パオと高床

あこがれの移動と定住

松本健一『司馬遼太郎を読む』(めるくまーる)

2009-08-26 19:33:37 | 国内・エッセイ・評論
司馬遼太郎の本ではなく、司馬について書かれた本を読む。何とも、読書のはかどらない夏に、ぱらぱらとコンパクトに、しかも一定のレヴェルを保っている本だった。2004年の司馬遼太郎記念館での講演と岡三証券の広報誌に連載されたものから作られた一冊。

講演は作家である司馬遼太郎の作家としてのオリジナリティを「history」は「his story」であるといった点から語り明かしていく。「私」を語るよりも、「彼」を語り聞かせるという、この作家の持つ歴史小説家として個性の際だった点を、松本は上手く語っていく。また、歴史小説家であって、歴史学者ではない司馬の想像力を畏敬しながら伝えてくれる。

歴史上の人物ごとに、決まった枚数で司馬遼太郎の特質を表していく第一部の広報誌連載部分は、4ページで上手く抽出された評論コラムになっている。あとがきにもあるように、連載継続を望まれる内容だろう。その要望に応えて綴られた二部は、『街道をゆく』にちなんだ文章が展開されている。

大きな作家である。この人に関する評論は本当に難しいのではないかと思う。それを、むしろ抽出力に賭けて、コンパクトにまとめると、かえって、司馬の巨大さが伝わったりするのかもしれない。
司馬遼太郎の文章を読みたくなった。
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