めての夜勤もしました。大変でした。そうしているうちに、今度はインドネシアからも実習生がやってくるようになりました。何とか彼らとコミュニケーションをとりたくて、インドネシア語の会話集を購入して勉強したら、ようやく挨拶ができるようになり、少しずつコミュニケーションもとれるようになりました。その後、帰国してしまっても次の実習生がまたやってきて、前に来ていた人からの手紙を言付かってきてくれたりしたため、元気にやっている様子がわかりました。そして、18年前から総務部で仕事をしています。それまでの経験を買ってもらえたようで、声がかかったのです。現在は採用や育成をしていますが、とても楽しいですし、幸せです」とのことでした。

これがAさんの34年間のキャリアですが、この話をした後に「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」と、生き生きとした表情で語ってくれました。

「主体的」という言葉、これは企業の経営者が新卒を採用する際に、切に願うキーワードではないでしょうか。2018年度まで毎年日本生産性本部が実施していた「経営者が大卒新人を採用時に重視すること」で、10年連続で主体性が2位にはいっていました(因みに1位は16年連続でコミュニケーション能力でした)。

この「主体性」については、様々な企業の経営理念や求める人材像に取り上げられることの多いワードだと感じます。自分から率先して行動できる人材を求める、何事にも好奇心を持ち、チャレンジできる人材を求めるなど、多くの企業が主体性に関わる人材を求めていることがよくわかります。これだけ多くの企業が求めている主体性ですが、裏を返せば主体的な人はさほど多くないからこそ、重要視され求められているということなのではないかと思うのです。

実際のところ、主体的に仕事をしたり生きていくということは、口で言うほど簡単なものではないのだと思います。だからこそ、主体的な人が求められるわけですし貴ばれるのです。そして、主体的に生きてきた人だからこそ、手にできる経験やキャリアがあるのだとも思います。

Aさんの様々な部署での経験は、一朝一夕で培うことができるものばかりではなかったでしょうが、それを経たからこそ今があるわけです。

Aさんの話には続きがあります。昨年技能検定を受験し、合格をしています。さらに、今後別の科目で技能検定を受験することも視野に入れて、現在は中学の理科の教科書を読み直しているそうです。「勉強も楽しくて」と語るAさん、どこまでも前向きで主体的な人です。

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第1,123話 知っていることを実行に移すのは難しい

2022年07月06日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「知って行わざるは、知らざるに同じ」

これは、江戸時代の本草学者、儒学者の貝原益軒の言葉です。「知っていても行動に移さなければ、全く知らないのと同じことだ」という意味です。この言葉を耳にするたびに、知識を持ってはいても、それを基にして行動することは簡単なことではない。実行するということは、次のステージに上がらなければならないことだと改めて感じます。

さて、最近、新聞などの広告でスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」という書籍について、全世界で累計4,000万部、国内で240万部を超えて読まれ、20世紀にもっとも影響を与えたビジネス書だという宣伝をよく目にします。

既にお読みになったという方も多いと思いますが、簡単に内容を紹介すると、「主体的である」こと、「終わりを思い描くことから始める」こと、「最優先事項を優先する」ことをはじめとして、全部で7つの習慣を通して「成功を手に入れ、充実した人生を送る」ための方法が紹介されいます。

実は私自身、1996年に日本語版が出版された際に読んだ一人です。その後も、「マンガで学ぶ7つの習慣」、「13歳から分かる!7つの習慣」など、新たなバリエーションが出るたびに読んでいますので、7つの習慣そのものは一通り理解したつもりになっています。しかし、では、それらをどれくらい実行できているかとなると、正直なところあまり自信はありません。

この本の7つの習慣に限ったことではありませんが、私たちが知識として学んだものを自分のものとして身に着け、それに基づいてしっかりと実行に移すということは、決して簡単なことではないのです。

明時代の中国の陽明学に「知行合一」という言葉があります。これは「知って行わないのは、真に知っていることではない」ということであり、冒頭の「知って行わざるは、知らざるに同じ」と同じ意味合いです。

かように「知ったことをしっかり実行する」ことは難しいものであり、私たちのとって永遠の課題の一つなのではないでしょうか。「7つの習慣」が世界で4000万部も売れているということはその裏返しであり、「知」を「行」に結び付けたいという思いを持つ人がいかに多いかということを示しているのかもしれません。

さて、皆さんは知ったことをしっかり実行に移すことができていらっしゃるでしょうか?これを機会に、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

(冒頭の写真はウィキペディア⦅Wikipedia ⦆より)

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第1,119話 コロナ禍で働き方改革は進んだのか!

2022年06月08日 | 仕事

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「以前は週に数日テレワークを取り入れていましたが、現在は毎日出社しています」

これは最近、研修のご担当者や受講者にお会いした際に聞くことが多くなった言葉です。

新型コロナウイルスの感染防止もあり、一気に導入が進んだと感じていたテレワークですが、実際のところ現在の状況はどうなっているのでしょうか?

弊社が担当させていただいている公開セミナーの際に、参加者にテレワークをしているか否かを伺うことがありますが、その結果は現在もテレワークを導入している企業は、毎回ほぼ3割前後だと認識しています。東京商工会議所の2022年2月に行った調査でも、この2年間のテレワーク実施率は、緊急事態宣言や蔓延防止の期間はテレワークの実施率が上がるものの、それ以外はおおむね3割程度で推移しているようです。

また感染状況とは別に、規模の小さい企業ほどテレワークの実施率が低いようですが、前記の調査データでは企業規模の大小を問わずテレワーク実施率は増加しているとしていますので、この点はセミナーや研修の現場で感じる状況とは少し乖離があるようです。

現在の導入状況には多少の差はありそうですが、それではテレワークの導入によって働き方改革は進んだのでしょうか?働き方改革はもともと政府が主導して進めていたものであり、コロナ禍で一気に進展したとも言われていますが、本当に進んだのでしょうか?

働き方改革では、長時間労働の是正をはじめとして雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、柔軟な働き方ができる環境の整備等々が掲げられていました。そしてこれによってもたらされるメリットには、生産性の向上がありました。しかし、前記の商工会議所の調査においては、テレワークの実施によって定型的な業務の生産性は確かに向上したものの、一方では社内外におけるコミュニケーションが不足してしまったり、労務管理がうまくいかなかったりということも起こってしまっているようです。その結果、当初の狙いとは逆に長時間の労働に至ってしまうケースも少なくないようです。

このように考えると、テレワークを通じた働き方改革は現時点では残念ながら期待していたほどには進んではないようです。もちろん、この間にオンラインツールを活用した会議などによって生産性が向上したというケースはありますし、マスコミなどでも大企業などでは目に見えて働き方が変わったという人のことは頻繁に取り上げられています。しかし、働き方改革が進んだのか否かという観点で全体を通してみれば、まだ一進一退と言わざるを得ないのが実際のところではないでしょうか。

コロナ禍をきっかけにしたテレワークの導入が大きな弾みになったことは確かですが、最近ではテレワークから出社へと戻す例も出てきているようです。今現在は様々な試行錯誤を続けている段階と言えるのかもしれませんが、日本において本当の意味での働き方改革が進むまでには、もう少し時間がかかるのかもしれません。

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第1,117話 部下の評価が甘くなってしまうのはなぜか

2022年05月25日 | 仕事

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「管理職の部下への評価が甘いのです」

これは、管理職による部下の評価に関して問題意識を持っている企業のご担当者から定期的に聞く言葉です。

評価をする際に陥りやすいエラーの一つとして、寛大化傾向があります。これは、文字どおり評価全体を寛大に行ってしまうことです。具体的には、特定の能力や特性について実際よりも良く評価すること、また、頼りにしている部下を実力以上に評価するなど、評価全体を甘くしてしまうことです。

では、なぜ管理職は部下の評価をなぜ甘くしてしまうのでしょうか?先日、この点について既に管理職になっている人にインタビューをさせていただく機会をいただきました。その結果は、主に次の3つに分けられます。

A管理職:「直属の部下の評価をよくしたいと考えるのは、管理職として当然のことだと思います。評価をよくすれば、部下のやる気につながります。そして、人事の処遇もよくなるわけですから。大切に思っている部下だからこそ、良い評価をつけてあげたくなりますよ」

B管理職:「私はマイナスの評価をつけてしまうと、部下へフィードバックするときが辛いのです。ネガティブなことであっても部下へ伝えなければならない、それが苦手なのです。それでついつい甘くしてしまっています」

C管理職:「正直に言うと、私は部下との人間関係が壊れることを恐れています。マイナスの評価をすると、その後一緒に仕事をしにくくなるように感じるからです」

いずれも本音で話をしてくれましたが、評価することの大きな目的が部下の人材育成だということを考えると、いずれの方も管理職としての役割の一部を少々放棄しているように感じられました。ぜひ今一度、管理職の役割、そして評価の目的を整理していただきたいと思うのです。

さて、インタビューをさせていただいた中で最も大勢の方が指摘されたのが、マイナスのフィードバックが難しいということでした。行動改善を部下のやる気につながる表現で伝えるのは確かに簡単なことではありませんので、うまく伝えるためには訓練が必要です。

それでは、どのように伝えればよいのでしょうか。ここでヒントとなるのが、同じことを伝えるにしても、行動よりも人格のことを言われた方が身が引き締まるという理論です。具体的には、A「うそをつかないで」よりB「うそつきにならないで」や、A「裏切らないで」よりB「裏切り者にならないで」を例にして考えてみると、いずれもAは行動について訴え、Bは人格について訴えているのです。(「脳はなにげに不公平」池谷裕二 朝日新聞出版)

確かに「うそつきになるな」や「裏切り者になるな」の方が、直接気持ちに訴える部分が強いように思えます。もちろん、フィードバックは「人格と行動」だけに限ったものではありませんから、これだけですべてを解決することはできませんが、大きなヒントにはなりそうです。マイナスのフィードバックでお悩みの管理職の皆さんは、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

ただ、いずれにおいても、フィードバックを行う際にはその根拠となる情報をしっかり収集しておかないと、部下のやる気につながる適切なフィードバックはできません。どのように伝えるかのみならず、どのようにその根拠となる情報を収集するのかも、評価における大切なポイントになるのではないかと思います。

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第1,113話 自由と自律の中で進められる在宅勤務

2022年04月20日 | 仕事

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「出勤できていいですね」

これは、私の知り合いが隣人からかけられた言葉です。エッセンシャルワーカーであるこの知り合いは、本人の希望というわけではなかったようですが、2年前の第1回目の緊急事態宣言下からずっと出勤しているのです。そして先日、帰宅時にたまたまこの隣人と会い、その際にかけられたのが冒頭の言葉だそうです。知り合いが「どういうことですか?」と聞いたところ、隣人はこの2年間ほぼ在宅勤務だそうで、出勤している知り合いに対して「もう在宅勤務は疲れました。思うように仕事もはかどりませんし、出勤できる人がうらやましいです。」としみじみと言ったのだそうです。

新型コロナにより、多くの組織がテレワークなどの在宅勤務を導入して、はや2年が経過しました。それまでに比べれば「働き方改革」と言ってもいいような状況だと思っていますが、実際、通勤時間の削減などのテレワークのメリットは広く知れ渡るようになっています。しかし、一方でテレワークのデメリットとして、上司や部下などの同僚とのコミュニケーションの難しさはもちろんのこと、出社しないことにより本人のオンとオフの仕事の切り替えが難しく、仕事の生産性が上がらないということも注目されるようになっています。

日経BP総合研究所イノベーションICTラボが2020年10月に行った調査によると、テレワークを阻害する要因として「ずっと自宅にいると、心身を仕事モードに切り替えにくい」が2位(36.3%)でした。私自身これまで職場で働いていたときには、周囲に人がいるためそれが良い刺激になっていると感じていました。同僚が一心不乱にパソコンに向かっていたり、電話対応をしていたり、数人のメンバーが雑談をしていたり・・・。それらを見聞きしていると、少々仕事にのっていないようなことがあったとしても、雑音を含めたそうした刺激が自分を仕事モードにしてくれていると感じていました。

職場のようにオフィシャルな場で仕事をする場合には、あくびをしたくなったときには周囲を気にして自然と口を手で覆ったりします。しかし在宅で仕事をする場合は気にせず堂々とあくびをできてしまいます。この点は服装についても然りで、在宅勤務であれば極端に言えば寝間着のまま仕事をすることもできてしまうわけですから、確かにオンとオフの切り替えは難しく、仕事モードに切り替えにくくなってしまうことが少なくないのではないでしょうか。

しかし、今後も好むと好まざるにかかわらず、在宅勤務をはじめとしたテレワークは今後続いていくわけですから、どうすれば仕事モードのスイッチを入れることができるのかを自分自身で見つけていく必要があると思います。

以前から組織において求められる人材像に、「自律型人材」があります。自律型人材とは、自分が何をすべきかを考え、他者から指示されなくても主体的に責任感をもって仕事を進めて、成果を出せる人材のことですが、テレワークで成果を上げていくためには、まさに自律型人材になることが必要だということです。

今後も在宅勤務中心の生活を続けていく上では、自身にあった方法で自らを律していくことが不可欠であり、この意味で自由と自律は背中合わせなのだということを改めて感じています。

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第1,092話 時間へのこだわり

2022年01月26日 | 仕事

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2020年の日本の時間当たりの労働生産性(日本生産性本部)は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中23位と順位を下げたとのことです。この数十年はほぼ20~21位で推移していましたが、ここにきて1970年以降最低の順位になったそうです。

新型コロナウイルス感染拡大下の2021年4~6月期の労働生産性でも、38カ国中半数以上がコロナ以前(19年4~6月期)と比べてプラスだったのに対して、日本はマイナス2.8%だったそうです。その要因の一つには、「柔軟な働き方への準備不足」があるとのことです。(2022年1月17日 日本経済新聞)

ところで、この労働生産性の国際比較で14位に位置しているのが北欧フィンランドで、毎年ほぼこの順位をキープしています。このたび、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」(堀内都喜子 ポプラ社) を読む機会がありましたが、それによるとフィンランドでは午後4時には仕事が終わり、残業もほとんどしない(仮に残業をしたら、その分の時間をまとめて休暇として取得する)し、有給休暇の消化率も100%。さらに、夏季には1か月以上の長期連続休暇をとる。このように休暇にこだわっても、1人あたりのGDPは日本の1.25倍、最新の幸福度ランキングも2年連続で世界一とのことです。

なぜこのような結果を出せているのかについては、休みに対する考え方の違い、アウトドアやサウナへの愛着、硬派で諦めない強い気持ちを表す「シス」、フィンランドのシンプルで心地よいライフスタイルを表す言葉である「ムカヴァ」、サスティナブルな社会づくりなど、フィンランドのもともとの文化や志向や価値観などによるところが大きく影響していることが紹介されています。具体的なノウハウなどによるものではなく、文化や価値観などによるものが大きいと考えられますが、それらは一朝一夕で築けるものではないことから、残念ながら日本人には簡単に真似できるものではないということかもしれません。

さて、それでは今後私たち日本人はどうすればもっと生産性を上げることができるのかを考えてみましょう。私が日々様々な研修を担当させていただいている中で感じるのは、「時間や納期について、今よりもっと意識してみることが必要ではないか」ということです。研修では個人やチームで様々な演習に取り組んでいただいていますが、その際に納期管理(演習の終了時間を守ること)の重要性をはじめにお伝えしても、それを徹底する人やチームがある一方で、全くこだわらずにマイペースで演習を進める人やチームも少なくありません。それは成果の完成度を追求するあまり、納期(時間)への意識が希薄になってしまっているのだろうとは思いますが、まずは「与えられた時間の中で最大限の結果を出すことに、もっとこだわりを持ってほしい」と感じることが多々あります。

言うまでもありませんが、時間はとても大切な経営資源の一つです。価値を生み出すためには経営資源は最大限に有効活用するべきものであり、反対に価値を生み出すことに使われなかった時間は結果として経営資源の無駄遣いをしたことになってしまうのです。

コロナ禍においてテレワークが日常のものになりましたが、同時に生産性の問題を抱えている例も少なくないようです。一人一人が「時間」という経営資源を有効活用することをしっかり意識して、取り組んでいくことが必要だと考えています。

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第1,086話  反省しないことをモットーにしている人

2022年01月05日 | 仕事

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「反省する人は成功する。誰でもそうやけど、反省する人はきっと成功するな。 本当に正しく反省する。・・・」

ご存知の方も多いかと思いますが、これはあの松下幸之助氏の言葉です。この言葉のとおり、松下氏自身もその日あったことに思いを巡らし、失敗体験を振り返り「次はこうしよう、こうすればうまくいくかもしれない」と考え、反対にうまくいったことに対しても、そのままにしておくのでなく、ことがうまく運んだ理由を考えて次にもっとうまくやるためにはどうすればよいか、日々考えていたとのことです。

おそらく、多くの人たちは子どもの頃から松下氏の言葉のように「失敗したら反省すること、次に同じようなことが起きた際には前の失敗を活かすように」と周囲の大人から繰り返し言われてきたと思います。そのため、特に意識することなく「日々反省をしている」ように思うのです。

しかし、先日タレントのタモリ氏が「反省しないことをモットーにしている」との話をしているのを聞いて、新鮮に感じたのと同時にその理由に「なるほど」と思わされました。

今年喜寿を迎えるタモリ氏は、同一司会者による長寿番組のギネス記録を2つ持っているそうですが、長く番組を続ける秘訣の質問に対して、「反省しないこと。過去のことをいくら反省してあの時こう言えばよかった、こうすればよかったと言っても、一生同じ状況になることはない。だからそれを反省してもしょうがない。それよりも、未来に目を向けましょう」と答えていました。

「反省」とは過去の時間に思いを巡らすことです。それよりも、「同じ時間を使うのであれば未来を考えることが大切だ」というタモリ氏の言葉は、私にはすっと腑に落ちるように感じられました。

確かに、32年間続いたフジテレビの「笑っていいとも」の最終回の際にも、周囲の出演者が感傷的になっている中で、タモリ氏が淡々と番組の終わりを迎えていたことが強く印象に残っています。このときも、32年という過ぎ去った時間を振り返るのではなく、タモリ氏の目は既に未来に向いていたということなのでしょう。実際に、「笑っていいとも」終了後に、やりたいと考えていたことにいろいろ取り組んだとのことです。

振り返ってみて、私自身は日ごろから失敗したら反省し、次に活かすことが大切だと考えてきたのですが、タモリ氏の言葉に刺激を受けて、2022年は反省の時間は大切にしつつも、より「未来のために今の時間を使うこと」をモットーに取り組んでみたいと考えています。

新年の始まりにあたり、皆さんはどう思われますか。

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第1,044話 一挙手一投足の「働き」とは

2021年08月04日 | 仕事

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新型コロナウイルスのワクチン接種が、(地域により多少のばらつきはあるものの)高齢者から64歳以下へ広がってきています。

私は、5月に80代の親の付き添いで出身市のワクチン接種会場に行き、その後先月末には居住地区の会場で私自身の1回目の接種を受けました。

両会場での接種の進め方はそれぞれに特徴があり、非常に興味深く思いました。まず出身市の会場では、接種者自身が受付→接種前の問診→接種ブース→接種後の待機場所へと順に移動するスタイルでした。一方の居住地区の会場では、接種者は受付後に個室のブースに入るとその後の問診や接種は医師や看護師が移動して行い、接種後の待機までの一連がそのブースで行われるスタイルでした。

2つの会場で正反対ともいえる対応だったわけで、運営に対する考え方の違いに興味を覚えました。それぞれに一長一短あるように思えましたが、私はどちらかというと居住地区の会場の運営スタイルの方がより効率的なのではないかと感じました。

これに関して、先日(6月12日)の朝日新聞で、愛知県豊田市では接種会場の運営にトヨタ自動車の「カイゼン」のノウハウを取り入れていることが紹介されていました。具体的には、「受付80秒」「手指消毒12秒」と作業ごとに時間を算出し、最適な人員配置を考えたり、会場の床には進路を矢印で示したり、また約60の案内板を設置しているとのことです。

当然のことではありますが、私たちの一挙手一投足には時間がかかっています。効率の視点で考えると、一つ一つの動作もおろそかにはできないということであり、日頃当たり前のように行っている動作であっても、絶えずムダが発生していないかという問題意識を持つことは非常に重要です。

職場の業務で考えてみると、仕事を阻害する問題の例として一番に挙げられるのがムダです。しかし、ムダが発生していても意識的に見るようにしなければ、それをムダとしてきちんと認識することは案外難しいものです。

そこで、ムダを発見し認識するためには、「動き」と「働き」に分けて見ることが必要です。工場などの現場では、作業員の動作が生産に貢献しているかどうかを見分けることをしているところが多いかと思いますが、デスクワークではそこを見分けることは簡単ではありません。ではどうするかというと、「その動作が利益を生んでいるかどうか」の視点で見てみることをお勧めします。具体的には利益を生む動作を「働き」として、単なる「動き」と区別してみることです。現場のみならず、デスクワークでも営業活動でも、会議などにおいてもきちんと「働き」になっているか、「ムダ」になっていないかを確認することが重要なのです。

今回、2つの接種会場を訪れて運営方法の比較ができたことにより、自分の仕事においても一挙手一投足にムダがないかという問題意識を持つことが重要だと改めて思いました。

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第1,042話 「レジリエントな人」になるには

2021年07月28日 | 仕事

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紆余曲折を経て始まった東京オリンピックですが、このところ日本人選手が目覚ましい活躍を見せており、私の周囲でも盛り上がってきています。中でも、私が今後も自分の中で印象に残り続けると感じているのが、卓球の混合ダブルスです。

ご覧になった方も多かったと思いますが、水谷隼・伊藤美誠ペアのドイツ戦、中国戦は、試合開始直後は対戦相手に圧倒的にリードされたのにも関わらず、最終的に逆転して勝利を勝ち取ったのです。

特に伊藤選手はまだ20歳という年齢に関わらず、両試合におけるあの強靭な精神力に圧倒されました。毎試合伊藤選手の戦う姿を見ていて、実に「レジリエントな人」だと感じました。

この「レジリエンス(resilience)」、まだ一般的ではないかもしれませんが、困難な問題、危機的な状況、ストレスといった状況に遭遇してもうまく適応できる心理的な特性のことです。近年は人事部門において比較的使用されることが多くなってきています。

もともとは物体の弾性を表す言葉ですが、それが心の回復力を説明するものとして使われるようになったものです。それゆえに逆境や困難に押しつぶされることなく外的環境に順応して適応する力、精神的回復力と訳されることもあります。

具体的には、未来に対して肯定的な期待をイメージしたり、物事に対する興味や関心を幅広く持てたり、感情のコントロールが適切に行えたりする特性です。レジリエンスが高い人は、たとえ困難なことや脅威に直面しても、一時的には精神的なストレスを感じることがあってもそれを抑えて、乗り越えたり適応できたりすることができると言われています。

伊藤選手が当初は不利な状態であっても果敢に攻め続け、最終的に勝利につなげられる精神的な強さは天性のものなのか、親の影響なのか、もしくは幼少時代からの努力の積み重ねが生んだものなか、ぜひ聞いてみたいところです。でも、もしかすると本人にもわからないのかもしれませんね。

では、今後私たちが仕事や日常生活の中で自身のレジリエンスを少しでも高めるためには、一体どうすればよいのでしょうか。

当然、人によってポイントは違うでしょうし、その道筋も決して簡単なものではないだろうと思います。しかし、日常の生活の中で何らかの逆境に出くわしたときに、自分がどのように感じてどう対応しているのか、まずはそこをしっかり意識してみるところから始めてみるのが良さそうです。

これから佳境を迎える競技も多いオリンピックです。純粋にスポーツを楽しむ視点のみならず、試合に臨んでいる選手のメンタルの強さなどに注目して見るのも、また興味深いと思います。

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第1,004話 入社式は対面?オンライン?それとも中止?

2021年03月10日 | 仕事

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「今年度は20名弱が入社する予定ですが、入社式は実施しません。」

これは、先日ある企業の経営者からお聞きした言葉です。もう少し詳しく知りたいと思い、さらに伺ったところ、この経営者は「入社式は、本来はオンラインではなく対面で行うことが望ましい。しかし、一堂に集まることは感染リスクにつながるため中止にする」と判断したとのことでした。

さて、あなたの会社では今年の入社式は実施する予定でしょうか?

株式会社ディスコが2月に行った調査によると、今年の入社式を実施予定の企業は全体の8割強(84,2%)。入社式の形式は「リアル・会場型のみ」が7割強(76,2%)、オンラインのみでの実施は1割未満(6,9%)とのことです。コロナ禍での入社式の実施に関しては、いろいろな考え方があると思いますので、一概にどういう選択が良い・悪いと判断できるものではありません。

しかし、私は入社式の実施の有無にかかわらず、経営者として新入社員に何らかのメッセージを届けることがとても大切だと考えています。

そこで、一つ思い出す事例があります。昨年報道された時から印象に残っているのが、伊藤忠商事の新入社員の初出社日に、会長CEO自らが社屋の1階で120名の新入社員一人ずつを出迎えたというものです。

先日(3月8日)の日経新聞には、まさにこの会長CEO自らの言葉が紹介されていました。「せっかく希望をもってわが社に来てくれた若者たちに、『やっぱり伊藤忠に入ってよかったな』と思ってもらえるようなことが何かできないかと考えた」とのこと。

これを読んで感じたのが、入社式が対面型かオンライン型かという形式にこだわるよりも、経営者が入社式で新入社員に何を伝えたいのかがとても大切だということです。

たとえば、会社の理念を伝えたいと考えるのか、中長期のビジョンなのか、自社が存在する意義なのか、また新入社員に何を期待しているのか、どのような社員になってほしいのか、将来どのように活躍してほしいと考えているのか、などメッセージとして何を伝えたいのかを明らかにし、それを自らの言葉で伝えることこそが大切であり、必要だと思うのです。

冒頭に紹介した会社のように、もし入社式は行わないとするのであれば、伊藤忠商事の例のように社長が新入社員一人一人と向き合う時間を別途設けるのもよいでしょうし、また文章でメッセージを送る方法もあるかもしれません。

どのような形でも構いませんので、ぜひトップが自らの言葉でメッセージを送っていただきたいと思います。そうすることで新入社員がこの会社で頑張ろうと前向きな気持ちを持つことにつながっていくはずです。

因みに、伊藤忠商事のCEOは今年の新入社員をどのように迎えるかについては、「昨年と同じことをやっていたのでは進歩がない。(途中省略)今年はどんな演出で彼ら彼女らを迎えようか、今から思案している」とのことです。

4月1日以降に報道されることと思いますが、一体どういう演出をするのか外部の者としても今から楽しみにしています。

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