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雪の秩父札所巡礼

2012年11月08日 12時27分11秒 | 寺社
雪の秩父札所巡礼

「札所は観音を祭るお寺なんですか」。年甲斐もない愚問を発するほど、信仰心の持ち合わせはほとんどないのに、10年2月、6人で秩父の札所5か所を回るはめになった。

お年寄りの歩く会の会員になったからである。

西国33か所とか坂東33か所霊場といった具合に33か所が普通なのに、秩父だけは34か所ある。この三つを合わせて「日本百観音」というが、百にするため34か所にしたのだという。

33か所なのは、観音が33に化身(けしん)して衆生を救うという信仰に由来する。

秩父札所最後で、日本百観音の結願寺でもある34番は水潜寺という、ダイバーが喜びそうな名前で、結願すると長野の善光寺に詣でるのが習わしという。

四国88か所の霊場を巡拝する遍路の季語は春だというのに、秩父へのにわか巡礼を待ち受けていたのは冷たい雪だった。出発したさいたま市では曇りだったのに、秩父では滑らないよう足下に気を使って雪の「巡礼路」をたどる貴重な経験をした。(写真)

歩いたのは、帰りの時間を考えて26から30番の5か所だけ。27番の大渕寺の「月影堂」の別名がある観音堂の近くに高さ16.5mの剣を手に持つ大きな白衣の「護国観音」がある。「高崎観音」(41.8m)「大船観音」(25.4m)と並ぶ寺院にある関東三大観音の一つである。

本堂のかたわらで一口飲めば33カ月長生きするという有難い「延命水」を飲んだ。

28番の橋立堂は、武甲山の西麓に当たり、高さ65mの武甲山の岸壁を背にして観音堂が立つ。

本尊は馬頭観音というだけあって、観音堂の隣には馬堂があり、親子の馬の木像が安置され、境内に馬の銅像がある。馬とのかかわりが強いところだ。「馬の観音さま」として信仰されてきた。

馬頭観音は今では、馬の守護神として祭られ、動物供養の性格が強い。

本来は、俊足を生かして四方を駆け回り、諸悪を蹴散らし、食い尽くすとされている。他の観音の表情が女性的で優しいのに比べ、目尻を吊り上げ、怒髪天をつき、牙をむき出した憤怒(ふんぬ)の相をしている。

このため、菩薩ではなく明王に分類され、「馬頭明王」とも呼ばれる。

馬頭観音が本尊となっている札所は珍しく、100観音霊場の中で西国29番松尾寺とここだけだという。

ここには県指定天然記念物の橋立鍾乳洞がある。全国でも数えるほどしかない縦穴(傾斜穴)で、全長約130m。洞内くぐりは、「弘法大師の後姿」などの奇岩でいっぱいなので、秩父札所きっての夏の行楽地としてにぎわう。

29番長泉院は、「よみがえりの一本桜」と呼ばれるしだれ桜で知られる。季節ごとに花が美しい寺である。

29番から30番法雲寺に向かってすぐ、札所ではないが、清雲寺には県の天然記念物に指定されている樹齢600年のしだれ桜の巨木(エドヒガン)がある。

法雲寺は、花と緑につつまれた美しい寺である。ご本尊は、鎌倉建長寺の道隠禅師が中国から持ち帰った通称「楊貴妃観音」。雪景色も写真のように素晴らしく、季節を変えてまた来たい。


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