パオと高床

あこがれの移動と定住

姜尚中『姜尚中の政治学入門』(集英社新書)

2006-09-13 02:09:56 | 国内・エッセイ・評論
この人の語り口の穏やかさと論理の構築力に驚いたのは「朝まで生テレビ」を見たときだった。口調が相手を黙らせる力を秘めている。がやがやわやわやの騒乱状態を鎮めてしまう風格のようなものがあった。
その姜尚中(カンサンジュン)による政治学入門だ。七つのキーワードで現在の日本とその世界との関係を読み解いていく。読み解くための糸口を見せてくれる。
「アメリカ」「暴力」「主権」「憲法」「戦後民主主義」「歴史認識」「東北アジア」という七つのキーワードは確かに今、この国の国家と政治、世界を問うときに重要な突破口かもしれない。と同時に、それぞれの言葉の定義立て、思考されてきた歴史についての概要を語ってくれる。
政治学そして政治思想史が、現在においていかに現在を見通す意志の基盤になるかが、納得できる。その一端にわずかだが触れ得たような気がする。
「今、私たちは、歴史の重大な分岐点に立たされているのです」という、その今にあって、あえてあとがきで語られる「百見は第六感にしかず」という、その第六感を磨くことと、その第六感と単なる思いつきやひらめきとの峻別にかけた不断の闘いの必要性がひしと感じられる。



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